【053】攻略法はわかっているのだ
イエローの魔法カードは強力だったが、ウシドーンはダメージ一つ負っていなかった。
苦い顔をするAランク戦隊の面々。
諦めずにカードを駆使して戦ってはいるが……。
「やっぱり無理かな?」
俺はそんな呟きを漏らしていた。
彼らの持つカードは強力だ。しかし、強力な筈のそのカードを駆使してもウシドーンの肉体に傷一つ負わせる事は出来ていないのだ。
現在戦えているように見えるのは、ウシドーンが率先して攻撃に転じようとしていないからである。これがもし、あの巨大な棍棒をなりふり構わず彼らに振り抜いたとしたら……。
うん、想像したくもない。
ここらが潮時だな。
そう思った俺は、ツクヨミとセンに命令する。
「二人とも、あいつを足止めできるか?」
俺が問い掛けると二人は躊躇う素振りも見せずに頷いた。
「じゃあ、お願い。出来れば俺が一発だけ殴れる状況にして欲しい」
「……別に」
俺が言うと、ツクヨミが小さく声を上げて歩き出す。
そして、数歩前に出ると小さな背を見せたまま言った。
「別に……アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
絶対勝てないやつうううう!
ツクヨミさん! その台詞は好きだけど、言っちゃダメダメ!
俺の想像から生み出したせいか、ちょいちょい前世のネタを使用してくるのはどうなんですかね! 嫌いじゃないんだけどね!
あと、死亡フラグ立てておいて、ドヤ顏するのはやめろ! 期待に満ちた目も向けるな!
「……え、遠慮はいらないよ」
俺が溜め息を吐いて渋々そう返すと、ツクヨミは鼻を鳴らして満足そうに走り去って行った。
……なんか、ツクヨミの好みがわかって来た気がする。
「ねえ、ブル。私には何かないの?」
「早く行きなさい」
「冷たいんですけど!」
「君に決めた! いっけえ! セン!」
「なんか雑っ!」
めんどくせぇなあ。あとで毛繕いでも何でもしてあげるから、早く行ってあげてよ。ツクヨミ一人じゃ、ほんとに死亡フラグになっちゃうんだからさ。
「やったあ! 何でもしてくれるのね」
え? まあ、出来る範囲ならね。ん? いや、言ってない、そんなこと。
俺はギロリとセンを睨み付けた。
「見てるな!」
「キャー」
センが俺の心を読んでいる事に気が付き、プンスカ怒ると、センは逃げるようにしてウシドーンへ向かって行った。
……あの二人はアレで大丈夫なのだろうか?
「ブル、どうするつもり?」
エディナが心配そうに声を上げた。
「うーん。あいつをぶっ飛ばしてみようかなって思う」
これでも日記に書かれていた事を俺なりに考えていた。
日記には脆くも儚い肉体と書かれていた。しかし、Aランク戦隊の魔法がいくつか当たっていたのに、ウシドーンの体は傷一つ負わないほど頑強に出来ている。何処が脆いんだ! なんてツッコミを入れたくなるが、一つだけその肉体を簡単に破壊できる手段がある。
それは俺の拳。【破壊】だ。
ブモーンを殴った後にわかったが、俺の拳はカードの力が及んでいないモノには効力を発揮しないらしい。
逆に言えば、カードの力が及んでいるものであれば全てを破壊することが出来る。
そのルールは、神であるロリ様も理解している筈である。
それを踏まえた上で、俺に対して出された緊急クエスト。
武器に気を付けろという一文があるように、あの棍棒には俺の拳は通用しないのだろう。
つまり、あの棍棒を掻い潜り、その体に【破壊】を打ち込むことが出来れば、ウシドーンは倒せる!
それが俺の導き出した答えである。
棍棒の一撃を受ければ死。
拳を当てれば英雄。
まさにデッドオアアライブ。
だが!
色々調整したようだがロリ様よ。一つ忘れていることがあるぞ。いや、ロリ様も知らないのかもしれない。
俺には更にもう一つ手段が残されているという事を!
俺は、ニヤリと笑みをこぼした。
「……ブル。気持ち悪いから、その笑い方やめた方がいいわよ」
え? はい。その、すんません。
読んで頂きありがとう御座います。
無計画に即興で書いてる割にはお話になってきた気がする。
毎日少しずつでも書き続ければ、三か月もすれば文庫本一冊分の文量になるのだと思った。
まあ、面白いかどうかは知らんけどね。
面白い話が読みたい人はここここちら!
「マリアンたんと英雄譚」!二章まで完結しました。
こっちはちゃんとバトルするんだよ!構成もプロットも設定もあるんだよ!
当たり前だって?
え?はい。その、すんません。




