【050】Aランク戦隊
宿から飛び出すと街は騒然となっていた。
逃げ惑う人々。叫び合う声。誰かの泣き声が響いてきて、阿鼻叫喚とまでは言わないが、もうめちゃくちゃだ。
「ブル! どうするつもりなの!?」
俺が急ぎ足で進んでいるとエディナが言った。
「取り敢えず俺が街を出ないと、大惨事になりそうだから門に向かってるんだ」
「なんで、ブルが出ないと、になるのよ! いえ、どの道街に居たら危険だと思うけど」
「いや、違うんだ。あれはどうやら俺の所為らしいんだ」
俺はかい摘んでエディナに事情を説明した。
「そんな! あれはアウナス様の仕業だって言うの? しかも転生って……」
ロリ様のことを話すと自然と俺が転生者だってことを話さなくちゃいけなくなった。信じてもらえるか不安だったが、あの化物を目の当たりにすると、エディナも否定しきれないようだ。ツクヨミの件もあるし、センのことも、【実装】が得意な事も考えればある程度納得はできるはず。
「エディナは危ないから、俺と反対方向に逃げた方が良いよ」
「ここまで色々して貰ってそういうわけにもいかないわ!」
なんだか生真面目で頑固な言い分だが、俺ってエディナに何かしてあげたっけ? 色々説明してもらった俺の方がお世話になっている気がするのだが……。
でも、ここでエディナとお別れになるのも悲しい。けど、危険な場所には連れて行きたくない。
どうしたものかと俺は悩んだ。
「ブル、心配してくれるのは嬉しいけど、私だって闘士よ。みんなが困っている時に、自分だけ逃げるなんて出来ないわ」
まあ、なんかエディナは言い出したら聞かなそうだよね。一途なところはとても良いんだが……エディナさん二ポイント進呈!
「エディナの気持ちはわかったよ。でも、危ないと思ったらちゃんと逃げるんだよ!」
エディナが頷くのを確認して、俺は二日酔いの頭をフル回転させてどうするか考えた。
多分、ロリ様は面白おかしくして楽しんでいる。人間を転生させるなんて馬鹿げた事が出来る存在だ。その気になれば、俺のことなんてどうとでも出来るだろう。だけど直ぐにどうにかしないという事は、ギリギリでも攻略出来るように設定して弄んでいるのだ。
相手があんなデカブツになってしまったのは、俺が【LG】を二枚も【実装】してしまったからかもしれない。つまり、ウシドーンはツクヨミとセンの力を以ってしても、簡単には倒せない相手となる。
そうなると……ヒントは日記の中にあるのかもしれない。
なるほど……わからん。
俺は完全に行き詰まった。
だが、取り敢えず街を出るしかない。
そうして街を出ると遠方から迫るウシドーンが良く見えた。
遠目だと気が付かなかったけど、よく見るとウシドーンの顔は牛だった。巨大なミノタウルスだと思えば分かりやすい。ただ、スケールがちょっと大き過ぎるけど。
徐々に近付きつつあるウシドーンを眺めていると、ウシドーン前に数人の男女が立ちはだかった。
「あれは!」
エディナが声を上げる。
「え? 知ってるの?」
「うん。あれは、Aランクの闘士たちよ」
ふーん。なんか普通そうだけど大丈夫かな?
俺の不安を余所に一人の男が名乗りを上げた。
「俺は、鮮血のバイオレット! 化物め! 逃げ帰るなら今のうちだぞ!」
あー、二つ名叫んじゃった。しかもウシドーンに向かって言ってるし。言葉通じると思ってるのかな?
「私は、誘惑のリーンベル!」
「疾風怒濤、ゼンマイ!」
「エンドマジック、カトル!」
「二度引きのイーカサマだ!」
いたたたたた。ポーズまで決めるとかやめてくれ。こっちまで胸が苦しくなる。危うく胃の中のものを吐き出してしまいそうになったわ! いや、これは二日酔いの所為だった。
それより最後の奴はそれで良いのか!?
イカサマで二度引きするだけじゃ、ウシドーンには勝てないと思うんだが!
いや、イカサマとは言ってないか……勘違いしてごめん。
とにかく、俺の目の前では、五人のAランク闘士がウシドーンに立ちはだかったのであった。
まじで、色分けしたら戦隊っぽいんですが。
読んで頂きありがとう御座います。
コードギアス「復活のルルーシュ」を観てきました。
ルルーシュが復活するってどうなのよ?って思って観に行ったけど、それなりに納得。
ファンサービスシーンも多くて(エロい意味じゃないよ)、見応えはありました。
あまり期待はしてなかったけれど、結局ギアスは面白いってことで決着。
次回作に引っ張るような終わり方ではなかったし、ギアスファンは必見ですね!
つか、この後書きは日記みたいになってるけど、誰に向かって発信してるのだろうか……




