【188】レインは敵役だった
「どういうこと!? 魔王ともあろう者が、売られた喧嘩を買わないというのかしら?」
レインはドラゴンの上から不遜な態度でそう言った。
「売られている物を一々買っていたら、破産してしまうわ」
「物と喧嘩は別ものでしょう、プライドが無いというのかしら? それとも自信がないの?」
「正式な手順を踏んで、二年先まで入っている予約に順番待ち出来るなら、あなたの決闘を受けても良いわ」
「そんなに待てるわけないでしょう!」
「なら、大人しく引き下がることね。でなければあなたの事を委員会に報告します」
「すれば良いわ。私たちは神によって魔王になる事を求められているの。大義はこちらにあるわ」
「っ!?」
レインの言葉にエディナは目を見開いた。
「……驚いた。けれど、その命を受けたのが、あなただけだと思わないことね」
今度はレインが驚きに目を剥く。
あー、そういうことか。レインはロリさまの指示に従おうとしているのね。全ての魔王を倒せって言われてるやつ。
でも、ダメだよ。
レインにとっては折角のチャンスかもしれないけど……つか実際、リンドブルムがいれば魔王にもなれるかもしれないけど、それはエディナ以外が相手だった場合だ。
リンドブルムは確かに強いけど、エディナには妖精デッキを丸ごと作ってあげてるから、今のレインじゃ分がわるいと思う。
エディナが温厚な性格じゃなかったら、今頃バトルに発展して取り返しのつかない事になっていたかもしれない。
「レインのやつ無茶すんなぁ、けどこんだけ人目があるとこで魔王に喧嘩ふっかけるとか、結構カッコ良いじゃん」
いやフェリちゃん、それはさすがにカッコ良くないと思うよ。
「衆目を集めて、魔王が断り難い状況を作っているというわけですか!」
いやルティル、レインはそこまで考えてないと思うよ。深読みし過ぎだよ。
周囲はざわつき、突然始まった攻防に野次が飛ばされた。
エディナはやる気じゃないみたいだけど、こんな状況じゃあルティルの言う通り、魔王としてただ引き下がるわけにも行かないだろう。
まったくもう、仕方ない。
「ワタツミ、レインを止めて来てくれる?」
「承知しました。ですが主君、私が離れれば主君のお姿が隠せなくなりますがよろしいですか?」
あー、遠隔では無理なんだこれ。まあ仕方ないね。
俺が頷くと、ワタツミは勢いよく飛び出して行った。
空中に水で足場を作り、跳ねるように動き回るとワタツミは直ぐにレインの乗っているドラゴンの上に到着する。
「な、ワタツミ! 何の用かしら?」
「レイン殿、主君が引けと仰っています」
「こんな機会……簡単に引けると思っているの?」
「簡単かどうかは知りませんが、主君はレイン殿を引かせろと私に命令されました。素直に従ってくれないというのであれば、実力をもって遂行する他ありません」
「……そう、彼は見ていたのね」
ワタツミが頷くと、レインは肩をすくめてみせた。
「あなたは何者? というかその身のこなしは人じゃないわね?」
「答える義理はありませんね、モンテフェギア」
エディナの言葉をワタツミは冷たくあしらう。
エディナは問い掛けるのを直ぐに諦めて、レインへと視線を向けた。
「あの小さな女の子は、誰に実装してもらったのかしら?」
決め付けるかのようにそう言葉を向けられると、レインは薄っすらと目を細めた。
「リム、行くわよ」
その言葉を無視して、レインはリンドブルムとドラゴンに指示を出す。すると地上でドラゴンのポーズを決めていたリンドブルムが跳躍して、レインの隣へと着地。その頭を撫でてから、再度エディナへと視線を向けた。
「また、会いましょう」
そう言って立ち去ったレインの姿は、正に敵役。しかも主人公のライバル的な立ち位置になるおいしい役所だ。
いや、やめよう。余計な事を考えると実際にそうなりそうだ。エディナとレインが敵対して良い事なんて何もない。
ともかく、レインが素直に立ち去ってくれた事に安堵の息を吐く。
ところが。
「あれって黒のウンエイの一員だよな?」
「最近頭角を現して来た、あのクランか」
「魔王に挑もうとするとか、話題作りも大変だな」
そんな囁きが耳に入って来る。
その言葉はエディナにも聞こえたのだろう。
「あなた、詳しい話を聞かせてもらえる?」
直接声をかけられた男はアワアワしながらも、素直に自分の持つ情報を話し始めた。
……これってやばくね? エディナが黒のウンエイに興味を持っちゃったら、俺に繋がっちゃうかもしれないんだが……。
気が付けば連行状態から解放されていた俺は、二人には悪いがその場を後にした。姿も見えちゃってるし、対策も練らなくてはいけないしね。
さてさて、どうしたものか。
読んでくださりありがとうございます。
完結まで書いてからアップしようと思ってる作品がひと月わりと真面目に書いて六万文字ぐらいでした。二十万文字以内で終わらせるつもりだけど、このままじゃ後ふた月もかかってしまう。
この作品の一話をタイム計ったら、一時間で二千文字ペースだった!
何故なのか!?




