【180】レインの父ちゃん
「フハハハハ! 私がイーヴィル家の当主にして三位階級が魔貴族、ガノン・ゼノ・イーヴィルである!」
「その妻! ナーべ・ゼノ・イーヴィルよ!」
レインのでっかいでっかいお屋敷に到着した俺たちは、やたらとハイテンションな歓迎を受けていた。
あ、いや、歓迎されてるかはわかんないや。
取り敢えず現状は、でっかい屋敷に到着して中へ入ったら、いかにもヴァンパイアが着てそうな漆黒のコートに身を包んだ黒髪のおっさんと、金髪のやたら綺麗なお姉さんが登場したのである。
まあ、レインの父ちゃんと母ちゃんなんだろうけど、三位階級の貴族ってこんな感じで務まるのか心配になってくる。
しかもさ、レイン髪はピンクなのに両親は黒髪と金髪って、そんなことあるの? 覚醒遺伝とかなんかかな? この世界の常識は知らないんだけども。
ともあれ、話はとっとと済まして早く帰りたい。
パンナコッタからここ、タルトまでは結構な距離があるのである。
明日はまだ学校はお休みだけど、ブルドーザーでも三日はかかる距離だから今すぐ出発しても間に合わない。
行きはセンに飛んで貰ったから、帰りもそうすればって思うじゃん。違うんだって、エネルギー補充用に用意したウーメン百杯を、センのやつペロッと平らげてまだ足りないって言うんだもの。
横で見てたツクヨミやリンドブルムまでお腹を鳴らし始めるから、もう大変なのよ。
経費削減の為、帰りはギリギリまでツクヨミにブルドーザーで進んで貰って、残りをセンに飛んでもらう予定だから俺は早々に帰路に着きたいわけなんだけど……。
「貴様が我が娘に見初められたクソガ……プル・ポッカだな」
違います。ブル・ドッグです。言い直して間違えるとかわざとでしょ? 性格悪いよ。
「違うわあなた、プル・トップよ」
缶のフタ開けるやつになってるー。
「お父様、お母様、彼はブル・ドッグよ」
「おお、すまん。そうだったな。犬畜生の名前を覚えるのは苦手でな」
いや、犬畜生扱いって酷くね!? 合ってるけども! ブルドッグは犬だけども!
まあ、今更否定するのも面倒臭いから何でも良いけど、取り敢えず言いたい事は言わして貰おう。
「あの、なんでも良いんで、命を狙って来るのやめてもらえません? 面倒くさいんで」
「黙れクソガキ! 私は今、可愛いレインと話をしてるのだよ! 耳糞でも食っていろ!」
もう、取り繕う気とかまるで無いなこのおっさん。
「お父様、言葉が過ぎますよ。彼に対してそのような態度では、何れ後悔する事になりますよ」
「なぁにを言っておるのだレイン。階級無しの貴族など、吐いて捨てるほどいる。そこの野良犬よりも容姿端麗で才能溢れる相手を、私が見繕ってみせようではないか」
「彼以上の殿方はこの世には存在しません。それに……お父様が見繕った相手では、お父様には勝てないかもしれないでしょう?」
「……レイン、それはどういう意味だ?」
「どうもこうもないわ。私は彼と共に、やり過ぎなお父様を懲らしめに帰って来たのよ」
おっさんの顔付きが変わった。
隣の母ちゃんも、あらあらまあまあと困った表情を浮かべていた。
「……それは、家督を継ぐ為に私に挑むと捉えて良いのだな?」
「その通りです。イーヴィル家の跡継ぎとして、家長に勝負を挑みます」
「まだ、学生だというのに……早過ぎる! せめてもう少し力をつけてからにしなさい。今のお前では絶対に私には勝てないぞ」
「確かに彼がいなければ、お父様の言う通り絶対に勝てなかったと思います。ですが、私にはお父様が足元にも及ばない力を持つパートナーがいます」
「そこの男がどれほどのものかは知らんが、パートナーの力に頼り切ってイーヴィル家が支えられると思うのか!」
「それもお父様の言う通りです。ですから、彼には私の戦いを隣で眺めていて貰います。あくまでも戦うのは私一人。一人でお父様とお母様を倒せれば、ご納得してもらえると思います」
「レイン! いくらお前でも、吐いた言葉は飲み込めんぞ!」
「承知しています」
「良いだろう。ならばついて来い!」
おっさんは不機嫌そうに扉を開けると、早足で家の奥へと行ってしまった。
「それじゃあ、私たちも行きましょう」
気楽な様子でレインは言った。
あのさ、話の流れでなんとなくわかるけど、事前に色々と説明しといて貰って良いですかね?
レインは一人で相手にするって言ってるけど、平然と俺を巻き込むのをやめて欲しいです。はい。
読んでくださりありがとうございます。
次回からバトルが始まります。たぶん。
カードは使いますが、カードバトルかと問われると声を大にしてこう言えるでしょう。
NO!




