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拳で無双!異世界カードバトル!~ルール無用の【破壊】デストラクション~  作者: まじで
1章「エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギア」
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【018】コスプレ機能搭載

 街道の脇で腰を下ろし、俺は深く息を吐いた。


 ツクヨミの衣にすまきにされ、風圧をもろに受けながら移動すること二時間。


 俺たちは既に、街がすぐ見える場所までやって来ていた。


 あー、しんどい。


 振動はなかったけど、あの風圧はねえよ。右に左に揺られて重力半端ないし、そりゃ気持ち悪くもなる。


 俺をこんな状態にした当人は、知らん顔で街に向かって体育座りしてるし。相変わらず、一定以上の距離を保ってるし!


 役得といえば、俺を心配したエディナが優しく俺の背中をさすってくれていることだけだ……。


 いいじゃないっ! 辛い思いをした甲斐があったじゃないっ! ツクヨミ、グッジョブ!


「凄いわね。こんな短時間で街まで来れるとは思わなかったわ」


「エディナがいなかったら、この移動手段は二度と使いたくないけどね」


「え? なんで?」


 なんでってそりゃあ、拷問に耐えた後にその柔らかい手で撫で撫でしてくれる相手がいなかったら、ただの拷問で終わっちゃうからだよ。


 と、そんな理由は言える筈もなく、俺は言葉を濁す。


「街に入るなら、ツクヨミちゃんにフードを被せるか、カードに戻すかしないとまずそうね」


 エディナがそんなことを言う。


 何がまずいんだ? そう思い、俺は首を傾げてエディナへと質問した。


「なんか生き物みたいに動くあの服を見られたら、直ぐ召喚モンスターだってバレちゃうでしょうし、言葉を話してるなんてわかったら、相当なレアリティだって直ぐにわかるわ」


「レアリティがバレるとなんか問題があるのか?」


「当然じゃない。カードを奪う輩に狙われるわよ! 今回長馬を狙った奴も、人のカードを奪うのが目的だったのよ」


 ん? なに!? カードを直接奪うなんてことが出来るのか!


 そんなことをされたら、俺のツクヨミが誰かの物になってしまうことも考えられるわけだ。許せんっ! そんなことになったら俺は発狂して全てを破壊デストラクションしてしまうぞ!


「人の手に渡ったら、カードはそいつの物になるのか?」


「直ぐにはならないわ。基本的には本人の意思で譲渡しない限り、所有権は移動しないから奪っても使うことが出来ないの。けど、所有者の手から離れて一年ぐらい経つと、所有権が破棄されて所有者なしの状態になるのよ」


 なんてこった。それなら人様のカードを略奪して、一年間何処かに隠されたら、大事なカードも所有者フリーになってしまうじゃまいか!


「【SSR】を持ってるってだけで目をつけられるのに、それが【LG】なんて知れたら、国家規模で略奪してくるに決まってるわ」


 えー。そんなカードを持ってるって、既にエディナさんには知られてるんですけど。奪う素振りどころか、親切に注意してくれるエディナさんまじ天使っす。


 俺は懐からツクヨミのカードを取り出し、まじまじとみつめた。このカードが奪われるなんて考えたくもない。


「仕方ない。戻すか」


 俺がそう呟くと、何故か直ぐ隣に来ていたツクヨミが小さく首を振った。


 一定以上の距離を保っていたくせに、急にこんなに側へやってくるなんて! ドキドキしちゃうじゃないかっ! しかも上目遣いで、懇願するような顔を向けてくる。


 はぁああああああ! かっわええええええ!


 俺は小躍りしたい気持ちを、無理矢理押さえ込み諭すように言った。


「だ、だめだ。大人しくカードに戻りなさい」


「いや」


「い、言うことを聞きなさい」


 ツクヨミはブンブンと首を振る。


 くそぅ。どうやって説得したら良いんだ! こんな可愛い仕草でわがまま言われたら、お父さん抵抗できないよ。でもなぁ、リスクを負いたくないしなぁ。


 俺が葛藤していると、ツクヨミは手を掲げて纏っている衣を動かした。


 うねうねと動く衣がツクヨミの体を這い、次第に形を変えていく。すると、緩やかに纏っていた衣が黒いワンピースへと変化した。


 ……なん、だと!


 自在に衣を変化させられる、だと!


 俺は真剣な面持ちでツクヨミをみつめた。


 俺の真剣な眼差しを見て、もう一押しだと思ったのか、ツクヨミはその場でクルリと回ってみせた。


 ……ぐっ。


 ……マーベラス! 素晴らしい! 非常に良い!


 だが、だめだ!


 そんなことでは、足りない!


「……ツクヨミ。着物にしなさい」


 俺の言葉に素直に頷くと、ツクヨミは衣を変化させて着物を纏った。


 ……ぬ!


「……いや、セーラー服だ」


 それに対してもツクヨミは素直に従う。


「体操着! ブルマ着用!」


 サッと衣が動き、ツクヨミが体操着姿に。


 ぶはっ! 鼻血出そう。


 コスプレ機能付きとか、チート過ぎる可愛さだ!


「バニーガール!」


 俺の要求がエスカレートしていくと、遂にツクヨミはジト目を向け始めた。


 いかん。やり過ぎた。


 そう思い、俺はゴホンと咳払いをして誤魔化す。


「わかった。戻らなくて良い。ただし、格好は旅人っぽい服装にしてくれ」


 俺がそう言うと、ツクヨミは頷いて再度衣を変化させる。


 そして、最終的にした格好は、忍装束だった。くノ一じゃない忍者の格好だ。


 さすがツクヨミ。俺の趣味をよくわかっている。女の子が男の格好をしてると逆に萌えポイントが上がるんですよね!


 俺は厳しい表情でうむと頷き納得した。


「……その珍しい格好も十分目立つんだけど」


 そんなエディナの呟きは、俺の耳にはまるで届いていなかった。

読んで頂きありがとう御座います。


設定もプロットも作らず見切り発射したけど、意外とそれっぽくなるものである。

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