【052】イエローは何度も引く
ピンクのサソリがやれてしまい、驚き硬直するレッドを、ウシドーンが踏み付けようとした。
「退がれ! バイオレット!」
そこに疾風怒濤のなんちゃらが声を上げて滑り込み、なんとウシドーンの足を両腕で受け止める。
ズンッ! とのし掛かるウシドーンを疾風なんちゃらは、生身で支えたのだ。
「助かる!」
ぺちゃんこになりそうだったレッドは、なんとか後退し体勢を立て直す。
うおっ! すげえ! そんな事できんの!?
「ぐっ、重い! 【筋力強化】! 【召喚】! 【アイアム・ゴリラ】!」
目をキラキラさせたゴリラが召喚され、疾風……もう、グリーンでいいや。
明らかにパワーファイターなグリーン。それを手伝うように、ゴリラはウシドーンの足裏に手を添えた。
疾風怒濤はどこからきた二つ名なのだろうか。すごく気になる。
あとゴリラ。無駄にやれやれみたいに、イケメン面すんな。ムカつくわ! 自己主張の激しい奴め。……私はゴリラか。うん、ウザい。
「一気に行くぞ!」
今度はエンドマジックことブルーが声を上げた。それに追従するようにピンクと、えーっと、あと……黄色ね! イエローも続く。
「【風刃】!」
「【火槍】!」
「【再引】!」
三名の魔法カードが発動する。ブルーの出した風の刃がウシドーンへと迫り、ピンクの炎の槍も迫った。イエローはカードを引いた。
風の刃も炎の槍も、ウシドーンが振るう巨大な棍棒で簡単に蹴散らされる。
眉間に皺を寄せて唸るブルーとピンク。
そして、イエローはデッキから引いたカードを見て唸っていた。
イエローさん。公式戦じゃないんだから、デッキからカード引いても意味ないと思うよ。周りのみんなもツッコンであげてよ。
「もう一度行くぞ!」
三人にレッドが加わり再び魔法カードを発動させた。
「【光剣】!」
「【風刃】!」
「【火槍】!」
「【再引】!」
またしても、ウシドーンの棍棒で薙ぎ払われる魔法。イエローは相変わらず、引いたカードと睨めっこである。
あ、そろそろグリーンがヤバそう。
「ま、まだか!」
プルプルと震えるグリーンは、額から汗を噴き出して喘いだ。隣のゴリラは苦虫を噛み潰した表情をしている。まじいな、これは。ってか? ゴリラまじウザい。
「イーカサマ!」
レッドの叫びにイエローは首を振った。
「くっ、もうワンターンだ!」
「【光剣】!」
「【風刃】!」
「【火槍】!」
「【再引】!」
三度放った魔法は、今まで同様打ち払われる。あー、もうダメそうだな。俺はそう思い、ツクヨミとセンに指示を出そうとした。
その時だった。
イエローが声を上げた。
「来た! 一枚足りないが仕方ない!」
そう言ってイエローは手に持った四枚のカードを掲げる。
「集いし力を一つに束ねよ! 【魔導】!」
イエローが声を発すると四枚のカードが光り輝き、黒い稲妻を巻き起こした。暴風を生み出す稲妻は、巨大な腕の形に集まると、イエローの合図と共にウシドーンへと殴りかかった。
棍棒で受けたウシドーンがバランスを崩し、たたらを踏むように後退する。
おぉ、イエロー凄いじゃん。
ふざけてるのかと思ったけど、真面目だったんだな。なんだろう? カードを集めて使用するタイプもあるのか……。実戦でも、ターン数を稼がないといけない制約でもあるのかな? まあ、取り敢えずブラボー。イカサマつおぃ。
危なかったぜ! そんな表情を浮かべながら、ゴリラが額を拭う仕草が目に留まる。
ゴリラ……お前はいちいちウザいな。
読んで頂きありがとうございます。
いや、古戦場が忙しくてお休みしてしまいました。文句はあんなに時間のかかるゲームを作ったサイゲにお願いします。
私は悪くないのだ!




