【085】贈り物をどうしよう
「こちらなど如何でしょう」
俺は支店長に連れられてカードブースまでやって来ていた。
支店長が勧めて来たのは、一点物……つまりは誰かが【実装】に成功したカード。それも【SSR】の魔法カードである【反射】のカードだった。
効果はどんな魔法も三枚の盾がそれぞれ一度だけ、必ず相手へと弾き返すというものらしい。
お値段は【196000000】イェン。
今の俺なら買えなくはないけれど、正直いらない。つか高い。
いつぞや売り出していた【プリンセス・プリン】のカードよりも高いのではないのだろうか? つか、あのカードは見かけないけど売れたのか?
「お気に召しませんか?」
俺が興味なさげに別の事を考えていると、支店長は俺の顔色を伺うように言ってきた。
「できればカードじゃない方が良いかな?」
「そうですか? ですがエディナ様は、Sランクの闘士。装飾品などよりカードをお贈りした方が喜ばれるかと思いまして」
まあ、支店長の読みはあながち間違ってはいない。出会ったばかりの頃のエディナは色々なカードに興味深々だったし、あの【プリンセス・プリン】を見て、神々しいとまで言っていたほどだ。
けれど、今や【LG】持ちで、他のカードも俺が実装した一点物ばかりを所持している。
カードに興味が無くなったということはないだろうが、俺が新たにカードをプレゼントしたとしても、今まで無償で行なってきたことの延長線でしかないのだ。
エディナの意表を突くという意味では、インパクトに欠けるのである。
下手をすれば、カードを贈るだけのワンパターン野郎だと思われるかもしれない。
いや、さすがにそんなことは思わないか……。
「うーん。やっぱりカードじゃない方が良いね」
「そうですか……でしたら」
支店長に連れられて次いでやって来たのはランジェリーショップ。
鮮やかな色合いの物や、フリルの付いた愛らしい物など、数多くの下着に埋め尽くされたお店だった。
正直目のやり場に困ってしまう。というか、結婚を申し込むのに下着の贈り物はありなのだろうか? いや、支店長にはプロポーズの為の品だとは言ってないけど。
なんか、恥ずかしいし。
それにエディナはブラをしなきゃいけない程胸があるわけじゃない。そこが良いのだと個人的には思うわけだが、そんな相手に上下セットの下着をプレゼントなんて、いらぬ勘違いを引き起こし兼ねない気もする。
俺は首を振って次の店へ向かった。
アクセサリーショップへやって来た。
支店長がお勧めするのは、キラキラした宝石が埋め込まれた指輪やイヤリング。
うーん、確かに結婚を申し込むなら、この辺りが無難な気がする。
俺は緑色に輝く宝石が埋め込まれた指輪を見つめてそう思った。
「おお、お目が高い。その宝石はですね―――」
支店長がうんぬんかんぬん説明してくれていたが、俺の耳にはあまり入って来なかった。
心の中で無難に指輪にしようと考えていたのだが、とある事に気が付いてしまったのだ。
エディナのリングサイズがわからない!
高い指輪を贈ってサイズが合わないとか最悪だ!
普通は日常会話でそれとなく聞き出すのかもしれないけど、俺ってばそんな気の利いたトークスキル無いし、指輪贈るなんて考えてもいなかった。
おおう。これは致命的だぞ……。
そう考えていた俺の視界に、キラリと光る物が映った。
呼ばれたかのように視線が吸い寄せられると、そこには一つのネックレスがケースに収められて飾られていた。
「……これは?」
「ああ、それは魔法の効果を閉じ込める事の出来る特殊なネックレスです」
「魔法を!?」
「はい。ネックレスに向けて放たれた魔法を取り込み、好きな時に取り出して使う事が出来るのです。当然試合などでは使用できませんので、護身用といった物ですがね」
なるほど、なかなか実用的なネックレスだ。
しかも、五つの宝石をあしらったそれは、見た目もゴツゴツしてなくて可愛らしい。
俺はふむふむ言いながら、ネックレスの値段を見る。
【570000000】イェン。
ぶっ! 鼻水出た!
たっか! 五億とか……これじゃあ、今の俺でも買えないジャマイカ!
お読みくださりありがとうございます。
子供が戦いしたいってうるさいから、お尻ぺんぺん剣で一刀両断したら気に入ってしまったらしくて、その後が大変でした。ひとん家の子やで?
クッソ疲れた。
気まぐれで子供を構うもんじゃないなと思いましたまる




