【191】カラド……馬鹿子再び
翌日。
学園へ登校していると突然声が響いた。
「昨日はよくもやってくれたでぇす!」
ぶるんっと胸を揺らしてカラドなんちゃら俺の前に立ち塞がり、ビシッと指を差して来た。
一応気が付いているけど、面倒臭いので当然無視。
「それでね、ツクヨミが相手に虫を食わそうとしてね」
「まあ、ですがお兄様に危害を加えようとされたんですよね? 仕方ないと思いますよ」
「あの後マルスは暫く仕事を休んだらしいわ」
俺たちが会話を続けながら通り過ぎると、たたたたと足音を響かせて再び前に出てきたカラドなんちゃらは、再度声を上げる。
「昨日はよくもやってくれたでぇす!」
「そういえば、レインの病弱設定どこに行ったの?」
「あれは遅刻を誤魔化す為の布石よ。ブルが起こしに来てくれるようになってからは不要になったわ」
「レインさん、自分で起きられた方が良いですよ。あと、お兄様に齧り付こうとするのをやめてください」
「馬鹿ねミル。世の中には抑えきれない衝動というものがあるのよ」
「それってただ我慢出来ない人だと思うけど」
俺たちが再び通過して行くと、カラドなんちゃらはブルブルと震え出した。
「ええいっ、無視するなでぇす!」
腰のホルスターから、カードを抜き出し俺に向けようとすると、バシッとカードが弾き飛ばされる。
そして、ぬっと姿を現したワタツミがぶっとい水の塊でカラドなんちゃらの頭をぶっ叩いた。
「えぶっ!」
べシンッと地面に倒れて昏倒するカラ……馬鹿子。
「なんだったのかしら、あれ?」
「さあ?」
俺の日常は今朝も平和だった。
昼休み。
今日はミルが俺とレインにお弁当を作ってくれたので、天気も良いし外で食べる事になった。
料理なんて出来たんだって驚いたら、ミルはちょっとご機嫌斜め。でも、ベタ褒めして食べたら直ぐにニッコニコになった。凄くちょろいです。
あ、でも本当に美味しかったから嘘ではないよ。
みんなで楽しくお弁当をつついていたら、茂みがガサッと動いてまた馬鹿子が登場した。
「今度こそ勝負でぇす!」
「へぇー、タコさんになってる」
「こっちは、エリマキトカゲね」
まじで! タコと来たらウサギかと思ったけど、エリマキトカゲってどうやって作るの!? 凄くね?
ミルの意外な才能に驚いていると、ミルは嬉しそうに頰を染めた。
「むむむ、無視するなでぇす!」
馬鹿子がまたカードを取り出そうとすると。
「あ! 見つけました!」
「こらーっ! この不審者め!」
召喚モンスターを引き連れた警備員さんが三名、大声を上げて走ってきた。
「げっ、もう見つかったでぇす」
猛ダッシュで逃走を図る馬鹿子。
「違うっす、不審者じゃないでぇす!」
叫びながら逃げていったけど、どう考えても不審者です。ありがとうございます。
「本当にあの方はなんなのでしょう?」
「さあ?」
放課後。
今日はクエストを受ける日である。
ウンエイ部の一同が揃うと、ルティルとの待ち合わせに使っているカフェへと到着した。
俺は基本メイド喫茶ケモケモを利用するんだけど、さすがに仕事の打ち合わせには使えないので別の店にしている。
ルティルと合流し、取って来て貰ったクエストの分担を決めていると店にガツガツ足音を響かせて入って来る人物が居た。
まあ、馬鹿子なんだけど。
「はぁはぁ、いい加減にするっす。私と勝負するでぇす!」
「じゃあ俺とフェリちゃんは討伐の依頼を受けようかな」
「当たり前のように俺とペアを組もうとすんじゃねぇ!」
「ブル君今日は私と採取しに行って欲しいの」
「それなら俺も一緒したいな。あれだろ、前にドロップした鉄の【白無垢】で、ブルに【実装】の練習を見てもらいたいんだろ?」
「そうなの、上手く出来ないかもだけどコツが知りたいの」
「うん良いよ。じゃあフェリちゃん今日は採取になっちゃったけど我慢してね」
「だから何で俺とブルが一括りみたいになってんだよ!」
「い、い、良い加減にするでぇす!」
俺たちが会話を続けていると、馬鹿子がテーブルをバンッと叩いた。
すると、ルティルが立ち上がりビシッと指を差す。
「ブルさんが無視する方針のようでしたので黙ってましたが、なんですかあなたは?」
珍しくちょっと怒り気味である。
「私はブル・ドッグと勝負しようよ……」
「あなたに挑む権利はありません。それに今はクランでクエストについての会議をしているんです。邪魔するというなら委員会に報告して、法的に処罰してもらう事になりますよ!」
捲し立てられるように言われ、馬鹿子は喉を詰まらせた。そして、ぐぬぬと唸ると、何も言い返す言葉が見つからなかシュンとなってトボトボ店を出て行った。
うーむ、なんかちょっと可哀想になって来たかも。
読んでくださりありがとうございます。
何故また新キャラを出したのか。
それはね。
何も考えずに魔王を七人に設定してた所為で、挑む面子が足りなかったからだよ!




