【003】転生したら死んでいた
眩い光が瞳の中に差し込み、俺を覚醒させた。
ああ、転生したのか……。
ということは、俺は今赤ん坊で母親の胎内から取り出されたばかりということだ。
ここから数年は思い通りに身動きが取れないと思うと、手持ち無沙汰にならないか心配になる。
だが、まあ仕方ない。どうか母親が美人でありますように。どうせなら楽しい気分でおっぱいに吸い付きたい。
取り敢えず心配かけない為にも、オギャーとでも泣いておけばいいのかな?
よーし、泣くぞ!
「お、お、おぼぇげおぼはあ」
オギャーと泣こうとしたら、胸の中から吐瀉物が溢れ出て来た。
何事だ! と思い俺はガバッと起き上がる。
え? なんで起き上がれんの?
目を見開いて見てみれば、俺の体は既に青年のような身体つきをしている。
おまけにしっかりと服も着ているとは、どういうことだ。
まさかこの世界では、成人して服を着てから母親の胎内から出てくるのか? いや、それはなんかやだなぁ。でも、なんかヌルヌルしてるし。
俺は真っ赤に染まる自分の手を見て思った。
真っ赤!
なんじゃこりゃ!?
よく見れば自分の体を濡らしているのは真っ赤な血であった。胸元の破れた部分と、さっき吐き出した血がべっとり付着している。
恐る恐る血濡れの胸元に触れてみるが、どうやら傷を負っているわけではないらしい。
つーか、なんだこれ?
転生したらいきなり死んでるとか笑えねえから。
俺はスクッと立ち上がると周囲を見渡した。
辺りは木々に覆われていて、俺はその一本に背中を預けて倒れていたらしい。
どうやらここは森の中のようで、ざわざわと葉を揺らす音が響いてくる。
どんな状況だよ。転生したらいきなり森の中で、血塗れになってるとか意味がわかんねえ。
おまけに赤ん坊ですらないとか、どうなってんだよ。
そう思った時、俺のラプラスの悪魔とも言われた思考能力が解を導き出す。
この血塗れの肉体は、今しがた死に至ったのではないか? そして、その体に俺の魂が入り込み転生したのでは?
うむ。たぶんそうだ。それしか赤ん坊でなくて、血塗れな理由が思いつかない。
さすが俺だ。冷静で賢い。
そんな自画自賛をしてみたが、そんなことは転生する前提を知っていれば誰でも思いつく。
つーか、こんな転生ありかよ! あのロリさまめ、嫌がらせしやがって!
ここにはいないロリに向かって、悪態をついていると、木々のざわめきに混じって金属が打ち合う音が響いて来た。
あー。そうだよな。
この体の人が今死んじゃったんなら、その要因となったモノも直ぐ近くにあるよな。
綺麗に胸を一突きにされてるみたいだし、人同士の争いかな? あー、やだなぁ。
つーか、普通に怖いから逃げよう。そうしよう。
俺は踵を返して、音の鳴る方と反対へ向かって走り出した。
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二時間後に四話目投稿済みです。