【090】頑固な妹
お昼を過ぎた頃。
ティターニアやピクシーたちを連れて昼食をとりにやってきた。
行きつけのお店ではないけれど、夕方までブルに合うのはちょっと気まずいので、普段は来ないお店を選んだのだ。
私がお店に入ると、中は騒然となってしまった。
【LG】を所持していることもあって、今やこの街で私の事を知らない人はいない。私よりもブルの方がとんでもない手札を隠しているというのに、世間が注目するのは私やティターニアだけなのだ。
ブルはあんまり気にしてないみたいだから、特に気を使うことではないのだけど……あ、そういえば可愛い女の子が寄って来た時だけ、凄く残念そうな顔をしていたのを思い出した。
うん。ブルはちょっと苦しんだ方が良いかもね。
お店の店主が出て来て、私に挨拶をしてくるとあんまり待たずに料理が運ばれて来た。
ティターニアやピクシーは何も気にしていないみたいだけど、他のお客さんの順番がちゃんと守られているのか心配になってくる。
でも、結局お腹が空いてるから、食べるんだけども。
私が食事を終えても、ティターニアたちはまだ食事を続けていた。
と言っても、食べてるのはティターニアだけで、ピクシーたちはフルーツを食べやすくするのに大忙しだけど。
仕方ないからいつも通り、ピクシーを一匹捕まえて、強制的に食事をとらせる。私が捕まえてあげると、ピクシーはホッとしたよう顔をするのだ。
ほんとはお世話するの嫌なのかな? だとするとティターニアには、私から言ってあげなきゃいけないんだけど……。
そんな事をしていたら、お店の扉が勢いよく開いた。
なんか嫌な予感がする。
だって、変な人がやって来るのはいつも食事時なんだもの。
まあ、【LG】がいると食事の時間が長くなるから仕方ないんだけど。
開け放たれた扉からお店に入って来たのは、数名のエルフだった。まだ若そうな男女。同族だけど、別に見知った顔はない。
「アルア様! いらっしゃいました」
エルフの男がそう声を上げると、私の心臓はドキリと音を立てた。
エルフの男に先導されて、お店の中へ入って来たのは私のよく知っている人物。
アルア……アルアティナ・ユー・カラトナ・モンテフェギア。
私の実の妹であった。
アルアは私の前までやって来ると服の裾を摘んで、お行儀良く挨拶した。
「ご無沙汰しております、お姉様」
金色の髪がキラキラ輝き、私と同じ緑色の瞳を細めてニコリと笑う。
凄く優しいげな表情だけど、私はこの作り物である笑顔が嫌いだ。
「久し振りね。でも、私の方に用事はないから帰ってくれる?」
私が素っ気なくそう言っても、アルアは動じる事なく、貼り付いた笑顔も崩さない。
「相変わらずのご様子ですね。そのような態度だから、お父様とお母様はお姉様を遠ざけようとなさったのですよ」
「だから、私は家を出たんだけど?」
「……はい。その結果、お姉様は才能を開花させ、その名を広く知れ渡らせる事となりました」
アルアはチラリとティターニアへ視線を向ける。
「私に才能なんてなものは無いわ。私はただ、運が良かっただけよ」
「運が良いというだけで、世界でただ一つの【LG】をその手に出来るでしょうか?」
……いや、本当に運が良かっただけなんだってば。それに、【LG】はただ一つじゃなくて、もう二枚あるのを知ってるんだけど……。
「お姉様は社交辞令も迂遠な言葉もお嫌いでしょうから、単刀直入に申し上げます。お姉様、どうか我が家へお戻りください」
「……頷くと思ってるわけ?」
「いいえ、ですが頷いてもらうために、私はここまでやって来たのです」
アルアの表情はにこやかだった。
けれど、私は知っている。
物腰は柔らかいけど、この子はもの凄く頑固だという事を。
私は小さくため息を吐いた。
本当に、どうして今日という日に、厄介ごとが舞い込んで来るのだろう。
読んでくださり、ありがとうございます。
まだだ! まだ終わらんよ!
……いや、違うんです。エディナのお話は二話で終わらせるつもりだったんです。
でも、終わらなかったの!




