【202】直ぐ見破られちゃうんですが
【LG】ティターニアに抱えられて空中へ退避した魔王……エディナさん。
主人を護らなくてはいけないとなると、【LG】とはいえ自由には動けないでしょう。
けれどもエディナさんの周囲には、他にも四体の妖精が飛んでいる。
【SSR】の【フラワーピクシー】、【フォレストピクシー】、【アクアピクシー】それともう一体は、ブルさんから聞いてない妖精だ。
それに対してこちらは自由に動けるワタツミさんと、二人の闘士。一人はベテランだけど、一人はど素人。
数の上でも不利だし世界最高峰の称号を持つ闘士が相手となると、これは大丈夫なのだろうかと心配になる。
「【妖精の靴】」
エディナさんが聞いた事も無い魔法カード発動させると、ブーツから翼が生えてその体を【LG】の支えもなく空中に留まらせた。
あー、足場を奪う為の【地形】カードの有利性がもう無くなってしまった。
カード一枚で空を飛べるとか、ズルくないですかね?
おっと、悠長に眺めている場合ではなかった。
私も最低限の召喚モンスターを出さなくては。
「【召喚】、【シルフ】!」
ブルさんにいただいた風の精霊。レアリティも【SSR】と、私には少々過分なカードである。
「【召喚】、【ウンディーネ】!」
カラドボルグさんが召喚したのは、水の精霊だ。勿論こちらも昨日ブルさんに貰ったものでレアリティは【SSR】。
カラドボルグさんは他にも色々持っているみたいだけど、ひとまずは海の地形でも動ける召喚モンスターで牽制だ。
地形は主戦力のワタツミさんが有利なものを選んでいる。けれど相手は妖精デッキと聞いている。
全部の召喚モンスターが空を飛べるとなれば、足場を奪うことにあまり意味はないのかもしれない。その辺の駆け引きとかバランスは私にはわからないのだけど。
そして、互いに主力の召喚モンスターを出した後は、暫しの睨み合いが続いた。
これはこれで有り難い。私たちは足留めが目的なわけで、勝つ事を目的とはしていないからだ。もとより、私たちがエディナさんに勝てるとも思っていない。
だから一分一秒でも時間を稼ぐのが、一番正しい行動だろう。
「ふむ、海神ワタツミですか。エディナ、彼女は攻撃タイプに見えますが、回復支援役の【LG】です。単体であれば、万能タイプであるわたくしの敵ではありません」
「そうは言っても、他にもブルが実装した召喚モンスターがいるわ。油断出来ないと思うけど」
「【SSR】シルフとウンディーネですね。力は強力ですが、あれは精霊です。精霊そのものを操るわたくしに向けて来るにはあまりにもお粗末。つまりは、ただの護衛みたいなものでしょう」
ぬはっ、ひと目見ただけでこっちの戦力バレてる! あのティターニアって【LG】、なんで昨日【実装】されたカードの情報知ってるんですか!
確かにこの【SSR】はティターニアと相性が悪いから、身を守る為だけに使えと言われてるけども、ちょっとぐらい脅しにはなると思ってたんですが。
「ティターニアって言ったっすか? 何故、マスターが昨晩【実装】したカードの詳細を把握してるでぇす?」
カラドボルグさんもそのことに気が付いたみたいだ。普段は少し頼りない感じがするけど、余裕のあるその態度が今は凄く頼もしい。
けど、無理に突っかかって役割を放棄するようなことはしないでくださいね。
「創造主様の実装されるカードには、基盤となるものが存在します。わたくしたちはあの方の記憶から生み出されているのですから、当然ながらその知識も与えられている。残念ですが、わたくしたちに未知のカードで意表を突くことは不可能ですよ」
「……なるほど、マスターの実装したカードは【LG】には筒抜けってわけっすか。なら、これならどうでぇす」
そう言うとカラドボルグさんは一枚のカードを取り出した。
「【召喚】、【太陽】!」
小さな火の玉のような召喚モンスター。
けれど、その身に纏う熱量が凄まじい。
相手よりも高い位置に出現したにもかかわらず、私の肌をチリチリと焼くような熱さが伝わって来た。
「風に水、それに火を加えて来たところで同じでしょう」
そう言ってティターニアは、【ザ・サン】ヘ向かって手をかざす。
しかし、何か攻撃を仕掛けられた筈の【ザ・サン】は、何事もなかったかのようにその場で鎮座していた。
ムッと顔を顰めるティターニア。それに対してカラドボルグさんがフッと笑みをこぼした。
「どうやら問題なく通用するみたいっすね。それじゃあワタツミ、あんたの実力を見せて貰うでぇす」
「仕方ありませんね。主君以外に指図されるのは不本意ですが、これも主君の命とあらば致し方ない」
そう言うとワタツミさんは海を操り、自由自在に動く波の上に乗ってエディナさんヘ向かって行った。
その進行を阻もうとピクシーたちが全面に飛び出す。それを手にした水の槍で容赦なく斬り捨て、エディナさんを庇うように前ヘ出たティターニアヘ槍の一撃を放った。
しかし、突然横から繰り出された攻撃に、ワタツミさんが吹き飛ばされる。
ワタツミさんは驚きの表情を浮かべながらもダメージはなかったようで、クルクルと回って波の上に着地した。
そして相手ヘと視線を向ける。
すると、そこには今し方斬り捨てた筈の妖精たちが、フワフワと空を舞っていたのである。
「わたくしの攻撃が届かなかったのは、ただ目算を誤っただけ……蜃気楼、でしょう?」
そう言ってティターニアが再び手をかざすと、【ザ・サン】が真っ二つに割れて霧散した。
「四つの元素を操るわたくしにとっては、わざわざ火を出すまでもなく同じ事が出来るのです。当然、看破することも容易い」
げげげ。ブルさん、元恋人だからって奮発し過ぎじゃないですかね! この【LG】とんでもないんですが!
読んでくださりありがとうございます。
コタツという呪われたアイテムをご存知だろうか?
一度入ってしまえば最後、あまりの心地良さに抜け出す事が困難になり、直ぐに夢の中へと誘う魔性のアイテム。正しく呪われた一品である。
その効果に気が付いた私は、ある時そのアイテムを封印することにした。
だが、エアコンだと光熱費高くね? などというくだらない発想の所為で、その事をすっかり忘れていた私は、その封印を解いてしまったのである。
結果。
なんもやる気起きねー。
この体たらくである。




