【058】リーダーは君だ!
ウシドーンを倒して街へと戻ると、街は歓声に湧いていた。
すげー大歓声だ。
こんなのアイドルのライブ会場でも見たことないよ。
この称賛する声は全て俺たちへ向けられたものだろう。
遠目とはいえ、街からでも誰かが戦っているのは見えたはずだ。そして、ウシドーンを倒してそのまま街へ戻って来たのだから、俺たちが街を救った英雄である事は誰にでもわかる。
まあ、実際は俺の所為で出現しちゃったわけだから、褒められる理由はないんだけどね。
だけど、これはこれで気持ちいい。
「待ってくれ! あんたたちは何者なんだ!」
俺が気持ちよくなってると、後ろから誰かが声をかけて来た。振り向いて見てみるとそこにいたのは、Aランク戦隊のレッド。
あ、センに結構高くまで吹き飛ばされてたけど、無事だったんだね。良かった良かった。心配したんだぜ? 完全に忘れてたけどね。
「チッ、小蝿が!」
センが口悪く言って【緋千華】を取り出そうとすると、レッドはヒッと小さく悲鳴をあげて後退る。
その行動をエディナが指摘するように止めた。
「ダメよ! 街中でそんな物を取り出しちゃ!」
センはギロリとエディナを睨み付ける。
「なんじゃと? 小娘が……」
ちょ、なんなの? センってば、俺以外にやたらと厳しいんですけど。まあそれはそれで、嬉しいっちゃ嬉しいけど、エディナに向かって【緋千華】を振ろうとするのはやめて欲しい。
俺は心の中で念じる。
セン! エディナの言うことを素直に聞きなさい! でないとカードに戻すからね!
あくまでも心の中でだけど、俺がそう言うとセンはキツネミミをシュンッとさせてうな垂れた。
よしよし、ちゃんと言うこと聞いてえらいえらい。
……つか、やっぱり心の中を覗いてやがんなっ!
そう思うとセンは舌を出してテヘペロして来た。
くそう、可愛すぎて逆にムカつくわ。
「……あの凶暴な獣人を従えているなんて!」
レッドが呟くとセンがギロリと睨み付ける。
それをエディナが注意して、またセンが睨みを利かせて最終的に俺に怒られる。
そんな事をしていたら、どうやらレッドは勘違いをしたようだった。
この集団のリーダーがエディナであると。
別に概ね間違いでもないので、特に否定もしなかったら、どうやら周囲も勝手にそうなのだと納得し始める。
「あんた、名前は!?」
「え? エディナ……エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギアよ」
「エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギアか、覚えておくぜ!」
そう言ってレッドは、踵を返して去っていった。
すげえな、レッド。
エディナのフルネームを一発で復唱していきやがった。多分あいつ、次に会ったとしてもエディナの名前覚えてるぞ。たぶん。
「エディナって言うらしいわ」
「すげえな、Aランクの闘士なのか?」
「鮮血のバイオレットが名前を聞いて行ったぜ?」
「じゃあ、やっぱりあの怪物を倒したのって」
「地面が割れてたもんな」
「その前の地震も凄かったわ」
ん? なんか色々周囲に派生している気がするぞ?
「え? いや、あの!」
周囲の囁きが耳に入ったのか、急にエディナが慌て出した。
どうやら周囲の連中は、エディナがウシドーンを倒した集団のリーダーだと思い込んでいるようだ。
だから、俺はエディナの肩に手を置いて言った。
「いやー、エディナがいればあんな奴楽勝だったね!」
「ちょ、ブル!」
困惑するエディナ。勘違いする人々。
だが、これでいい。
直ぐに勘違いではなくなるのだ。
何故なら、俺はエディナを魔王にすると決めているから。
読んで頂きありがとう御座います。
通っていた歯医者が終わりとなり、次回の予約をしないとなるとなんだか寂しい気持ちになる。
……いや、それはないわ。
くそう、歯医者め治療中に笑かしに来やがって!
覚えてろよ! 口コミで良いこと書いてやるからなっ!




