【198】ちちち、違うんです!
ふわっふわの青く長い髪。その頭部にはピンと張った形の良いケモミミ。くびれた腰と程良い肉付きのお尻の間からは、これまたモッフモフの尻尾が生えている。肌理の細かい肌は、ほんのり赤みが差していた。
晒されている素肌に身に付けているのは、下半身を隠す為の薄い布地のみ。つまりはパンツ一枚!
片足を上げて、正に寝巻きに足を通そうと云うところで固まっているのはこの方。
俺のアイドル、フェリちゃんである。
「きっ」
き?
キャーとでも叫ぼうとしたのだろうけど、フェリちゃんは吐き掛けた言葉をグッと飲み込むと胸元を両手で隠して俺を睨み付けた。
隠したところでもう遅い。見ちゃいましたから。目に焼き付けて録画して心フォルダに保存して鍵掛けました。ありがとうございます。
とはいえこれはアクシデントである。
【LG】を【実装】する為、センにフェリちゃんの下へ空間移動してもらったら、たまたまお着替え中のフェリちゃんのお部屋へ現れてしまったのである。
故意的か? と問われれば答えはノーだ。だが、アポ無しで突然女性の部屋に侵入し、裸体を晒している女性を、頰を緩めてまじまじ見つめていた俺の姿はありなのかと問われれば。答えは決まっている。
間違いなく有罪です。完全に犯罪者です。
これは半殺しにされるかもしれない。
そう思って覚悟していたのだけど、フェリちゃんは普段のように激昂する事はなかった。
それどころか、溜め息を吐くと胸元を顕にしてお着替えを再開するではないか。
ど、どうしたの? らしくないんじゃない?
逆に俺の方が困惑していると、フェリちゃんは程なくしてお着替えを終了した。
むう、寝巻き姿可愛い。
しかもブラを付けて無かったから、今のフェリちゃんはノノノ、ノーブラ! 寝巻き越しの胸元がより煽情的に見えて来る。
「あのなぁブル、お前の女になるとは言ったけど順序ってもんがあるだろ?」
ん?
………………ハッ!
今、何と言った!? 俺の女? つまりそれって、彼女って事? 恋人って意味?
あの時曖昧になっちゃったやつって、ちゃんと有効だったのかよ! 今まで普段と態度が変わらないから、流れたのかと思ってた!
しかも、今日怒らなかったのは、恋人としてそう云う事もするって理解しているって事だよね?
まじかよ。高まるんだが、グフフのフ。
「しかも、センまで連れて来るとか、カッコ悪過ぎじゃねか?」
ぐっは、突然核心を疲れて思わず吐血しそうになった。
確かにそう云うつもりだったらメチャクチャカッコ悪りぃ。新卒で入った企業で初出勤の日にお母さんが同伴するよりも恥ずかしい。
「ちちち、違うんだよ!」
「何が違がうんだよ。つか、明日からあの魔王とやり合うんだろ? そんな時に何やってんのお前?」
「そうそれ! 魔王だよ魔王!」
俺は捲し立てるように事情を説明した。
折角金と力と【LG】を餌に釣り上げたフェリちゃんを、こんな馬鹿な事で呆れさせたく無い。
「と云うわけで、フェリちゃんの【LG】を【実装】しようと思って急いで来たら、おいしい場面ーーげふんっ、間が悪かったというか!」
話を聞いているとフェリの尻尾が、ピコピコ左右に揺れ始めていた。
これはあれだね。喜んでる時の反応だね。フェリちゃんマスターの俺にかかれば、フェリちゃんの感情を読み取るなど容易い。うむ、何とか有耶無耶に出来たようだ。
ところが、ピンと張っていたケモミミが急にシュンとなった。
はて? どうしたのだろうか?
「つか、その買って来た【白無垢】は幾らだったんだよ?」
「ん? 【1億】イェンだね」
「い、一億!? そんな金額流石に払えねぇよ!」
「え、別にいらないけど? どの道、創ってあげるって約束だったし」
「それは、俺が自力で【白無垢】を手に入れたら代わりに【実装】して貰うって話だろ!」
「そうなの? でももう買って来ちゃったし、気にしなくて良いんじゃない?」
「どうしててめぇは、そんなあっけらかんとしてられんだよ!」
どうしてと言われてもね。
そもそもフェリちゃんに【LG】を【実装】してあげることに抵抗ないし。唯一懸念してたのが、一緒にクエスト受けれなくなっちゃうことだったんだけど、今やフェリちゃんは俺の彼女! なんの憂いもなくなったね!
「それで? どんなのが良いの?」
俺が強引に【実装】する方向へ話を持っていくと、フェリちゃんの尻尾がピンと立ったあと、左右に揺れた。
「……まあ、カッけぇのが良い」
はい。そう言うと思って、実はもう決めていたりもする。
フェリちゃんの毛色と被るかなって思ってたけど、乗りこなすなら、同じ方が絵的に映える。
フェリちゃんと同じ青い毛並み。神をも食らったといわれる悪評高き狼の化身。
「さあ、来い、大狼フェンリル!」
手に持った【白無垢】から鎖が飛び出すと、淡い光に次々と巻き付いていく。
その鎖が弾けるように霧散すると、そこには青い艶色の毛並みをした獣人が蹲っていた。
「なぁ、ブル」
「なんだいフェリちゃん?」
「こいつをどう見たらカッコ良く見えるんだ?」
指差すフェリの先には、召喚したフェンリルがいる。
そしてその姿は、仔犬のように愛らしい小さな女の子だった。
読んでくださりありがとうございます!
続け様の【LG】実装!
ええい、ちんたらやるのはやめだやめだ!




