【185】隠れなきゃ!
ブロロロロロ。
ツクヨミのブルドーザーは今日も行く。
レインの父ちゃんをツクヨミに操作された俺がやっつけると、母ちゃんの方は大絶賛。
これでもかって俺を持ち上げてくれたけど、目を覚ました父ちゃんの方は終始不機嫌だった。
負けたのが恥ずかしくて拗ねてるだけなのよ。ってレインの母ちゃんは言ってたけど、なんか目には憎しみがこもっていたような気もしなく無い。
その日は泊まって行けと誘われたけど丁重にお断りした。俺たちは直ぐにでも帰らないと週明けの授業に間に合わないからである。
ちょっとぐらいサボっても良いのかもしれないけど、俺は好きで学園に通ってるわけだから、そういう事はしたくない。
学生時代とは、今しか味わえないかけがえのないのないものだと、俺は知っているのである。
そしてレインであるが、普段と変わらない様子でリンドブルムを膝の上に乗せて、ポテサクをあーんして餌付けしている。
色々と啖呵を切っていたけど、本人も直ぐに何かが変わるとは思っていないようである。
俺は色々と気になっているのだが、レインはどう考えているのだろうか?
例えば母親公認で俺がレインのパートナーとなったこととか。
別にパートナーになりたくないとかではないんだけど、パートナーとはなんなのかが未だにわからないんだが……。
父ちゃんの方は婿だのなんだの言ってたから、普通に婚約させられているのではなかろうかと不安な気持ちになって来る。
そんなこんなでパンナコッタへ戻って来た俺たちは、暫くの間普通の学生生活を謳歌していた。
そんなある日のことである。
俺はその日、メイド喫茶ケモケモでコーヒーを啜っていた。テーブルの向かい側では、怠そうに肘をついたフェリちゃんがケーキをつついて俺の口へと運んでくれる。
「……なあ、こんなことして楽しいか?」
「楽しいけど、もうちょっと恥ずかしそうにしてくれると嬉しいんだけど?」
「毎回やらされてたらいい加減慣れるっつーの。お前俺を辱めて楽しんでるわけ? 性格わりーよ」
そうじゃないんだよなー。恥ずかしそうにしてくれたら嬉しいけど、いじめたいわけじゃないんだよね。
「つか、ここでお前に独占されてるくらいなら、クエストに行った方が建設的だと思うんだが?」
「それじゃあ、俺が休まらないじゃない」
「別にお前が行く必要はねえだろ。ツクヨミとかを貸してくれれば危険はねえし、つか俺にも【LG】創ってくれればランク上げて勝手に行くけど?」
えー、創ってあげるのは良いけど、一緒にクエスト行けなくなるのは嫌なんだけど。
そうかあ、今後はそういう問題も出て来るのか。これは一緒に行動しなきゃいけない理由を考えておかないと。
俺がむむむと唸っているとフェリちゃんが言って来た。
「嫌なら別に良いけど」
「別に嫌じゃないよ。ただちょっと思うところがあって」
「なんだよ。レインみたいにお前の女になれば創ってくれんのか?」
「え? うーんまあ……」
……え!? フェリちゃん今何て言ったの!
レインみたいにってのは聞き捨てならないけども、ちょっと衝撃的な発言だったんだが?
「なら、お前の女になるから創ってくれよ」
……なん、だと!
フェリちゃんが……フェリちゃんがついになびいた!
雨の日も風の日も可愛い可愛い言ってストーキング行為を繰り返し続け、メイド喫茶でご指名にご指名を重ねてナンバーワンの座に押し上げ、最終的に【LG】を餌に釣り上げる。
なんてこった、最低だな俺!
こんなの恋愛でもなんでもない、半ば恐喝みたいなものじゃないか。だめだだめだ! 俺がやりたかったのは、そんな事じゃないんだ!
俺はキリッと顔を引き締めて、睨み付けるようにフェリちゃんを見た。
青い髪とフサフサのケモミミ。切れ長の瞳に長い睫毛。細い顎。整った顔立ち。
うーん、ビューティフォー!
「わかりました創ります! 今直ぐに!」
あ。
反射的にそう言っていた。
だめだ。どうやら本能には逆らえないらしい。恋人になったらあんな事やこんな事をデュフフノフ。
「なんで敬語? あとなんか気持ち悪りぃよ」
俺の緩みきった表情を見て、相変わらずの毒を吐くフェリちゃん。
あれ? なんか落ち着いてるけど、女になるって意味わかってるよね?
「……ねえ、フェリ―――」
俺がフェリちゃんを問い正そうとした時だった。
メイド喫茶の扉がバーンと開け放たれた。
「大変です、ブルさん! 緑の魔王がこの街へやって来るそうです!」
ちょっと、ルティル! 今は魔王の事より大事な話をしてるんだから邪魔しない……って、え?
緑の魔王? それってさ。
確か前に聞いた時は、妖精を扱うエルフだと言っていた。つーかたぶんエディナだろう。
や、やべえ。どうしよう。隠れなきゃ!
別に隠れる必要なんてないのだが、俺は無性に落ち着かない気持ちになったのであった。
読んでくださりありがとうございます。
台風……やべえ。




