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拳で無双!異世界カードバトル!~ルール無用の【破壊】デストラクション~  作者: まじで
1章「エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギア」
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【088】約束の時刻

 ついにプロポーズをしてしまった。


 既に言葉も告げてしまったし、プレゼントも渡してしまった。


 エディナも立ち去ってしまったし、後に引ける要素は何一つなくなったわけである。


 この後、俺に出来る事は何一つないわけだが……ないとそれはそれで落ち着かない!


 スッゲーそわそわする!


 さっきから胃もキリキリしてきて、気持ち悪くなって来た。


 ソワソワソワソワ。


 まあ、落ち着け俺。


 取り敢えずトイレにでも行って、素数を数えようじゃないか。


 立ち上がった俺は、足をもつれさせて盛大に転んだ。


 ベチンと床に顔面をぶつけてノックダウン。


 くっ、殺せ!


 そんな俺を誰かがチョンチョンつつく。やめてくれ、誰だか知らんが傷口に塩を塗らないでくれ。


 顔を向けるとそこには、モフモフ狐のセンがいた。


「ねー、そんなに気になるなら、ぺたんこが何考えてたか教えてあげよっか?」


 俺はスクッと立ち上がるとセンの頰を鷲掴みにした。


 ふぐっとアヒルみたいな口になったセンは、ピヨピヨなんか言ってるけどよくわかんね。


「セン、余計な事を言ったら本当に怒るからな!」


 ピヨピヨヨヨ。


 いや、まじで何言ってんのかわかんね。


 俺が手を離すとセンの頰が、今度はフグみたいに膨らんだ。


 フグフグググ。


 いや、ごめん。さすがにそんな事は言ってなかった。つか、フグってなんて鳴くんだ?


「もうっ、わかったから落ち着きなよ。私でも理解出来ない感じになってるんだけど?」


 はは、この子は何を言ってるんだ。俺が動揺なんてするわけがないジャマイカ。


「あー、もう。あんまりやりたくなかったけど、仕方ない」


 そう言って、センは俺に指を突き出した。


「ていっ! ちょっと【天雷】」


 センの指が触れると、全身に電流が走るような痺れが起きた。いや、実際に電流が流れたんだけど!


「あびゃっ!」


 俺は変な声を上げると、そのまま倒れ込む。


 地面にぶつかったような衝撃はなかったから、多分俺の体はセンによって受け止められたのだろう。


「モヤモヤして待つぐらいなら、時間まで寝ちゃうのが一番かと思って」


 薄れ行く意識の端で、センのそんな呟きが聞こえた気がした。





 ガバッと目を見開くと、そこには見知らぬ天井があった。


 ……いや、嘘だわ。いつもの宿だったわ。


 時計の針を見ると時刻は五時半を過ぎたところだった。


 うぉいっ! 俺が遅刻したら一大事じゃないか! つか、なんで俺は眠りこけてたんだ! カフェで告白して、転んだあとセンが来て……そのあとの記憶が無い!


 つか、あの狐め! なんかやったな!


 いや待て、今はセンのことなんて考えてる場合じゃない! 早く時計塔に行かなくちゃ。


 俺はサッと身嗜みを整えて、時計塔へと急いだ。


 くそう、もっとビシッとしたかったのに! けれど、相手を待つ方が遅刻したらまずい。多少乱れるのも構わず、俺は時計塔まで走ったのだった。


 幸いにして、時計塔には六時十分前に到着する事が出来た。


 俺は息を整え、乱れた髪をセットし直す。エリも直して靴紐も結び直して、あ埃が! えいえい、どっか行け! あとは、うーん、あとはー。


 何もねえ!


 やべえ、やる事なくなったら急に緊張して来た。


 刻一刻と迫る待ち合わせの時刻。


 ぐっ、これって軽い拷問だよな。一分が超なげえ。


 エディナは何処からやって来るのだ? 俺はソワソワしながら刻限まで待った。


 程なくして、時計塔から夕方の六時を告げる鐘が鳴り響いた。


 塔の真下で聴くと、普段よりも音が反響して壮大な音色に聴こえる。


 エディナは? 時間になったぞ?


 周囲を見渡すがそれらしい人影は見当たらない。


 あれ? まじで?


 不安になる気持ちを抑え込んで、待つ事もう五分。


 しかし、それでもエディナは姿を現さなかった。


 ……まさか、フラれた?


 そんな言葉が脳裏を過る。


 そう言えば、断りを入れる場合は、時計塔の中にプレゼントを置いて、相手に返すんだとか武器屋のオッチャンが言っていた。


 それを思い出し、俺は時計塔の扉をゆっくりと開ける。


 中へ入って覗き込んでみたが、俺の渡したプレゼントは何処にも見当たらなかった。


 ホッと胸を撫で下ろして、もう少し待とうと表に出る。


 まばらな人通り、見渡せど俺の待ち人の姿は見つからない。


 そして、それからいくら待っても、エディナが時計塔に姿を現わす事はなかった。

読んでくださりありがとうございます。


次回はエディナ視点のお話。


たぶんね!

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