【181】それでもやる気の人
トンネルを潜るとそこは雪国……いえ闘技場でした。
しかも潜ったのはトンネルじゃなくて大きな扉ね。
風情も何もない色々残念な結果ではあるが、俺はこれでも驚いている。
こんなでかい広場を地下に作って、屋敷の地盤は大丈夫なのだろうか? ってね。
耐震基準に満たないと地震で一発KO、なんて事にもなり兼ねないんですよ! 地震舐めんなよ。こっちの世界じゃちっともおきないけども!
どうでも良い事を考えていたら、レインが俺にどうでも良い事を教えてくれた。
「この闘技場はね。イーヴィル家に関わる多くの者たちの血を吸って出来上がっているのよ」
なにその吸血闘技場。普通に怖いんだけど。
「砂をすくってみるとわかると思うけど……」
そんな事を言われたから、俺はそっと砂をすくってみる。
すると。
砂の中に白い石みたいな物体が混じっていた。
なんだこれ?
そう思って摘み上げて、まじまじ見ていると。
「それは歯ね。爪とか骨とかも出てくるのではないかしら?」
俺は白い何かを即行でぶん投げた。
やめろし! サブイボ立ったし! そういう事は早く言えし!
まじで怖いんだけど。血を吸うってそういうこと?
ここって賞金も何もなく、あるのは名誉だけの地上最強を決める最大トーナメントでも行われてたん? でもってチャンピオンは十七歳の少年で、親子対決とか始まってたんじゃないの?
ああ、親子対決はこれから始まるんでしたね。
そう思っていたら闘技場の中央で立ち止まった、レインの父ちゃんが声を上げた。
「イーヴィル家の仕来りに則り、これより継承戦を執り行う! 既に知ってるとは思うが、勝敗を取り仕切る者は居ない。よって、この争いにおいてルールは無い。私、ナーベ、レイン、プル・ポッポの四名全員の合意でのみ決着となる」
いや、俺はそのルール知りませんよー。事前に説明もなく、気が付いたらここに居ただけなんだって。ついでに名前間違えてるからね。いい加減覚えてくれよ。馬鹿なの?
「ええ、把握してます。そして、灰と化すまでお父様が敗北を認めないという事も」
「その通りだ。歴代の当主たちと同様に、イーヴィル家を継ぎたければ私とナーベを消し去ってみせるが良い。だが、安心しろ。お前が敗北を認めるのであれば、私もナーベもそれを許容しよう。今後継承戦を容易に挑めぬよう、厳しい制限を設けさせてもらうがな」
「問題ありません」
いや、問題しかないよ。どっちも敗北を認めなかったら、相手が死ぬまでやるって事でしょ? しかもあのおっさんは、死んでも負けを認める気が無いって言ってるし。
それじゃあ勝てないじゃん!
ハッキリと言い放つレインの言葉に、父ちゃんは溜め息を吐いた。
「お前と争うのは、まだまだ先の事だと思っていたのだがな」
「私もそう思っていました。ですが、彼が現れてしまった所為で、全てが変わりました」
「それほどの男には見えないがな。まあ良いだろう。直ぐにわかる事だ」
……何がわかるんだか。ねえ、俺も参加してるみたいだけど、観てるだけで良いんだよね? つかやめない? 殺し合いに巻き込まれるのは不本意なんだけど。
「【召喚】!」
父ちゃんはがそう叫ぶと、鎧を着たガイコツが現れた。
どうやら俺の気持ちは置いてけぼりで、話が一人歩きしていく流れらしい。
母ちゃんの方も対になるガイコツを召喚して、相手の準備は完了。そのまま俺たちにも召喚モンスターを出せと促して来る。
「じゃあ、ツクヨミ」
「リム、手伝ってくれる?」
俺たちが互いに【LG】を呼び寄せると、ツクヨミもリンドブルムも素直にそれに従った。
だが、カードから呼び出すのではなく、そのまま招き寄せるもんだから、レインの父ちゃんも母ちゃんも首を傾げていた。
「……レイン、その娘は何だ? プル・ポッポも従者を参加させる事は出来んぞ」
父ちゃんの言葉にレインは首を振る。
「いいえ、問題ありません。この子は彼に実装して貰った、私の召喚モンスターですから。そして彼の方も」
レインがリンドブルムのカードを取り出して掲げてみせる。
仕方なく俺もツクヨミのカードを取り出して、相手に見えるようにして掲げた。
それを目にした父ちゃん母ちゃんは、驚愕の表情を見せていた。
「……それが、お前の自信か」
「その通りです。私のパートナーは、【LG】を生み出す事に成功しています!」
敢えて成功してるなんて言い方をしてるのは、俺への気遣いだろうか? 言いふらすつもりは無いけど、この場が丸く収まるなら言ってしまっても良いんだよ?
「……面白い。伝説の【LG】……確かに私に挑むだけの資格はあるようだ」
【LG】をみても怯んだ様子さえ見せない父ちゃん。むしろその目が赤く血走って、やる気満々になってんだけど。
やっぱこの人頭おかしいわ。
読んでくださりありがとうございます。
バトルするって言ったな。ありゃ嘘だ。
実際に書いてみたら、準備したところで話が終わってたんだ!




