【170】ポテサクを追い求めて
「ねえ、キャロットはさすがに遠いんだけど……」
センがブチクサと文句を言ってるが、仕方ないのである。
だってパンナコッタのマルーイで聞いたら、ポテサクなんて知らないって言うんだもの。
芋を薄く切って揚げたものだって言っても、首を傾げるばかりで伝わらなかったのだ。
どうやらポテサクは、キャロット支店オリジナルの商品らしかった。
だから俺たちは、キャロットへ直接ポテサクを買いに行くことを決めたのだ。センを使って。
レインじゃないけど、ツクヨミとリンドヴルムの悲しげな顔を見てられなかったんだよね!
ホントにもう! 仕方ないな!
「後で、うーめん店ごと食べて良いから頑張ってよ」
「さすがに店ごとは食べないけど、そこまで言うなら仕方ないなあ」
センは了承すると、ムムムと唸って空間を開いた。
広げられた空間の向こう側には、見慣れた街並みが広がっている。
「それじゃあ行ってくる―――」
俺が一歩踏み出そうとすると、何故かみんなも動き始める。
「あのさ、行くのは俺とセンだけで良いんだけど……」
「お兄様の行くところにミルありです!」
とミル。
「ポテサクを座して待つわけにはいかない」
とツクヨミ。
「私は言い出しっぺだし、行くわよ?」
レインはリンドヴルムと手繋いでいく気まんまん。
「主君のお側に控えるのが、私の役割です」
とワタツミも当然だとばかりに言った。
「空間を移動とか、とんでもないですね! 私も興味深々です!」
とルティルが言う。
待て、ルティル。どこから湧いて来たんだ! さっきまで居なかったよね?
「あ、マルーイから出てくるところを見かけまして……」
そうなんだ。
つか、今何も言ってないよね? エルフって心を読む能力でも持ってんの? エディナにもいつも考えてる事が筒抜けだったんだが!
「ほら、ブルさんって表情がわかり易いですから」
あ、やっぱそうなの?
……いや、だからセンみたいに心の声と会話すんなし! ちょっと怖いし!
「ねえ、ブル。何人でも良いから、ちゃっちゃと行こうよ。開けっ放しは大変なんだけど」
言いたい事は色々あったが、センも大変そうだから一先ずキャロットへと移動する事にした。
そして、【黒のウンエイ】一行は、程なくしてマルーイキャロット支店へと到着したのだった。
「田舎でも、マルーイの取り扱う商品はあまり変わらないんですねー。へぇー」
「記憶を無くされたお兄様が、この街で暫く過ごされていたのですね」
「ぽってサク! ぽってサク!」
「ぽってサク! ぽってサク!」
「リム、ツクヨミ、はしゃぎ過ぎると転ぶわよ」
うむ、色々騒がしい。
ポテサクを買いに来ただけなのに、みんなは別の物に目移りしたりで、なかなか食品売り場へとたどり着かないのである。
もう、面倒だったので、俺はセンを連れてサッサと試食品を出していた場所へと向かった。
だが。
そこに立てられた看板にはこう書かれていた。
『パリッと新食感! ポテサクマークII』
……ポテサクは進化していた。
いや、パリッとした食感じゃあ、ポテパリになっちゃうと思うんだが……。
そんなツッコミは置いておくとして、マークIIだろうとなんだろうと、ポテサクなら問題ない。そう思って商品を見てみると。
少し厚みのある円状の揚げ物が置かれていた。
……あのさあ、これって。
せんべいじゃねえか! ポテトの要素どこ行ったんだよ!
「あ、あなたは! ポテサクを大量にお買い上げ下さった神様! その節は本当にありがとうございました。お陰様で食品売り上げ一位に輝きましたので、二号を開発することに成功したんです!」
ポテサクを買っただけで、神に祭り上げられても嬉しくもなんともないのだが。
それよりも。
俺は周囲を見渡したが、肝心のポテサクが見当たらない。
「それよりも、ポテサクはどこに売ってるんです?」
「ああ、あれは試作なので今は置いてませんよ。ぶっちゃけ、神様以外には余り売れませんでしたので。ポテサクマークIIに関しては、ご自宅でも作れるよう改良しましたので、売れ行きはバッチリです!」
いや、マークIIの売れ行きとか聞いてないから。
つかまじか……ポテサク売ってないのかあ。
「なんでしたら、こちらのポテサク粉をお買い上げいただければ、ご自宅でのお作りいただけますよ」
自分で作るのかあ。面倒くさいんだよなぁ。
と思ったけど、ツクヨミとリンドヴルムの悲しげな表情が脳裏を過ぎり、俺は溜息と共にポテサク粉を買っていたのであった。
宿へ帰り厨房を借りて、説明書の通りにポテサクを作成してみた。
えー、なになに?
ポテサク粉に水と塩を入れて練る。適量の量を潰して平たくする。そして乾燥させる。乾燥はワタツミに水分を抜いて貰って、油へ投入。
狐色になったら、はい完成。
だいぶ薄めに引き伸ばしたけど、やはり揚げると少し膨らんでしまう。
まあ仕方ない。素人だしね。
とりあえず試食してみると、パリッとした食感と程よい塩加減。
ボリボリボリ。
……だから、せんべいじゃねえか、これ!
読んでくださりありがとうございます。
いつもハンカチを忘れる人がいるんだけど、俺がそれを突っ込んだら起きた時は覚えてるんだけど忘れちゃうんだって。
でも、そんな話をしたから次の日は意識してたみたい。
ハンカチの入ってるタンスを開けるところまではいったみたい。
結局忘れてたけどw




