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【094】パンナコッタに到着だ

 煉瓦造りの建物が立ち並び、しっかりと舗装された道が続く濃い黄土色の街、パンナコッタ。


 一週間ほどの旅路を経て、俺たちはこの街へと到着した。


 キャロットと違って、建物も大きく人々の活気も凄い。


 大通りには露店が立ち並び、人の通りと共に数台の馬車も行き交っていた。


 胸のはだけた金髪の男が、若いねえちゃんたちを連れて我が者顔で歩き。ごてごてとした高そうな指輪を両手でいっぱいにはめて、屈強な男たちを付き従えている肥えた豚、じゃなくて金持ちそうな男がニヤニヤしながら話をしている。


 ちょっと綺麗な身なりをして、美少女を二人連れている程度の俺では、この街では当たり前のように溶け込んでしまうだろう。


 つーかまるで目立たない。


 キャロットでは道行く人が振り返るほど、目立っていたのに……。


「パンナコッタ……なんてこった」


 ……いや、ただ言いたかっただけである。


 普通に目立たないことは良いことである。


 とは言ってもやさぐれている俺にとっては、目立つとか目立たないとかどうだっていいんだけど。


 さて、どうしようかな?


 取り敢えず宿とかは沢山ありそうだし、先に入学許可証がどういう扱いになってるか聞きに行こうかな?


 俺は買い食いがてら屋台のおっちゃんに学園の場所を聞いて、一先ず教えてもらった方向へと向かった。


 大通りを超えて、小洒落たカフェが立ち並ぶ通りの奥に大きな建物が見えて来た。


 坂道になっているから、下から見上げるとお城みたいにでっかい。


 そして、俺が坂道のど真ん中で学園を見上げていると、突然後ろから声が響いた。


「キャー、遅刻、遅刻ー!」


 若干棒読みなその声に振り返ると、桃色の髪をしたツインテールの女の子がパンを咥えながら猛然と走って来た。


 そして、その子は何故か一直線に俺へ向かって駆けると、飛びかかるようにダイブしてきた。


 俺がそれをヒョイッと躱すと、その子はへぶっと声を上げて地面に倒れ込む。


 ……なにこの子。


 いきなり俺にアタックして来たんですけど。ギャルゲの出会いにしても強引過ぎるよ。咥えてたパンが地面に落ちちゃったじゃないか。あ、ツクヨミが拾ってパクリ。こらこら、拾い食いはやめなさい!


「いたた、ちょっと! なんで避けるのよ!」


 女の子が顔を上げて俺を睨み付けてくる。いや、そんな顔で睨まれても……飛んで来たの君だよね。


 それと、もう昼過ぎだから、遅刻にしても寝坊し過ぎだと思うよ。


 女の子は俺を睨みながら、背中に生えたコウモリみたいな小さな羽をピコピコ動かした。


 ん? 羽?


「あなた! 私が誰だかわかっているの!」


「え? 知らないけど」


「なっ! これだから田舎者は!」


 女の子は膝を払って立ち上がると、胸を反らして偉そうに言った。


「私の名はレイン・ゼノ・イーヴィル! 真祖の血を引く正統なる一族、ヴァンパイアの末裔よ!」


 おー、パチパチパチパチ。


 良いですね。ヴァンパイア。


 正直嫌いじゃないです。


 なんか偉そうな子だなって思ったけど、ヴァンパイアって聞いた途端にそうでなくっちゃって気になってくる不思議。あと俺、ヴァンパイア属性もあったみたい。


 さっきより五割増しで可愛く見えてきた。


「それで? ヴァンプちゃんは何で俺にぶつかろうとしたんだ?」


「ヴァンパイアの方を略すな! 今、レイン・ゼノ・イーヴィルって名乗ったでしょう!」


「で? レインちゃんはなんで俺にぶつかろうとしたんだ?」


「馴れ馴れしく名前で呼ぶな! 犬以下の脳みそね! あなたは!」


 犬に謝れ! 犬は凄く賢いんだぞ! つか、面倒くさい子だな。


「はいはい、ではイーヴィル家のお嬢様は、わたくしめに何用なのでございましょうか」


「ふんっ、最初からそういう態度に出ていれば良いのよ。取り敢えずあなた、私を背負うことを許可するわ」


「だが、断る!」


「なんでよ!」


「いや、普通に初対面でなにをしたいのかもわからない子を背負わないでしょ」


「美少女と密着できる機会を棒に振るうというの!?」


「確かに!」


 俺はあっさりと言い合いに負けた。


 瞬殺だったよ。だって仕方ないじゃない、男の子なんですもの。

お読みくださりありがとうございます。


さあ、学園編に突入ですが、先の展開は何も考えてまてん!


こんなキャラ出せやとか、こんなシュチュ入れろや! とかとか、希望がある方はメッセージをくれればそんな展開になるかも!ならないかも!


自分で考えるのが面倒くさいとか、これっぽっちも全く全然思ってないんだからね!

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