【068】よくわからない男
パクパクもぐもぐと無言で口を動かすツクヨミ。
今日はずっと大人しかった……というか、興味無さそうにボーっとしてたけど、食事となると元気いっぱいである。
皿に残っていた最後のポーセージをヒョイっとつついて口に運ぶと、空いた皿を丁寧に重ねてスッと手を挙げる。
トコトコやって来た店員さんに追加の注文を済ませると、先に注文していた皿が程なくしてやって来る。
慣れたものである。
その横で狐耳をピンッと張って、ズズズと麺を啜っているのはセン。
油揚げみたいなやつが沢山入ったうどん……というか、ウーメンと言うらしいけど、そのウーメンがお気に召したセンはこればかりを食べている。
つゆまで全部飲み干してドンッとドンブリを置くと、スッと手を挙げてツクヨミ同様に店員さんを呼んで追加注文。
既に四杯目なんだけど、箸は止まらない。
二人の事を見ていてよくわかったけど、【LG】はとにかく食べる。たぶん、規格外な事が出来る代わりに、燃費が異様に悪いんだと思う。
特に動いてなくても食う量は変わらないから、多分時間と共に何かが減少してるんじゃないかな?
そんなわけだから、当然ながらティターニアもよく食べる。
チラリとティターニアへ視線を向けると、果物の盛り合わせを行儀良く口へ運んでいる。
ピクシーたちが食事も摂らずに、ティターニアが食べやすいようにと果物の皮を剥いたり、一口サイズにカットしたりと忙しなく働いている。
ちょっとピクシーたちが可哀想に見えなくもない。
エディナが一匹ずつ捕まえて、食事を摂らせてやってなければ、ピクシーたちは倒れるまで働き続けていそうだ。
そんな状況というわけで、当然ながら俺たちは衆目の的であった。
周りの客は食事をするのも忘れて、唖然とした様子でこちらを眺めている。
うーん、食事はもうちょっと落ち着いてとりたいんだけどなあ。多分、俺たちの事は街中の噂になっている。
先程から一目見ようと外から覗き込んでくる連中が後を絶たない。お店は大繁盛で、【LG】たちもよく食べるからてんやわんやしている。
とそこで、バーンと勢いよく扉を開けて中へ入って来る一人の男がいた。
高級そうな赤色のコートを着た茶色髪の男。
鋭い眼光で俺たちの席を睨み付け、ツカツカと寄って来る。
俺は気が付かない振りをして食事を続けたかったけど、前回絡まれた時はツクヨミがテーブルを破壊して弁償させられているのである。
だから俺は男が近付いて来るのがわかると、直ぐに声を上げた。
「そこで止まれ!」
俺の言葉に男は足を止めると、周囲がざわざわし始めた。
「要件があるなら、その位置から言ってくれ。でないとテーブルが壊れる!」
俺の言葉に男は顔を顰めた。
「言っている意味がわからねぇんだが?」
「お前がテーブルにぶん投げられたらテーブルが壊れる。そしたら、それを俺たちが弁償させられるだろうが!」
「この俺をぶん投げられるってことか?」
「その通り!」
「おもしれぇ。やってみろよ」
「馬鹿なの? そしたらテーブルが壊れちゃうんですけど?」
「テーブルに投げなきゃ良いだろうが!」
「いや、お前はテーブルに落ちる! 回避出来てももっと酷いものを破壊する! 俺にはわかる、お約束ってやつが!」
「てめぇが何を言ってるのかわからねぇな! 取り敢えず投げれるもんなら投げてみやがれ!」
男が俺たちに近付こうと踏み出すと、パチリと指を弾く音が鳴った。
すると、突然グンッと膝を落とした男が前のめりに倒れ、テーブルに顔面から突っ込む。勢い良くテーブルの上にあった皿を顔面で叩き割り、顔中血だらけになって仰向けに倒れ込んだ。
あー、なんてこったテーブルは無事だったが皿が……。
俺は素知らぬ顔で食事を続けているティターニアを睨み付けた。
「エディナと創造主様に虫が集りそうでしたので」
いや、助かるけどもうちょっとやりようがあったでしょ。
「きゃあっ!」
叫び声がして振り向くと、顔面血だらけの男が立ち上がっていた。
「てめぇ、やってくれたな!」
えー、取り敢えず治療した方がいいんじゃない? つか、皿を弁償してくれよ。話はそれからだ!
男は懐からカードを取り出して、これみよがしに見せつけてくる。そして言った。
「決闘だ!」
何言ってんのこの人?
読んで頂きありがとう御座います。
後書きに十分も悩んでしまった。
ダメですね。時間を掛けないことがこの作品のコンセプトなので、今日の後書きはぶん投げることにしました。
はい、ドーーン!




