【005】エルフきたー!
眼前には巨大鎧と凶悪な顔をした狼男。後方からは雄叫びを上げる熊さんに挟まれている絶体絶命の状況。
正にピンチ、人生最大の危機。
というか、転生してからピンチにしかなっていない気がする。
だれかー。へールプ!
「こっちよ!」
俺の心の叫びが届いたのか、木々の陰から声が響いた。
咄嗟に視線を向けると、何やら手招きしている人影があるのが見て取れた。
うおー、助かった。誰だか知らないけど、まじ助かる。
俺はなんの疑いも持たずに、その人影に向かってダッシュ。猛然とダッシュ。
後ろからおっかない雄叫びが聞こえてくるが、振り向いている余裕なんてない。ただひたすらに、全力で駆けた。
すると、狼男とやり合っていた巨大な鎧がこちらへと体を向ける。そして、手に持った剣を俺に向かって振って来た。
げ、まじかよ。
気が付いた時にもう遅い。振り抜かれた剣は既に俺の眼前に迫って来ていたのだ。
あー、これは死んだわ。俺の脳内に過去の出来事が走馬灯のようにゆっくりと巡る。
ロリさまと出会って、転生したら熊さんに襲われた……ってみじか! コンマ数秒ももたないペラッペラな人生ですやん!
二度目の人生が開始一時間程で即終了とかありえねえ。ロリさままじ許さん。
そんなことを考えていたら、巨大鎧の剣が俺の頭上を通過していった。そして、直ぐあとに悲鳴のような声が聞こえた。
思わず振り返ると、俺の直ぐ後ろまで迫っていた熊さんが、血を流して仰向けに倒れるところであった。
あれ? 助けてくれた? 鎧さんは良い人なのか?
そんなことを思っていると、木陰の人物が再び声を上げた。
「何してるの! 早く!」
俺はハッと我に返り、その人物の元へと急いだ。
俺を呼んでいたのは、小柄な女の子だった。
金色の長い髪。細い体つきに薄っぺらな胸元。そして、ピコピコ動く長く尖った耳。
エ、エ、エーーーーールフ!
ヒャッホウ! これだよこれ。これこれ。
俺が欲していたのは怪獣大戦争じゃなくて、こういうやつだ。
はぁ。たまらん。
俺は感動のあまり、思わずその薄っすい胸元に顔を埋めてエルフの女の子に抱き着いていた。
「ち、ちょっと! 抱き着かないで! 離れてよ、このばい菌! 身動きが取れなくなるでしょ!」
エルフちゃんは俺の顔をグイグイ押して、抱き着いた俺を必死に引き剥がそうとする。よくよく考えれば、今の俺は血だらけのベトベトだったわけだ。
そりゃあ嫌がられもするし、ばい菌扱いもされる。
名残惜しいが仕方がない。いや、そもそもそんな事をしている場合じゃなかった。つるぺたエルフが俺を惑わせるから、ついつい命の危機を忘れてしまっていた。
なんだろう。俺はこんなにもアホなやつだったろうか? アレか? ADHDってやつか?
またもや余計な思考にとらわれそうになったその時。
ドゴンッという音が響き、俺を助けてくれた鎧さんが煙を上げて倒れた。
倒れた鎧さんは、光の粒になって跡形もなく消えていく。
「「っあ」」
俺とエルフちゃんの声がハモる。
そして、無防備な俺たちの前に、大きな狼男が立ち塞がったのだった。
読んで頂きありがとう御座います。
投げ銭ならぬ、お年玉ポイントサンクス!
気晴らしに書いてるので、お年玉くれると作者がぬか喜びして、主人公のボケが冴え渡ります!(チラチラ)
ともあれ、本日はこれにて終了。明日から毎日一話投稿予定です。短いから、二話上げる時もあるでないで!