【063】いきなり突然Sランク
「やばいんですけど! やばいんですけど! やばいんですけどー!」
「落ち着いてエディナ! キャラが崩壊してるよ」
委員会を後にした俺たちは、オープンテラスのカフェでお茶を飲んでいた。
ガタガタと震えるエディナは先程から落ち着きがない。
というのも仕方ない事ではある。
なんと言っても闘士たちが信仰する神、アウナスことロリ様と出会い、そのロリ様に魔王になれとまで言われてしまったのだから。
ロリ様は委員会の権限をフルに使い、エディナをSランクの闘士として登録してしまった。
事前に四十枚のカードを登録していない状態で、Gランクから一気にSランクである。
さすがロリ様。やる事が無茶苦茶である。
四十枚のカードを持っていないということは、エディナは決闘を受ける事が出来ない。そして、決闘受けた者は十日以内に日時を指定し、その申し出を受けなくてはいけないのだ。つまり、申し込まれた時点から十日以内にカードを揃えないと失格となってしまう。
ただ一つ、失格とならない条件を上げるとすると、それはルール無用のデスマッチで決闘を受ける事だ。
これは相手を降参させるまで、無制限にカードを使用して闘うものらしく、意地を張りすぎると最悪死人も出る危険なルールだ。相手が死んだら殺した方が敗北……とはならず、普通に勝利となる為、受けた者は殺すつもりでやって来る。
まあ、とは言っても決闘を申し込まれたら、カードを揃えれば良いんだけどね。
ロリ様も無茶苦茶な事はするが、ちゃんと協力もしてくれた。エディナに【白無垢】のカード鉄を十枚、銅を九枚、銀を一枚くれたのだ。
エディナの手持ちのカードが十五枚。全てを俺が【実装】して、適当に五枚ほどカードを買い足せば四十枚に届くのだ。
まあ、つまり、俺が【実装】する事が前提で渡して来たのだろうけど、エディナは俺に【実装】を任せるということを考えていないらしい。だから、こんなに焦っているわけだ。
「おい、小娘! 少しは落ち着け鬱陶しい」
そう言ってセンがズズズとお茶を啜った。
「ででで、でも、でもでも、いきなりSランクなんて、私どうしたらいいのか。カードも揃ってないし、【白無垢】なんて渡されても実装できる自信ないし!」
「馬鹿め、その【白無垢】の【実装】は全て、我が主人が行う。故に失敗など有り得んし、銀があるということは、小娘も【LG】持ちになるということだ! 我が主人が創造する【LG】をしっかり扱えれば、決闘を受けたところで負けることなどあるまい」
「え? え? そうなの? センちゃんが何言ってるのか全然わからないんだけど?」
「ダメじゃ、完全に頭に血がのぼっておる」
なんとかエディナを落ち着かせようと俺たちが奮闘していると、俺たちの元へ一人の男がやって来た。
「あー、見つけた。君が特例でGランクからSランクに上がったエルフの子だね?」
「え? 誰? え? そうですけど」
「じゃあさ、俺と決闘しようよ。まだ誰も挑戦してないんだろう?」
「え? はい、え? 決闘?」
「日時はどうしよっか? 明日でいいかな?」
うわっ! こいつ完全にエディナの登録カード枚数知ってやがる! つか、情報が速すぎる!
「え? その、はい」
あ! ちょっとエディナさん。動揺し過ぎだって、十日後で良いんだよ。なんで明日にしちゃうのさ。
「オッケー。じゃあ、ルールはさあ―――」
「ルール無用のデスマッチだ!」
エディナが混乱しているところを男が、ズイズイ自分の都合の良い条件を突き付けくる。だから俺は声を上げて男の言葉を遮った。
「え! じゃあ、それで」
エディナは混乱し過ぎて何がなんだかわかっていない。けれど、決闘のルールは受けた方が決める事が出来る。都合よく相手の土俵に上がる必要は無い。
「へー、別に良いけど」
男は俺をチラリと見ると、余裕のある笑みを浮かべた。
こいつわかってるのか? エディナはウシドーンを倒した事になってる闘士なんだぞ?
男の笑みは気になったが、決闘の日時は決まってしまった。
くそう、ロリ様め。いきなり何かやったな!
読んで頂きありがとうございます。
うーむ、所長をロリ様にする予定なんてなかったんだけどなぁ。ついでに言うとこんなところで決闘を申し込まれる予定もなかった。
誰だよコイツ。
自分もよくわかってなかったりする。




