【167】用意したわ!
「私の出番がやって来たようね!」
バーンと扉を開け放ち、突然俺の部屋にやって来たレインが、胸を反らしてふんぞり返りながらそんなことを言った。
扉は静かに開けましょう。あと、人の部屋に勝手に入ってくるのもやめましょう。
鍵掛かってたよね?
「レインさん。大変ですよ! 緑の魔王が倒されたらしいです!」
ルティルは未だに興奮が冷めないのか、なんか鼻息が荒い。
「知っているわ。スズネが報告してくれたわ」
レインは得意げに鼻を鳴らしているけど、凄いのはレインじゃなくて従者をしながらしっかり情報集めもしてるスズネちゃんだからね。
「というか、出番って何?」
「私が魔王になる時が来たということよ!」
いや早いって。結果的にはなって貰うことになるとは思うけど、急ぐ必要なんてな全くないわけだよ。
もう少し落ち着いて、学園生活を楽しんでてくれる?
俺が呆れ顔を向けていると、レインがピッと指に挟んだカードをかざして来た。
何も描かれていない、銀縁のカード。
「それは、銀の【白無垢】のカードですか!? そんな高価なものをどこで?」
「オークションの出品元を押さえて、直接交渉して来たのよ。あまり出回ってなかったから大変だったわ」
「さすがイーヴィル家のご令嬢ですね。最近だと【LG】の噂が広がってたので、随分と高騰していると聞いてましたよ。たしか、オークションの最低落札価格が【5000万】イェンを越えるとか」
へー。俺の知ってる値段よりも倍以上になってるじゃん。そんな高額なもの、交渉だけで譲り受けられるもんなのかな?
イーヴィル家のお嬢様ったって、さすがに手が出ない金額だと思うんだけど……。
俺が疑わしげに視線を向けていると、レインがサッと目を逸らした。
あ、この子、親の力を使ったな?
ダメだよ。ちゃんと時間をかければ、そのぐらい稼げるようになるんだから。スネなんて齧っちゃダメだと思うけど?
レインも多少は引け目を感じているのか、そこに関しては普段のようにハッキリと告げなかった。
その代わりに、ちょっとバツが悪そうに「ん」と俺へ【白無垢】のカードを突き出してくる。
あ、今のちょっと可愛い。
俺がまじまじレインの顔を見てると、次第にその顔が赤く染まっていった。
「ちょっと! はやく受け取りなさいよ!」
「え? くれんの?」
「そんなわけないでしょ! 【実装】よ! それで私の【LG】を【実装】してくれるって約束したでしょ!」
まあ、ゲームに勝ったチームに【実装】してあげるってことになってたね。自分の分も合わせて、レインに【LG】を【実装】して欲しいと、スズネちゃんにもお願いされている。
焦らなくても、その内【実装】はするつもりだったから、無理にカードを入手して来なくても良かったんだけど。レインはどうも待ちきれないらしい。
「良いけど、どんなのが欲しいの?」
「ドーンとかバーンってやつが良いわ!」
急に語彙力なくなり過ぎだろ。
なんだよドーンとかバーンって。
ああ、そういやレインはドラゴンとかのカードを扱ってたから、大きくてそりゃあもう強そうなゴツイのが良いんだろうな。
でもなあ。【LG】ってカードに仕舞うと機嫌が悪くなっちゃうからな。そんなでっかいのが、日常的に周りにいるのも邪魔なんだよなあ……。
考えること数秒。やっぱり可愛い女の子にすることにしました。
増えるならそっちの方が、俺的にも嬉しいし。
というわけで、【白無垢】を受け取った俺は、集中して記憶を呼び覚ます。
「あ、あの! そんな突然【実装】なんてして、大丈夫なんですか!?」
おや、ルティルには予め、【実装】の話はしていたはずなんだけどな。
俺が首を傾げていると、考えていることが伝わったらしい。
「そんなにサラッと【実装】するなんて誰も想像しませんよ!」
声を荒げるルティルであったが、何故だろうか?
その瞳はキラキラと輝いて、詰め寄って来た為に凄く顔が近い。
むむ。俺は緩みそうな顔を引き締め、心のグッドボタンをそっと押したのだった。
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大丈夫です! 押したら俺の脳内に知らせが届くんで!
あ、てめ! 今バッド押しただろ!




