【056】一日一回
ツクヨミのひと太刀で真っ二つにされたウシドーン。
しかし、その体はあっという間に元通りになっていた。
うーむ。さすがロリ様の召喚モンスター。
あわよくば、ツクヨミたちだけで倒せないものかと思っていたけど、やっぱり俺の拳を当てなきゃダメみたいだ。
あのめっちゃ速い棍棒を掻い潜ってズドン!
いや、無理無理。近付いたら絶対瞬殺されるよ。
せめて動きを封じてもらわないと……。
「センー、ウシドーンを拘束することは出来る?」
カードに向かって声を掛けるとセンが大きな声で答えた。
「無理でーす!」
そんな元気いっぱいに答えないで欲しい。
そうなると、やはり残された手段はただ一つ。
なので、俺は振り返りエディナに向かって声をかけた。
「エディナ、手伝ってくれるかい?」
「ええ、私に出来る事があるなら!」
エディナは迷いなく答えた。
ウシドーンと対峙するまで、エディナは自分でも戦うつもりでいたのだろう。しかし、Aランク戦隊が手も足も出なかったことと、ツクヨミやセンの戦いを見て、怖気付いてしまったようであった。
不甲斐ない自分に憤りを感じていたのか、役割があるという事に過剰な反応を示している。
「あんまり気張らないでね。俺と一緒にウシドーンに近付いてカードを使ってくれるだけでいいんだ」
「カードを?」
「うん。俺のあげたカード、【偶然】を使って欲しい」
俺の【実装】したカード、【偶然】は【SSR】の魔法カードだ。
そして、その使用可能回数は一日に一回である。
通常魔法カードはレアリティが上がるほど、効果が大きくなるか、使用可能回数が上がる。
例えば【水】は【R】だと一日の使用回数は三回。しかし、【SR】になると五十回も使用する事が出来るのだ。
そして、【火】のカードは【UC】で一日に三回。上位カードとなる【火球】は【R】となり、威力も格段に上がるが、使用回数は【火】と同じ三回が上限となる。
つまり、何が言いたいのかというと、【偶然】は【SSR】であるにもかかわらず、一日の使用可能回数が一回であるという事だ。
これは、この魔法カードの威力を現していると言うべきだろう。
何が起こるかわからないのが【偶然】である。
だが、使用者の都合の良い事が起きる。それは、前世の記憶を基に作り出した俺が言うのだから間違いない。
「【偶然】の効果範囲がわからないから、少しでもウシドーンに近付きたい。めちゃくちゃ危険だと思うけど、付いて来てくれるかい?」
俺の問いに、エディナは躊躇う事なく頷いた。
その眼差しは真剣で、迷いのない真っ直ぐな瞳をしている。
ああ、本当に良い子だな。
美人でエルフでお尻が魅力的なことを差し引いても、エディナはとても魅力的だった。
前世の記憶の中に、こんな女性はいない。
俺の交流が乏しかったのかもしれないが、平和だったあの世界で、命を掛けて何かをする女性なんていなかった。
俺は危機感を何処かに置き忘れて来てしまったけれど、胸の高鳴りは確かに感じている。
「よしっ、行こう!」
頷くエディナの手を取って、俺たちはウシドーンへ向かって歩を進めた。
読んで頂きありがとう御座います。
いつまで牛と戦ってるんだという声がありました。
いや、嘘です。そんな声はありません。自分がそう思っただけです。
だからボケないで話を進めました。
いや、嘘です。本当はなにも浮かばなかっただけです。
むぅ。
ドーンだYo! ←言いたいだけ




