【074】召喚カードの取り方
「早々に立ち去っちゃったけど、称号ってどうなったの?」
宿に戻ったあと俺が疑問を投げかけると、エディナは委員会から発行されているプレートを差し出した。
「闘士の情報はこのプレートに刻まれるのよ。勝負の結果も全部これに記録されるの」
受け取ってプレートを見ると、そこにはエディナの名前とランク。そして先程得たランキング【78位】という称号が記載されていた。
俺もこのプレートは貰ったけど、Gランクとブル・ドッグの名前しか書かれていない。
なるほど、ただの身分証明かと思ったけど、不思議な効力を持っているらしい。
このカードがある以上、決闘における口約束は、全て正式に受理された約束ごとになるみたいだ。
「ティターニアも問題なく強かったし、明日の決闘も大丈夫そうだね」
「うん、ブルのお陰でね。まだ気持ちがフワフワしてて落ち着かないけど、なんとかなりそう」
そうは言うが、動揺しまくっていたエディナは、だいぶ気持ちが落ち着いて普段の様子に戻っていた。
不安そうにしている姿も可愛かったけど、こっちのエディナの方がやっぱり好きだ。
「決闘が終わったら少し荒稼ぎしない? 【LG】は食費がかかるからさ」
「そうね。手持ちに余裕はあるつもりだったけど、ティターニアやピクシーの事を考えるとちょっと稼いでおきたいかも」
「ガラットの時みたいに、一気に稼げる方法とかってないかな?」
「ツクヨミちゃんみたいに鉱石を直接見つけられるなら、幾らでも稼ぎようはあると思うけど……そうね。召喚カードを売るのが手っ取り早いかも」
「え? 【白無垢】で量産するってこと? それを一般に流通させるのはどうかと思うけど?」
「違うわ。ブルは召喚カードの取り方を……そっか、知らないのよね」
召喚カードの取り方? そんなものがあるのだろうか?
「普通、召喚カードっていうのは、モンスターを退治すると一定の確率でドロップするの。強力なモンスターを倒すのは大変だから、レアリティが高いカードを取るのは大変なのよ」
「なるほどね。モンスターからドロップ出来るんだ。なら、【LG】のいる俺たちだったら、強いモンスターも沢山倒せるから、取り放題ってわけだね」
「確率がそれほど高いわけじゃないから、取り放題っていうのは語弊があるけど、【SR】でも一枚【500000】イェンから取り引きされるし、【SSR】だったらそれこそ幾らになるかわからないわ」
あー、前に魔王が【プリンセス・プリン】のカードを売り出してたけど、あれはドロップした不要なカードを売っぱらっていたのか。
売り出し文句で書かれていた魔王が使っていたカードっては、ただの煽り文句だったわけね。
次の方針が決まると俺たちは沈黙した。
なんとも言えない空気が流れる。
何故かって? それはタイトル戦で見せたエディナの反応が凄く気になって仕方なかったからである。
おそらくエディナも俺の恋人(予定)発言を意識しているのだろう。
若干顔が赤い気がする。
だが、どうする? こんな状況で俺はなんと口にしたら良いのだろうか?
こんな時、前世の俺はどんな言葉を選んで……いや、やめておこう。多分当てにならない気がする。
ともあれ、黙っていても仕方がない。
俺は意を決して言葉にする。
「エディナ、タイトル戦の時に言ったことだけど」
「ちょ、ちょっと待って、駄目よ、私たち出会ってまだ数日だし結婚は早すぎるわ」
いや、だからなんで結婚になるんだって。
「聞きたいんだけどさ? エルフにとって恋人と結婚って同じなの?」
「え? 当たり前でしょ! 結婚するから付き合うんでしょ?」
まあ、そうだけども。
この世界の常識なのか、エルフの常識なのかは知らないけれど、どうやら前世の感覚でものを考える俺とは、どうにも考え方が違うようであった。
うーむ、どうしよう。
読んでいただき、ありがとうございます。
プリンも食べたい!




