【190】関わらないよーに!
宿に戻った俺は、置いて来たフェリちゃんとルティルも含めて、黒のウンエイ全員を部屋に集めていた。
「はいっ、皆さんちゅうもーく!」
パンパンと手を叩いて一同の視線を集めて、俺はワザとらしく咳払いをすると話し始めた。
「現在パンナコッタに緑の魔王が来ています。ですが、皆さんは何があっても関わらないよーに!」
スッと手が上がった方へ視線を向けると、パリスが怪訝な表情を浮かべていた。
はい、パリス君!
「関わるも何も、魔王が俺たちを相手にするとは思えないんだが?」
状況を把握してないペトリーナとミルはそれに頷く。
「さっきレインがいきなり喧嘩を吹っ掛けてたからね! 今後は勝手な行動をしないように!」
俺が注意をすると、パリスたちは驚いた表情でレインを見た。当の本人はどこ吹く風。話を聞いているのかいないのか、リンドブルムといちゃこらしている。
「レインさーん、話を聞いてますかー!」
「ちゃんと聞いてるわ。けど、折角のチャンスなんだから、倒しておいた方が良いと思ったのよ。アウナス様もそれを望んでいるわけだし」
「今のままじゃ、どの道エディナには勝てないよ!」
「……エディナ? ブル、あなたやはり緑の魔王の事を知っているのね」
あ、しまった。ナチュラルに言ってしまった。
「あの美しい【LG】を所持しているというだけで、そうではないかと思ったのだけど……もしかして昔の女なのかしら?」
え? っとみんなが一斉にこちらを見て来た。
ちょ、レインさん言い方!
昔の女ではないけども、色々あったのは確かですね!
俺が口ごもっていると、レインはやっぱりと溜息を吐いた。
やばいっ、なんか誤解されてそう。だけども上手い説明が思い付かない。告って振られた相手なんだよね! とは恥ずかしくて口が裂けても言えないわけで。
「ブル、情があるのはわかるけれど、私たちはアウナス様に魔王の称号を奪うよう命じられているのよ? 何れにせよ緑の魔王は倒さなくてはいけないわ」
そんな事は分かってる。分かってけど、それは今じゃなくても良い筈だ。俺たちはまだ学生で、学生の内は動かないとロリさまにも言ってある。かといって学生の内に動いちゃいけないわけでもないし。うーむ。
「淫乱ピンク、ブルも言ったが今のお前ではペタンコには勝てんぞ。ブルの指示通り大人しくしておれ」
俺が困っていると珍しくセンが助け舟を出してくれた。
普段は面白がって俺が嫌がる絶妙な塩梅を保っているのに、どういう風の吹きまわしだろうか?
「私はそんな意地悪じゃないぞ☆」
もふっと抱き着きながらセンが可愛子振る。俺は何も言ってないぞ☆
「セン!」
レインがセンに真剣な眼差しを向ける。どうやら、エディナには勝てないと言われた事が気に入らなかったみたい。
「淫乱ピンクはやめてって言ったでしょ!」
そっちかーい!
「別に間違ってはないじゃろう」
「ぜんっぜん違うんだけど!」
「なら毎朝スケスケの寝巻きでブルを誘惑するのをやめたらどうじゃ」
え? そうなの? とみんなの視線はレインに集中する。
「ししし、してないけどー」
もうやめなよレイン。センは心を読んで的確に弱いところ突いてくるから勝ち目ないって。傷口を広げるだけだし、言ってる事も事実だしね。でも、俺嫌いじゃないよ。レインのスケスケ。
とりあえず話も脱線しまくっているので、再度手を叩いて注目を集める事にした。
「まあ、色々事情はあるんだけど、今はまだ緑の魔王に手は出さない。それと黒のウンエイに問い合わせてくるかもしれないけど、みんな何も答えないようにね。あともしかしたら学園にも来る可能性があるから困ったら心の中でセンを呼ぶこと!」
「えー、それって私が全部見てなきゃいけないってことー?」
「出来るでしょ?」
「出来るけど面倒なんだけど。ブル以外を覗いてても面白くないし」
君は俺の何で楽しんでるわけ!?
「じゃあ、ちゃんとやってくれたら、何かお願いを一つ聞いてあげるよ」
「やるやるー。というかペタンコエルフと会うのそんなに嫌なの? そんなこと普段絶対言わないのに……」
あのね。心を読めるんだからわかるでしょ!
「内心では凄く会いたがってるけど?」
わー! やめろー! 俺の心を読むなー!
「と、とにかく! そういうわけなんで皆さんよろしく!」
動揺を隠せないまま、俺はそう締め括って解散となった。
みんなが帰ったあと、センの言葉胸に突き刺さる。
本心では会いたがっている。
ああ、そうだよ。だから会いたくないんだ。
会って話をしてしまったら、離れたくなくなってしまうのがわかるから。
読んでくださりありがとうございます。
人間は自分の知らない事は想像出来ないって誰かさんが言ってたけど、それじゃあ現実には有り得ない異世界って概念は誰が最初に思い付いたのだろうと疑問に思った。
知らないからこそ想像力で補完していくのではなかろうかと、真逆の事を思う今日この頃。




