第二話
映像を見終わり唖然とする私を置いて淡々と神様が説明を始めた。
「見てもらった通り、このまま原初世界を放置すると全ての世界が破滅してしまうのだよ。君にはこれの対処に当たって欲しい」
二時間半近く映像を見せられた訳だが、要約すると我々の住んでいる世界の他に四つの世界があり、そのすべての世界の大本となる原初世界で問題が発生しているらしい。
原初世界はファンタジー物でよくある魔法やモンスターのいる世界で、人と魔物の戦争により大地が疲弊し荒廃化が進み深刻な事態になっているとのこと。
このままでは原初世界は死の大地になり、その影響で他の世界までもが荒廃化し、全ての世界が破滅に向かうという・・・
そこで私が原初世界に転生し、魔物との戦争を終わらせるのかと思いきや、どうやらそうではないらしい。
魔物との戦争を終わらせるべく、今の私のように輪廻転生の中から神様のお眼鏡にかかった魂達が、原初世界に転生者として神の恩恵と共に戦いに赴いたとの事。
戦争は辛くも人側の勝利に終わり、魔物は森や洞窟などの奥深くに姿を潜め、人々は平和に暮らしましたとさ・・・・と、なったのはほんの数年。
今度は人と人同士の戦争が始まり、魔物との戦争の時よりも被害が出ているらしい。どこの世界でも戦争というのはなくならないようだ。
転生者に争いを止めさせれば良いのでは?と思ったら、あろうことか人同士の戦争に参加し、被害拡大に一役買っているとの事。
恩恵を剥奪すればいいのでは?と、思ったのだがそう簡単にはいかないらしく、制限こそ掛けられるものの剥奪までは出来ないという。
そこで私が原初世界に行き、転生者の戦争参加を止めるか、恩恵を剥奪するという物騒極まりない内容を告げられたのであった。
あとは魔法の使い方やら、神の恩恵についてや、恩恵剥奪の仕方。どんな種族、魔物がいるのか等この辺はとりあえず置いておくとして・・・
「あの、神様。これ絶対人選ミスだと思うのですが・・・」
「いやいや、大丈夫だ。お前ならやれると私は信じてるぞ!」
「いや、どう考えてもおかしいでしょ!?ただの平凡な会社員なんぞより、どこかの軍人の魂とか使った方が絶対いいですって!」
「だからほれ、お前が適任だろうに。元陸上自衛隊員で空手と合気道も嗜んで、会社ではその年で課長の役職につくような人材なのだからな」
ぐうの音も出ない正論だった・・・いや、最後の課長云々は関係ない気もするが。
「では行くか。竜馬よ、ついてくるがいい」
そう言うと神様は歩き出したので、反論したい気持ちもあったが観念してついて行くことにした。
「竜馬よ、これから原初世界を管理している神に会う事になるが、彼奴は私より位の高い神だ。大丈夫だとは思うが失礼のないようにな」
「え?神様って他にもいるんですか?」
「そういえば話してなかったか。私はお前の住んでいた第二世界を管理している神、名を高御産巣日神と言う。覚えづらければ特別にタカミ様と呼んでもいいぞ?」
と、そう名乗った神様、通称タカミ様はドヤ顔をしながらこちらを見るのだった。
「はぁ、わかりました。それではタカミ様と呼ばせて頂きます」
実際、転生後は会う事もないのでは?と思うが言わぬが花と言ったところか。
「着いたぞ、この扉の向こうに原初世界を管理している神、名を天御中主神が鎮座しておる」
そう言うと、重そうな扉を触れもせず手を翳して開ける高御様。うん、神様オーラがすごい。
「アメノや、おるか?前に話していた件に合う魂を連れてきたぞ」
部屋に入ると中央に人影が見え、こちらに振り返ったかと思うと、ものすごいスピードで走ってきた。
「タカミちゃ~ん、どぼぢよ~~~~!」
そう言いながら今にも泣き出しそうな顔で高御様に突撃してきた髪の長い美しい(泣き顔でぐしゃぐしゃだが)顔立ちの女性は目の前でコケた。
「・・・・あの、タカミ様?」
恐る恐る顔を覗くと頭痛そうな顔をしながらちょっと待ってくれと言ってきた。
「アメノや、常日頃言っているがもう少し神としての自覚と落ち着きを持て」
そう言いながらタカミ様は天御中主神を起こし涙を拭った。おかしいな、さっきの話だとタカミ様の方が格下のような事言ってたはずなのに逆に見えてしまう。
「それで、どうしたと言うのだ。原初世界ならまだすぐには破滅するほどの事にはなってはおるまい?」
「大変なの~!私の信徒達が戦争に巻き込まれて、このままじゃみんな死んじゃうよ~~~!」
ひっくひっくと泣きながらぐしゃ顔の女神さまは、タカミ様に助けを求めている。多分大変な事になっているんだろうなと思いつつもちょっと笑いそうになる。
(いかんいかん、さっき失礼の無いようにとクギを刺されたばかりだと言うのに。気を引き締めねば)
「とりあえず落ち着け、そしてこちらの話を聞くのだ。そうすればその問題も解決する」
そういうと落ち着いたであろう天御中主神が私に気づいたので軽く会釈しておいた。
「今回の転生者問題を彼奴に解決してもらおうと思う。その信徒達もきっと助けてくれるだろうて」
なにかさらっと無茶ぶりされた気がするがあえてスルーしておく事にしよう。話がついたようで離れて待機していた私をタカミ様が呼んだ。
「アメノよ、改めて紹介するぞ。この男は山城竜馬、私の管理する第二世界の者だ。此度の原初世界の騒動を収めるのに適役と言えるだろう」
「高御、ご苦労様です。それではこの者に祝福を与え原初世界に送るとしましょう」
それまでとは打って変わって落ち着いた雰囲気の聖女のような天御中主神、最初のぐしゃ顔がなければ間違いなく見惚れていただろう。
「初めまして、ご紹介にあずかりました山城竜馬です。ご期待に添えるか分かりませんが精一杯務めさせて頂きます」
そう言って頭を下げるとぐしゃ天御中主神は花が咲いたように顔を綻ばせた。
「タカミちゃん、この子とってもいい子だわ!もう恩恵は授けたのかしら?私の恩恵も授けて良いわよね?ね!?あ、それと竜馬君、私の事はアメノ様で良いわ!」
天御中主神改めアメノ様に気に入られたらしい。綻ばせた顔が満面の笑顔になっていた。
「アメノや、だから神としての威厳をだな、・・・はぁ。私の恩恵はもちろん授けた。気に入ったのなら授けてやるといい」
途中で諦めたようにタカミ様は溜息をつくと少し投げやりに答えた。なるほど、二人の関係は困った姉とよく出来た弟のような関係なのかもしれない。
そんなことを考えていたらアメノ様が「えいっ」と掛け声を上げ、私の方に光の玉を飛ばしてきた。咄嗟に手を伸ばして受け取ると、そのまま体の中に吸い込まれるように入ってきた。
「これで私の恩恵を受けたことになるから、困ったことがあったらじゃんじゃん使ってね!そういえば恩恵の説明とかってもう済んでるのかしら?」
「はい、先ほど原初世界についての説明動画を見ましたので、大丈夫だと思います」
「竜馬よ、私の恩恵は地と風の力を操る事に特化している。そしてアメノの恩恵は聖の力を極限まで引き出せることだろう。上手く使いこなせよ?」
「はい、頑張ります!」
などと返事はしたものの、実際に使ってみないとどんなものか分からないので不安しかないわけだが。そんな心情を察したのかアメノ様が「ちょっと使ってみる?」と言ってきたので、実際に使ってみることにした。
「竜馬ちゃん、いい?私の恩恵で聖属性の魔法は最上級の効果を発揮するようになってるわ。身体強化の魔法を使えば身体の機能を活性化させて若返ることも出来ちゃうんだから!」
よし、使うぞ!って時にふと疑問が浮かび上がり、どうしても気になったので疑問を投げかけてみた。
「あの、神様の恩恵で発動するのに”魔”法ってのはなんか変な感じがするんですけど・・・」
「・・・そうだな、今までも何人かに同じことを聞かれたが、原初世界において行使される力が魔法と呼ばれていてな。神力とか言っても良いが、現地人には魔法と言った方が理解されるだろう」
なるほど納得、疑問も晴れたので今度こそ魔法を試してみることにした。魔法を使うときはお腹に力を込めて使う魔法をイメージするとの事。
「身体強化!・・・・・よし、なんか身体が軽くなったし成功したかな?」
「あらあら、少し幼い顔つきになっちゃって。でもそれが一番力が出る姿なんでしょうね」
そう言いながらアメノ様が鏡を何処からか出して私の方に向けた。そこに写ったのは二十歳頃の姿の自分だった。
「ほう、いきなり成功させたか。何回か失敗するかと思ったが魔法のセンスも悪くないようだな」
トゲのある言葉とは裏腹に満足気な笑みを浮かべて云々うなずくタカミ様。その横でハッとした顔をしてアメノ様が詰め寄ってきた。
「竜馬ちゃん、原初世界に行って私の信徒達を助けて!早くしないとみんな殺されちゃう!!」
そういいながら少し涙を浮かべているアメノ様。でもさっきまで忘れてましたよね?とは言ってはいけない。
「よし、転生陣は私が作るからアメノは座標と竜馬の新しい身体と精神の固定を!」
「ありがとう高御ちゃん!よ~し、ちゃちゃっと行っくわよ~!」
目の前にあった鏡がひかり、人の姿に形を変えていく。徐々に光が引いていき、そこに現れたのは自分の姿だった。
「せっかくだから今の姿のままで作ったわ!若い方がいいでしょ?」
そう言ってウィンクして微笑むアメノ様はとても可愛らしかった。残念女神だがやはり綺麗だななどと、考えていたら準備が整ったようだ。
「竜馬よ、覚悟はいいな?向こうに行けば即戦闘になるはずだ。ぬかるなよ?」
「さぁ、竜馬ちゃん。私が作ったこの身体に触って?そしたらすぐに原初世界よ!」
ニ神の言葉に頷き、目の前の自分に触れると視界が暗転した。騒音と共に目を開けると目の前には崩れかけた神社と巫女服姿の少女達。そしてそれを取り囲む戦国時代のような恰好をした兵士の姿があった。
小説書く事の大変さを噛みしめています・・・
心に響く物を、週2~3回上げよう、などと思っていましたが書き始めの素人には無理な話でした。
とりあえず今は遅くなっても自分に出来る最良な物を作り、話を完結させる事を目標にやって行こうと思います。