【179】やっつけに行こう
センに操られるままにレインの居所へと向かっていると、視界に黒いスーツ姿の連中が固まって居る場所が留まった。
つか、なんだあれ?
あれってレインの家の人たちだよね? 街中に潜伏してるんだと思ったけど、あんなに目立って大丈夫なのかな?
余計な心配をしていると、背中のセンが声をあげた。
「淫乱ピンクはあそこね」
え? まじかよ。あの黒服だらけの場所にいるの? 近付きたくないんですけど。
そう考えていたけど、さすがはセン。俺がちょっとやだなーって思ったぐらいじゃ止まりゃしないよ。
そのまま黒服たちの中心へ突っ込んで行ってしまった。
「なっ! どこから! マルス様は!?」
突然俺が登場したから、黒服たちはびっくり仰天。
マルスって誰よ?
そして、黒服たちの中心にはレインとミル、そしてリンドブルムがいた。
「あ、お兄様! ってフェリナスさん! なんて羨ましいことをしてるんですか!」
ミルは俺の姿を見つけて手を振ろうとしてたけど、お姫様抱っこをされてるフェリちゃんを見て急に怒り出した。
「ほら見て、これが私のリムよ。可愛いでしょう?」
「がおっー!」
俺の事もミルの叫びも全く聞こえていないのか、レインは黒服たちにリンドブルムを自慢し続けていた。
黒服たちは、おおとかさすがお嬢様とか、感心したような反応はしているけど、俺の事が気になってるのかチラチラとこちらを見て来てどうにも落ち着かない感じだった。
そんな黒服たちの様子に気が付いたのか、レインがリンドブルムから視線を外してこちらへと視線を向けた。
「あらブル、フェリナスも一緒にどうしたの? 今日はメイド喫茶に行くと言っていたのに、肝心のメイドを攫って来てはダメじゃない」
「攫ってないよ。寧ろ攫って人質にして来たのはセバスチャンたちの方だよ」
「セバスチャン?」
「うん。そこの黒服みたいな格好してたリーダー的なヒゲの人」
「ああ、マルスのことね。変な呼び方をするからわからなかったわ」
あー、そう言えばあの人、俺が勝手にセバスチャンって呼んでただけで、名乗ってなかったわ。いや、失敬失敬。
レインが黒服の一人に向き直って言った。
「チェリオ、彼に何かしたのかしら?」
「い、いえ! 私は何も存じ上げておりません」
「そう? トレーニー、あなたは?」
「わ、わたくしもです!」
頷いてからレインは、スズネちゃんに声をかける。
「なら、スズネ。状況を教えてくれる?」
「はっ! 全て推察ですが、イーヴィル家の使用人たちが、旦那様の命を受けてブル殿の命を狙いに来たのだと思われます。突然大所帯で彼らがやって来たことと、濁すような反応。この場にマルスがいないことを考慮して、ほぼ間違いないかと思われます」
「なるほど、そういうことだったのね」
「レ、レインお嬢様。そのようなことは決して……」
「私に嘘が通用すると思っているの?」
レインは【踏絵】のカードをチラつかせて言った。
それを見た黒服たちは何も言えずに押し黙る。
「うちの連中が迷惑をかけたみたいね。でも、何事もなかったでしょう?」
「まあ、センやワタツミが何とかしてくれたし怪我とかはないよ。けど、フェリちゃんを誘拐して、人質にしたことはムカついたかな?」
俺が包み隠さずそう告げると、事情を知ってる黒服たちはゴクリと生唾を飲み込んでレインの反応を伺った。
「ごめんなさい。でも、彼らを責めないでやって頂戴。悪いのは彼らを動かしている、私の父よ」
まあ、それはそうだけどね。でも人質をとるという選択をしたのは、彼らの意思である。故に、その報いとして虫を食ってもらってるわけだが、これ以上責めるなと言われれば責めるまい。
寧ろ虫を食わせてることを責めないで欲しい。
「ブル、せっかくだし少し付き合ってくれないかしら?」
「良いけど何をするの?」
「丁度良い機会だから、父を倒しに行こうと思うの」
何を言ってんだかわからない。
親子で倒すとか倒されるとかあるのだろうか? 寧ろ黒服たちを差し向けて俺を始末しようとするぐらい、父ちゃんはレインのことを溺愛してるんじゃないだろうか?
「パートナーと共に父と母を倒す。年代ではないの。それが出来て私は初めてイーヴィル家の家督を継ぐ事が出来るのよ」
なるほど、それでレインはパートナーを必要としてたんだね。へー、ふーん。
つーかさ! 事前の説明も無しに家庭のいざこざに巻き込まないで欲しいんだが!
「それじゃあ行きましょう」
平然と言うレインに対して、俺は嫌そうな顔を向ける。しかし、センに操られたままの俺は、強く頷くと文句一つ言わずにレインに続いていた。
あのさ! センは誰の味方なんだよ! 今嫌そうな顔したでしょ!
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