表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/32

1.魔王に召喚された

「今日こそ三振させてやるぞ御剣!」


 そう言ってグラブを振りかぶるのは、野球部キャプテンの槇村(まきむら) 重雄(しげお)だ。

 俺は野球部ではないけど、助っ人で来ている。

 ツーアウト満塁、ここでホームランにすれば、逆転サヨナラだ。


「やってみろよ重雄!こいっ!!」


「おりゃぁぁぁっ!!」


 凄まじいスピードで放たれるボール。

 高校生のくせに、調子の良い時の重雄の投げる球速は160キロに近い。

 だが、視える!ニュータイプ的なあれではなく。


「捉えたぞ重雄っ!」


 カキィィィインッ!!


「なにぃっ!!」


 バットを後ろに放り投げ、走り出す。

 すると、凄まじい光に体が包まれる。


「な、なんだぁ!?」


「御剣!?」


「御剣先輩!?」


「来るなっ!巻き込まれるぞ!!」


「「!?」」


 ラノベを愛読していた俺は、この展開に備えていたのだ。


「じゃーな!」


 なんてセリフを言って、異世界に……飛ばなかった。


「あれ?」


「御剣……なんのマジックだよ、今の」


「い、いや、おかしいな。流れ的に、異世界に飛ぶかと思ったんだけどさ」


 そう言ったら、なんか憐れみの目で見られた、皆から。


「お前、疲れてるんだよ……すまねぇな、精神が摩耗するくらい疲れてるとは知らなかったんだ……決着は、また今度つけようぜ。おいお前ら、御剣が打つ前の状態からやり直しだ!」


「「「ウスッ!!」」」


 その日、何故か皆がいつもより優しかった。



 帰り道。

 俺は自分の体が熱くなるのを感じていた。

 なんだ、これ。

 心臓の鼓動が聞こえる。

 ドクン、ドクンと。

 本当に体調が悪かったのか……?そう思って、少し公園に寄り、ベンチに腰掛ける。

 夕焼けが綺麗で、この公園には俺以外誰もいないようだった。

 そこで少し座っていると、また光が俺の体を包む。


「またかよ!?なんなんだよこ……」


 言い終わる前に、俺は姿を消した。



 眩しい光から目を恐る恐る開ける。

 するとそこには、真っ黒いマントを羽織った、とてつもない美女が立っていた。

 まるで、漫画の世界から飛び出てきたかのような出で立ちで、赤いスカートのスリットから覗き見える足がセクシーだった。


「よく来た勇者よ!妾は魔王ミレイユじゃ!」


 へ?ま、魔王!?というか俺がやっぱ勇者なのか!?


「妾を守れ!勇者よ!」


「あの、なんで魔王が勇者召喚してるんですか?」


「決まっておろう。妾が弱いからじゃ!」


 後ろからドーンと煙が出るようなイメージが湧くくらい、自信満々に弱いとのたまう自称魔王。


「む、信じておらぬな?良かろう、『鑑定』と唱えてみよ」


 おお、異世界のスキルか!


「『鑑定』」


 すると、空にゲームでお馴染みのステータス欄が出てきた。



ミレイユ♀(9841歳)


職業 魔王

Lv.1

HP    18/20

MP    ∞/∞

こうげき力 1000

しゅび力  1000

ちから   1(+999)

まりょく  10(+999)

たいりょく 1(+999)

すばやさ  9(+999)

きようさ  12(+999)

みりょく  999(+999)



「ぶふぅっ!!」


 思わず噴き出した。

 なんだこれ、MPは凄い、∞(むげん)とかこれ、ずっと魔法使えるって事だよな。

 みりょくもまぁ、この見た目だ、分かる。歳も凄いけど、異世界なら気にしない。なんで女じゃなくて♀なんだ?人間じゃないからか?まぁ、それも些細な問題だ。

 こうげき力としゅび力はたいしたものだな。

 だけど、他のステータスみたいにかっこがないのはなんでだろう。

 後問題は他のステータスだ。極端に低い。

 なんで現在HPがすでに減ってんだよ、立ってるだけで消耗してんのか!?

 ああ、たいりょく1だもんな!

 というか魔王って職業なのかよ。

 このかっこの数値は、装備の補正って事か?

 補正が無かったら、スライムにすら勝てないんじゃないか、このステータスは……。

 脳内の突っ込みが追いつかない!


「妾のステータスを見たな?鑑定レベルが1では詳細までは視れぬが……さぁ、次はお主のステータスを見せてみよ」


「えっと、俺に『鑑定』を使えば良いのか?」


「お主は『ステータスオープン』と唱えれば良い。自分だけで見たければ『ステータス』と唱えても、頭の中で念じても良いぞ」


 なら自分でそう言えば良かったじゃないか……。


「てっとり早く信じてもらうには、お主が唱えた方が良かろう?」


 ぐっ、読まれていた。

 気を取り直して、『ステータスオープン』と唱えてみる。


御剣 照矢 男(18歳)


職業 勇者

Lv.1

HP    6000/6000 成長レベルS

MP    490/500  成長レベルB

こうげき力 7000   

しゅび力  6800   

ちから   7000    成長レベルS+

まりょく  2000    成長レベルA

たいりょく 6800    成長レベルS

すばやさ  5500    成長レベルS

きようさ  7000    成長レベルS

みりょく  30


「ぶはっ!!」


「ふむ、流石のステータスじゃな。これはなんと読むのじゃ?」


「あ、ああ。みつるぎ てりやだよ」


「てりや?呼びにくいのぅ……うむ、お主の事はテリーと呼ぶが、構わぬか?」


「まぁ、別に……」


 というか、俺は補正なしでこのステータスなのか。

 魔王の装備の補正、高いと思ってたのに……こうしてみると低いじゃないか。

 それに、さっきの鑑定の時には視えなかった、成長レベルって項目がある。

 これは、レベルアップの時に上がる数値に関係してそうだな。

 こうげき力としゅび力に成長が無いのはもしかして、ちからとたいりょくに装備を足した数値だからとかか?

 そうだと仮定するなら、さっき見た魔王の基礎こうげき力としゅび力、1って事なんだが……。

 後、俺そんなにみりょくないですか、そうですか……。


「うむうむ、それだけ強ければ、妾を守る事など朝飯前じゃな!頼んだぞテリー!」


「いやちょっと待て。まだなんも詳しい話を聞いていないぞ。俺は何からお前を守ればいいんだ?というか、勇者って普通、魔王を倒すもんだろ?」


「なにそれ怖い……」


 なんか本気で怯えてる。

 あっれぇ、この世界だと違うの?


「勇者怖い、勇者怖い……!」


「なんでそれなら勇者召喚したんだよ……」


「だって、他の世界から召喚されてくる者達は、皆テリーみたいに強いのじゃぞ!?『ちーと』って言うんじゃろう!?そんなものにどうやって勝てと言うのじゃ!勇者に対抗するには、勇者しかあるまい!」


 ああ、うん……そうだなぁ。

 突然他の世界からやってきて、何の苦労もなく最初から強い。

 俺も、例に漏れずそうみたいだし……。


「妾はただ寝ていたいだけなのに!この大陸にある物を持っていきたいなら、なんでも持って行って良いのに!どうして皆妾を殺そうとするのじゃ!?」


 魔王は、泣いていた。

 本当に、嫌なんだろう。

 それが、分かった。

 俺だって、魔王は討伐対象ってイメージがあったくらいだ。

 どっかの国に召喚されて、その国の王様から、魔王を倒せって言われたら……ほいほいと倒しに行っていただろう。

 何の疑問も抱かずに、魔王というだけで。

 他の国に召喚された勇者達から、守ってほしい……そういう事か。


「ヒックッ……うぇぇ……」


 目の前で美女が、本当の涙を流している。

 人間を、恐れて。

 正直、俺と同じように召喚された人達が、俺と同じように強いなら……勝てるかどうか分からない。

 だけど……俺は言ってしまった。

 後々、俺の生涯の過ちと言っても過言ではないと思う、この一言を。


「……分かった。俺がお前を守ってやる。だから、泣くな……!」


「テリー……!」


 だって、しょうがないだろ?

 女の涙には、勝てないって。

「面白かった」「続きを読みたい」等々思っていただけましたら


評価で応援をお願いします。


下にスクロールしていくと、広告の下にポイント評価を付ける部分があります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] あかん、ミレイユさんのステータスで吹き出してしまった笑 主人公が全てツッコミ入れてくれて良かったです。 [一言] 続き楽しみに待ってます!
[良い点] 新作発っ見~~~(o´艸`o)♪ タイトル通り、テンプレ度外視の召喚理由w 立ってるだけですでにHP下がってることにウケたw [一言] 最初の異世界召喚がフライング気味だったのは何故なのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ