【168】がおっー
とりあえずルティルには離れて貰って深呼吸。
すぅー、はぁー。
高鳴る気持ちは落ち着けたけど、両手を組んで期待の眼差しを向けてくるので気が散る。
というかレインも同じポーズで、瞳を輝かしてくる。
やめてよ。そんなに見つめられたら緊張して失敗……しないか。
そういや、俺が緊張したのってエディナに告白した時だけだった。
転生してから、そういう感情が薄れてるから、あの時は新鮮だったなあ。
振られたけど……ぐすん。
いかんいかん。その事考えると、まじで失敗しそうだからやめとこう。
俺はもう一度深呼吸すると、記憶の海へ潜り込む。
レインといえばドラゴン。でも選ぶのは、大っきくなくて、可愛いのが良い。人型になって可愛くデフォルメされたキャラは沢山いる。誰が良いだろうか?
小さくてドーンしてバーン出来る子。ああ、いた。あの子が丁度良い。
愛らしい姿とは反して、攻撃特化の力強いその子。雄々しい二本の角と、金に近い茶髪。爬虫類のように縦に裂けた瞳孔。けれど愛らしいその容姿は、手に取るように想像出来た。
さあ、おいで【竜王・リンドヴルム】。
俺の持つ【白無垢】のカードが飴のように長く伸びると、大きく広がって室内を埋め尽くしそうなほど巨大な竜を形成する。だが、形作られる前に、その竜は人型へと大きさを変えた。
そこには、金に近い茶色髪から二本の角を生やした、小さな女の子が立っていた。
背はレインの半分ぐらいしかない。見た目は八歳ぐらいの女の子。
スカートから小さい尻尾がぴょこんと覗いていて、背中の翼がピョコピョコと動く。
大きな瞳をクリクリさせて周囲を見渡している姿は、見ているだけで癒される可愛さがあった。
手元のカードに目をやると、ちゃんと【LG】のマークが入っている。
よしよし成功だ。
「パパ様、見て」
リンドヴルムが突然そう言うと、俺の前でくるりと回って両手を猫みたいに丸める。
「がおっー」
小さい体でドラゴンのポーズをとって、可愛い雄叫びを上げるリンドヴルム。
なにこの子、超可愛いんだけど。
しかもパパ様だって。可愛い過ぎてレインに譲渡したくなくなってくる。
よしよしって頭を撫でてあげると、リンドヴルムは気持ち良さそうに目を細めた。
「一緒にやろ!」
リンドヴルムが先程と同じように、くるりと回ってがおっーと、ドラゴンのポーズをする。
俺は言われるがまま、リンドヴルムの真似をした。
良い歳の青年が年端もいかない女の子と一緒に、くるりと回ってポーズを決める。
「がおっー」
「がおっー」
なんかツクヨミも気になったのか、参加して来た。
今度は三人で回る。
「がおっー」
「がおっー」
「がおっー」
そんな俺たちを、ルティルは困惑気味に見ていた。
「あの……その子は一体……」
言いかけたところで、リンドヴルムが言葉を遮った。
「ママ様もやろ」
リンドヴルムが言葉を向けたのは、レインだった。
おお、ちゃんと譲渡する事も分かってるんだ! えらいえらい。
しかし、レインは俯いたままプルプルと震えていた。
あれ? どうしたのだろう? 念願の【LG】だよ?
あ、もしかして【実装】したのが、ドーンとかバーンとかじゃなく、ちんまい女の子だから怒ってるのかな? すまんのレイン。期待に添えなくて。期待通りのやつにすると、この部屋がぶっ壊れるんだよ。
俺がレインへ近付いて肩を叩こうとしたら、スカッと躱された。
ありゃ? と思ったらレインは猛然とダッシュ。
そして、ガシッとリンドヴルムを抱き締めた。
「かぁわぁいいぃいいぃ!」
「………………」
「ねえ聞いた? ママ様だって! 私の事ママ様って言ったわ! あなた名前はなんて言うの?」
「リンドヴルム」
「そう、良い名前ね。私レインよ。宜しくね、リンドヴルム」
レインがスリスリと頬ずりすると、リンドヴルムはガシッとレインに抱き着いた。
それに対してレインは更に大興奮。
リンドヴルムに懇願されて、レインは一緒になってくるりと回るとドラゴンのポーズを決めた。
「がおっー」
「がおっー」
「がおっー」
ツクヨミも気に入ってしまったのか、まだ一緒になってやってる。
うん、どうやら俺の思い過ごしだったらしく、レインはリンドヴルムの事を気に入ってくれたようだった。
読んでくださりありがとうございます。
夏だからか、脳がとろけておかしな内容になっている気がする。
その前からそうだった?
そんなわけないでしょ! 怒りますよ!
「がおっー」




