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拳で無双!異世界カードバトル!~ルール無用の【破壊】デストラクション~  作者: まじで
1章「エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギア」
73/204

【073】敵はこのように料理します

 ルール無用のデスマッチには文字通り明確なルールは存在していない。


 委員会に登録していないカードの使用も可能だし、デッキ登録の必要も無い。


 唯一勝敗のみ、どちらかが負けを認めて宣言するか、行動不能に陥った時と取り決められている。


 それ以外は何をしても許される。


 だからこそこのルールは恐れられている。


 カストラの行った不意打ちも許可されているし、今ティターニアが行った様に喉を潰して敗北を宣言できない様にしていたぶる事もルールとして問題無いのである。


 そして、声を出せなくなると出来る事がなくなる。


 発声を合図に発動するカードを一切使用出来なくなるのだ。


 唯一【トラップ】カードのみが、カードの内容を声にしなくても使用出来るのだが、【トラップ】の発動宣言は必要となるので、結局は使えない。


 となると、召喚モンスターを倒されたカストラは、生身の状態でティターニアと戦わなくてはいけないのだが……。


 どう考えても勝敗は決してるだろう。


 ティターニアは地に降り立つと、蹲るカストラの前に歩み出た。そして、カストラを見下ろしながら、エディナに向かって声を掛けた。


「エディナ、わたくしの力はエレメンタルマスターと呼ばれています。この世の何処にでも存在する精霊を操り、あらゆる現象を引き起こす……このように」


 そう言ってティターニアが手を掲げると風が巻き起こり、カストラの腕を切り飛ばした。


 それを見て周囲で悲鳴がおこる。


 けれど、ティターニアは周囲の声を気に留める様子もなく説明を続けた。


「このように」


 続いて切り飛ばしたカストラ腕が燃え上がった。


「このように」


 燃え上がった腕がピキピキと音を立てて石になる。


「そして、このように」


 先程のような光の粒子がカストラの腕に纏わりつき、切り飛ばした腕を再生させる。


「その気になれば、この街を火の海と化すことも出来ますがお見せしましょうか?」


「もう十分よ。 ティターニアの力はよくわかった。彼の喉を治してあげて」


「もう少し痛めつけた方が良いのでは? わたくしがいなければエディナは死んでいたかもしれないのですよ?」


「デスマッチはそういうルールよ。それに、あなたがいなければ、このタイトル戦は受けていない。どの道私は死んでいなかったわ」


「……確かに」


 そう言ってティターニアが指を鳴らすと、カストラの喉は回復した。


「がはっ! ゲホッ、ゲホッ!」


「さあ、主人の許しが出ましたよ。跪いて敗北を宣言しなさい」


 ティターニアが手を掲げてそう言うと、カストラは未だ血だらけの顔を青褪めて跪いた。


「すまない。俺の負けだ!」


 知らなかったとはいえ、無謀にも【LG】に挑んだ男は何も出来ずにあっさりと敗北を認めたのだった。


「称号はあんたの物だ。二度と勝負は挑まねえ」


 カストラを一瞥すると、エディナは俺に向かって声を掛けて来た。


「ブル、行きましょう」


 俺は頷いて、エディナの元へと駆ける。


 っとその前に。


 立ち去る前に俺はカストラの肩に手を置いて声をかける。


「あんたの所為で夕食が台無しになっちゃったんだから、俺たちの会計は済ませておいてくれよ」


 俺の言葉にカストラはキョトンとした顔を向ける。


「キョトンじゃないよ。ちゃんとわかってる? 次この店に来た時、今日の分を請求されたらティターニアがお仕置きに行くからね」


 ティターニアの名を出すとカストラはぶるりと震えて、無言のまま頷いた。


 これで良し。


 前回みたく絡まれ損をしないようにしておかないとね。


 みんな結構食ってたし、とんでもない金額になってそうだけど、まあ知らない。


 称号なんて持ってたやつだし払えるでしょ。


 そうして俺たちは、カストラを置いて宿へと帰るのだった。


 のちに聞いた話によると、ティターニアの強さが衝撃的過ぎて勝敗が決して俺たちが帰った後も、その場は誰もが動かず静まり返っていたそうだった。

読んでいただき、ありがとうございます。


カニ食べたい。

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