【178】そう、ただ食わせたいだけ
ここに来てフェリちゃんの攻略法がわかった。
フェリちゃんはきっと、ヒーローとかに憧れる乙女思考なのである。
普段の勇ましい様子とは違い、本心では白馬の王子様に救われる姿を夢見ているのだろう。
俺はカッコ付けようとすると失敗するので控えていたのだが、それはエディナには通用しなかっただけで、フェリちゃんに対しては効果抜群なわけだ。
女の子によって好みは変わる。俺はそんな当たり前の事も失念していたというのか……。
「なあ、ブル。さっきの俺にもできねえかな?」
ん?
「いや、まじカッコ良かったな! シュッて行ってバシンッだもんな!」
なにその擬音祭り。というかさ……。
「カッコ良いって、もしかして……」
「ん? ブルの動きが凄かったら思わず見惚れちまったぜ」
はーい、攻略法なんてありませんでしたー。どうせそんなこったろうと思ったよ! ちくしょうめ!
取り敢えずフェリちゃんの拘束を解いてあげると、フェリちゃんはブルリと震えて尻尾を逆立てて伸びをした。
「で? さっきの連中はなんだ?」
「レインの家の人みたいだね。俺の事が気に入らないから始末しに来たんだってさ」
「ふーん。普通なら驚くところなんだろうけどな。ブルに喧嘩を売るとか馬鹿な連中だな」
「いや、これでも結構困ってるんだけど?」
「なんで? ツクヨミとかがなんとかすんだろ?」
「この子らに任せっきりにしたら、大事件に発展する未来しか見えないんだよね!」
「……まあ、確かにな。じゃあ、俺は何をすれば良いんだ?」
「え? お店に戻るんでしょ? ナンバーワンになれないよ?」
「……別にそんなもん目指してねえ。つか、てめえが金を使い過ぎるから、売り上げはもう十分だっつうの」
いや、十分じゃないでしょ。俺のフェリちゃんナンバーワン計画が台無しになっちゃうよ。俺はフェリちゃんに輝いていて欲しいんだよ。ケモっ子の頂点に君臨して欲しいの!
俺がフェリちゃんをお店に戻す為に、何か妙案がないかと唸っていると、ツクヨミが縄で簀巻きにしたセバスチャンをズルズル引きずって来た。
「親玉は捕らえた」
さっきまで捕まって遊んでた子が何か言ってる。ちなみにそいつを倒したのは、俺とセンですよ。
ツクヨミがべチンッとセバスチャンを叩くと、呻き声を上げて意識を取り戻した。
「ぐっ、どうするつもりだ……」
さあ? どうするつもりだろうね。
「まずは虫を食わす」
ツクヨミさんが何か言い出した。
「毛虫とゴキブリどっちが良い?」
拷問とかにも耐性がありそうだけど、流石のセバスチャンもツクヨミの言葉には顔を青くしていた。
「何が聞きたい?」
「虫を食わせたい」
「なるほど……え? いや、何を聞き出したいのかを聞いてるんだが?」
「別に聞きたい事は何も無い。虫を食わせたいだけ」
淡々としたツクヨミの言葉に、セバスチャンはブルリと震えた。
まじ怖えよ。理由もなく虫を食わせたいだけの人とか出会いたくねえよ。ただ、フェリちゃんにまで手を出したこいつらに、助け舟を出してやるつもりは毛頭無い。
「じゃあ、フェリちゃん。俺たちはレインを探しに行こうか」
「え、ああ。つか、こいつは放っておいて良いのかよ?」
「放っておくというか、これから虫を食わされるんでしょ? あんまり見たくないし、ツクヨミに任せるよ。あ、殺しちゃダメだからね」
俺の言葉にツクヨミはグッと親指を立てた。
「なっ! 待てブル・ドッグ!」
セバスチャンが俺に何か訴えかけていたけど、人の事を始末しに来たのだからどんな目に合っても仕方ないと思う。
俺はセバスチャンの肩を叩いて言葉を残した。
「頑張って」
そうして俺は踵を返すと、フェリちゃんをお姫様抱っこして颯爽とその場を後にした。
フェリちゃんは最初嫌がったけど、俺の物凄い身体能力に感心を抱いたのか、途中から少し興奮気味だった。
なんといっても、センのバフ……もとい操作により高く飛び上がり、建物と建物の間を飛び跳ねるのは、俺自身も気持ちが良いものである。
「さあ、まずはレインと合流しよう。セン、こっちで合ってるの?」
「え? 合流するなら反対方向だけど?」
こっちじゃないんかーい!
颯爽と立ち去った俺だったが、恥ずかしくも再度セバスチャンちゃんたちの頭上を通過して、レインの元へと急いだ。
途中、セバスチャンの叫び声みたいなのが聞こえたが、きっと大丈夫だろう。虫って栄養あるみたいだし。知らんけど。
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