【072】まだ終わらんよ!
足を吹き飛ばれされた男が、鎧に覆われた召喚モンスターを【召喚】して、肩を借りながら表へと出た。
俺たちもその後に続く。
すると、表で待ち構えるように立っていたエディナの周囲には四体の妖精が舞っていた。
【フラワーピクシー】【フォレストピクシー】【アクアピクシー】。言葉を話す彼女たちだけでも、破格の力を持っている。
それに加えて悠然と佇むのは、【ティターニア】。
その美しさと存在感は異質であった。
街中が騒めき、一目見ようと人が集まって来ている。
片足となった男が召喚モンスターの肩を借りて店から出てくるとエディナは声を上げた。
「あなたの名前と、タイトル戦で提示するあなたの称号を聞いていなかったわ」
このところ驚いたり、動揺したりしていたエディナだったが、ようやく吹っ切れて覚悟が決まったのか、その声音はハッキリとしていた。
「カストラだ。俺の賭ける称号はランカー【78位】の称号だ。ランカーじゃないあんたには必要な称号だろう?」
「そうかもね。でも、その称号は必要ないかもしれないわ。彼女の事が広まれば誰もが私と戦いたくなるもの」
そう言うと、エディナは一度大きく深呼吸してから、周囲にも聞こえるように大きな声を出した。
「私の名は、エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギア! 伝説のレジェンドカード【ティターニア】を扱うSランクの闘士よ。覚えておきなさい!」
エディナの言葉に様子を伺っていた街人たちは、驚きと困惑の声を上げる。
「【LG】だって? 本当なら一大事だぞ!」
「言葉を話す召喚モンスターなんだって?」
「あれがレジェンド? 確かに神々しいが本当か?」
「Sランクの闘士が嘘なんて付くか?」
街が騒つく中、カストラは困惑の表情を浮かべる。
【LG】の存在は信じ難い。だが、自分の足を吹き飛ばし、エディナを瞬間移動してみせた相手。何をしたのかもわからない。
もしかすると本当に? そんな感情が渦巻いているのだろう。
そんな中、ティターニアが悠然と前に出て、腕を掲げた。
キラキラと輝く光の粒子が降り注ぎ、カストラのなくなった右足に集まると強い輝きを放った。
「うっ! 何を」
カストラが声を上げた時には、光の粒子は霧散していた。
そして、光が消えて無くなると、カストラ右足が剥き出しのまま復元していた。
「足が! 治っているだと!」
四大元素を司る精霊を操るティターニア。
ゲーム内では攻防共に使い勝手が良く、バフもデバフも使える万能キャラだった。しかし、バランスは良いけど、火力がツクヨミやセンとは劣る為、デッキに編成されることはなかったけど、現実でその力を目の当たりにすると凄いと思う。
多分、離れた箇所で精霊を動かして色んな事をしているのだろう。何をやってるのか目に見えないから全くわからないけど。
つか、強過ぎじゃね? 攻撃も回復も自在とかチート過ぎる。
「私なら勝てるけどねー」
センが俺の心の声を読んで抱き着いて来た。
「チビじゃりでも勝てるんじゃない?」
センがツクヨミに視線を向けると、ツクヨミは忍々と頷いた。いつまでやってんだ。
センはそう言うが、ティターニアは【地形】と【ピクシー】たち、そして【オベロン】を欲しがった。
もしかすると、それはツクヨミやセンと争う事になった時を想定して、俺に作らせたのかもしれない。
現時点でも異様な強さを誇っているのに、それをわざわざ強化する手段を欲するとも思えなかったからだ。
俺がそんな事を考えていたら、ティターニアが右手を掲げるだけで、カストラの隣に立っていた召喚モンスターを切り刻んで消滅させていた。
あのモンスターのレアリティはわからないけど、カストラの驚きっぷりを見るに【SSR】だったのではなかろうか?
さすがに手も足も出なそうだな。
カストラも俺と同じくそう思ったのだろう。両手を上げて降参のポーズをとって、自分の負けを口にしようとした瞬間。
カストラの喉が切り裂かれた。
喉を押さえて蹲るカストラ。
それを見下ろす様にして、ティターニアは笑みを漏らす。
「勝手に敗北を宣言しないでください。まだ、わたくしの力を主人にお見せ出来ていないのですから」
喉を潰して、敗北宣言させないとか……。
怖いね! 【LG】って!
読んでいただき、ありがとうございます。
引き伸ばしてるわけじゃないんです。次の展開に進みたいのに、気がつくと1500文字超えてるの。
さっさと学園編に行きたいのにね。困った困った。




