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【194】お客人がやって来る

 困りました。


 大変です。一大事です。


 私は部屋の中を、右へ左へ落ち着きなく行き来していた。


「落ち着くでぇすルティル。別にとって食われるわけではないでぇす」


 ここは委員会事務所の一室。その室内では、私とカラドボルグさんの二人がとあるお客人を待っていた。


 本来であれば、クランに問い合わせて来た客は自分たちの事務所で応対するべきなのだけど、黒のウンエイには未だ事務所というものが無い。


 本格的に活動するのはブルさんたちが学園を卒業してからとなっているので、その事自体に文句があるわけじゃない。


 直接対応しなければならない相手は、今みたいに委員会の事務所を借りれば事は足りるのである。


 けれど、今回のお客さんを委員会の一室などで応対しても良いのか凄く悩んだ。


 マーガリの屋敷を借りても良かったけど、隣町になってしまうし、何よりマーガリに凄い迷惑をかけてしまう。マーガリだけじゃなくて、誰に頼んだとしても迷惑をかけてしまう事は想像に難くない。


 その為、失礼に当たってしまうかもしれなかったが、委員会事務所を選ばざるを得なかったのだ。


「カラドボルグさん、よくそんなに落ち着いていられますね」


「別に襲われるわけでもないし、だったらダンジョンに潜ってた方がよっぽど緊張するでぇす。それよりも私がここ居る必要はあるでぇすか?」


「どうせ暇なんですからここにいてください! 私とカラドボルグさん以外はみんな学生ですから、クランは私たちが回さなくてはいけないですよ」


「……暇というか、クエストを受けて貰えればブルたちがいない間は私が一人で回してくるでぇす」


「駄目です。ここにいてください!」


「退屈でぇす」


 もう、この人はなんでこんなに呑気なんですか!


 私なんてどう対応したら良いか色々考え過ぎて、思考回路はショート寸前、今すぐ逃げたいですよ!


 応対するだけなら問題なんいんだけどなぁ。なんて突っ込まれて、どう返答したら良いんだろう。出たとこ勝負はちょっとなぁ……。


 そんな感じで考えが纏まる前に扉がノックされた。


 はい、と返事をすると委員会の事務員さんのようで、お客人が到着した事を告げて来た。


 私は溜め息を吐いて部屋へと通してもらう。


 もう良いや、どうにでもなれ。


 程なくして、部屋の中に一人のエルフが通される。


 私と同じ金色の髪に緑の瞳。私よりも少し大人びた顔付きで身長もちょっと高いけど胸は……うん、大して変わらない。


 そのエルフの周りには鮮やかな色の妖精がフワフワ飛んでて、その後ろからは思わず見惚れてしまいそうになるほど美しい妖精が後に続いた。


 言わずもがな、先日目の当たりにした緑の魔王さんである。


 ブルさんの昔の恋人らしく、絶対関わらない様に釘を刺されている相手と私はこれから対峙しなければならないのだ。


 関わるなって言われても、向こうから直接問い合わせて来た場合どうすれば良いんですかー!


 私は委員会の圧力とブルさん考えの板挟み状態。これぞ中間管理職のさがである。ただの雑用兼事務員ですが。


 取り敢えず話を聞いて、とっととお帰り頂こうと思います。


 私は緑の魔王さんをソファーへ促し、対面へと腰掛けた。


 対峙する緑の魔王……エディナさんでしたか。エディナさんの後ろには美しい【LG】が控え、私の後ろにはカラドボルグさんが控える。


 別に戦うわけじゃないけど、戦力の差が……ごめなさい、カラドボルグさんが悪いわけじゃないんです。



「はじめまして、私は黒のウンエイの窓口をさせてもらってますルティルと申します。この度は場を設けられず、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。なにぶん当クランは設立して間も無く、資金も未だ乏しい状態でして」


「お気になさらず、押し掛けたのはこちらの方ですし。えっと、こちらもご挨拶を。ご存知かもしれませんが、現緑の魔王を拝命していますエヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギアです。この度はお忙しい中、急な申し出にご対応くださって感謝致します」


 とんでもありません。いやいや、こちら方こそ。でもこちらも。


 なんて互いに謙遜を重ねていたら、エディナさんが、かしこまるのはやめませんかって言ってきました。


「魔王はただの称号であって、偉いわけじゃないんですよ」


 いや、偉いでしょ。闘士はおろか、委員会の幹部ですら逆らえないのに偉くないわけがない。


 けれど、エディナさんは意外にも謙虚で、高圧的でないのはありがたかった。名前もエディナと呼び捨てて構わないと言ってくれたし、私の事もルティルと呼んでくれる。


 同じエルフ同士で通ずるものがあるのか……私には無いのですが、親近感を持って接してくれるのは助かります。


 会話しててわかったけど、この人たぶん良い人ですね。気さくな様子に私の緊張も幾分和らいで来ました。


 とそんな感じで会話もあったまって来たところで、私は自然と本題へと移る。

 

「なるほど。それでエディナさんは、黒のウンエイにどんなご用があったのでしょう?」


 私がそう聞くと、エディナさんの目が少し細まった気がした。


「黒のウンエイの代表者に会わせてくれませんか?」


 いきなり無理な要求キターーー!


 落ち着いていた空気が突然緊張感に包まれた。あ、いや、包まれているのは私だけだった。

読んでくださりありがとうございます。


いやー、台風の影響で執筆が滞ってしまった。


もしくは消費税増税の影響ですね。


アベアベ、アベが全部悪いんだ!

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