【173】ブル、コロコロされる
ざわざわざわざわ。
「みなさーん、お待たせしました。こちらが我々、黒のウンエイの召喚モンスターが作成したお菓子。ポテサクになります!」
ルティルが大きな声をあげると、集まっていた学生が一斉に注目した。
「これが? 本当に召喚モンスターが作っているのか?」
「実際に作ってるところを見なきゃ信じられないわ」
「変わった見た目だな」
色々とご意見が飛び交ってるけど、広告詐欺なのではなかろうか? 実際半分はツクヨミたちが調理してるから間違いではないんだけど、それを証明する為に調理場を公開したくもないし。うーん、ルティルは何がしたいのだろうか?
って待てよ。今大事な事に気が付いた。
みんなは一生懸命ポテサクを作っているのに、ツクヨミは温度管理のアイディアを出しただけでなんもしてねえ! 出来上がった物をひょいひょい摘んでいるだけだった。
あんにゃろう。あまりに普段通りで気が付かなかったぞ!
「今日は試食会なので、召喚モンスターがお菓子作りをしているところは、本格的に売り出す事になったらパフォーマンスとしてお見せしますよ。みなさんのお口に合うかどうかがわからないと、折角のパフォーマンスも無駄になってしまいますし」
「なんだよ。それを見に来たってのに……」
「そうでしたか! それは申し訳ない事をしました。ですけど、折角なので食べてみてください」
差し出されたポテサクを、学生の一人が渋々といった感じで摘んだ。
パリポリ。
「……まあ、美味いな」
「ありがとうございます! 売り出す時は是非とも買いに来てくださいね。その時は、お望み光景が観れるかもしれませんよ」
ルティルがウィンクすると、学生は頰を赤く染める。
そんな感じで、学生たちはポツリポツリとポテサクに手を出していった。
「ご協力感謝です!」
「別にこのぐらいはやるけどね」
各テーブルへポテサクを運び終わり、俺たちは一息吐く。そこでルティルにどういうつもりなのか尋ねてみると、ルティルはどういうつもりも無いと言って来た。
「私は色々対応出来るように、段取りを組んだだけですよ。ここから先は、リーダーであるブルさん次第と言いますか」
「俺次第? 俺はどうするつもりも無いけど?」
「それならそれで構わないんですよ。今日の広告はただ人を集める為に、みんなが勘違いするような煽り文句を使用しただけなんです」
どういう事だってばよ?
ルティルの答えに俺が首を傾げていると、ルティルはニコリと笑って補足を入れてくれた。
「ブルさんには必要無いかもしれませんが、組織を運営する為にはそれなりにお金が掛かるんですよ。そして、お金は人が集まるところで大きく動くんです」
「つまり、今回は運営資金を調達する為に宣伝したの?」
「いいえ、今後も見据えてです。衆目を集めれば、何かをする時に必ず利益を生み出します。ありふれた商品だとしても、認知されている物とされていない物では、売り上げに雲底の差が出るんですよ」
「なるほど、俺が何か言い出した時に対応出来るように、今の内から周囲の心象を操作してる感じかな?」
「はい。そんな感じです。ですけど……」
「けど?」
「このお菓子……ポテサクは、私が思っていた以上に売れるかもしれませんね。どうします? 大きな金額にはならないかもしれませんが、話題にはなると思いますよ」
うーん、どうすると言われても、どうしたら良いのかわからない。商売するとなると面倒臭そうだし、全部ルティルがやってくれるなら、好きにすればって感じなんだけどな。
そんな事を考えていると、俺の考えはルティルに見透されたらしい。
「ブルさんの手掛けているメイド喫茶で、お出しするのも丁度良いかもしれませんね」
むむ、確かにそうかもしれない。
メイドさんと一緒にシャカシャカポテト!
ポテサクでやるもんじゃないけど……シャカシャカしてるとメイドさんの神秘の双丘が揺れて……ワンチャン溢れ落ちるまである!
……俺はなんて恐ろしい事を考えてしまったのだ。
これは売れる! いや、売れるとかどうでも良い! 俺がやりたい!
「ポテサク売ります! メイド喫茶で出します!」
「はいっ、それでは準備は私に任せてください」
頼んだよルティル! 君はなんて頼りになるんだ!
いつの間にか俺は、ルティルの手のひらの上でコロコロと転がされているのであった。
だが、コロコロされるのも悪くない。
そんな事を思った。
読んでくださりありがとうございます。
いつまでポテサクの話をしてるんだって文句を言われるかもしれない。いや、文句を言われるほどこの作品は注目されてないから大丈夫である。
カードバトル?
何それ食えんの?




