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【162】ペタンコ再び

「ねえ、レイン。どうしてこの世の中には自分勝手な人間しかいないんだと思う?」


「そうね。そもそも生き物全ての行動意欲が、自分の利になる事にしか働かないからだと思うわ」


 凄く真っ当な返答をありがとう。何言ってんのかわかんないや。


 どうやら聞き方を間違ったみたい。


 俺が聞きたかったのは、どうしてわざわざ足を運んだ俺たちに対して、あんな理不尽な事を出来るのかって事だったんだよね。


 つか、今しがた散々見て来たでしょ? わかるよね?


 最初のベンゼンから始まり、大店の商人、教会の関係者、その後も貴族数人と会って来たけど、全員自分勝手な押し付けやら強奪を企む悪い連中だった。


 まあ、人間の本質が悪であることから考えれば、彼らは悪人なのではなく、ただ人よりほんの少し自分に素直な人であるとも言えるのだが……。


 何言ってんだ俺。


 どうやらレインの病気が移ったようだ。


「ともかくさ、もういい加減良いんじゃないかと思ってるんだよ」


「……と言うと?」


「だからさ、どうせ馬鹿みたいなこと言い出す奴しかいないんなら、問い合わせに対して一々対応する必要なんてないんだと思うんだよね」


「まあ、そうかもしれないけど、それをこの場で言うべきではないわね」


 優雅にお茶を口にしながら、レインがそう言った。


 見れば俺たちの対面には、一位階級の貴族が一人、苦笑いを浮かべて静かにしていた。


 あ、忘れてた。


 あんまりにも酷い連中ばかりだった為、この場でついに俺の堪忍袋の緒が切れたらしい。


 なお、堪忍袋がなんなのかを俺は知らない。そんな袋が体のどこかにあるのだろうか? まあ、どうでも良いけど。


 つまり、目の前の貴族……えーっと名前は、確かマーガリと言ったっけ? マーガリさんはまだ何もやってないわけです。


 まあ、時間の問題だろうけど。


「……えー、そろそろ本題に入らせてもらっても良いでしょうか?」


「お断りします!」


「では、暫しお待ちします」


 柔らかく丁寧な様子でマーガリはそう言った。


 他の貴族よりも物腰が柔らかく、高圧的な言動は見られないから、悪い人でないのはわかる。


 だけど、さらっと流されたけども、断ったのはこれから話すつもりだった本題に対してだったんだよね。だから待たれても困るんだよ。言葉って難しい。


 静かな室内。


 俺がずずずとお茶を啜る音しか響き渡っていない。


 あー、なんか気不味い。


 つーか結局、本題を聞かなきゃ帰れない流れなんですけど。


 俺は諦めてマーガリにどうぞと促した。


「ブル様がこれまでに御不快な思いをされて来たことをお察しします。【黒のウンエイ】に対して、様々な憶測が流れていまして、皆さま我先に関係を持とうと躍起になり、少々タガを外してしまったのでしょう」


「それにしては強引だったけどね」


「貴族一同を代表しまして、私の方から謝罪を」


 マーガリがペコリと頭を下げる。


 ……貴族って謝れるんだ。初めて知った。


「まあ、良いけどね。それで? マーガリさんは俺たちに何の用なわけ?」


 少し強気な言い方だったけど、それでもマーガリはニコニコと浮かべた愛想を絶やさない。


 くそう、これが大人の余裕ってやつか。逆に腹たつ!


「実は、【黒のウンエイ】に対して強い興味を持たれている方がおりまして、その方をブル様に引き合わせたいのですよ」


 はあ? なんでよ。そんなお使いクエストみたいなのやりたくないんだけど。


 こっちはわざわざ休日潰して足を運んでるんだよね。


「話はわかったけど、問い合わせ関係は全部突っぱねる事にしたから、会っても無駄だと思うよ」


「お時間は取らせません。その方は既に別室で待機させておりますので」


「その人が直接問い合わせしてくれば良かったじゃない。なんでそんな回りくどいことを?」


「一番に手紙を送ったと言っていましたよ。ですが、平民である自分の問い合わせでは、後回しにされるか対応されない可能性があるので、私の方からも連絡をして欲しいとお願いされてしまいましてね」


「平民が貴族にお願い?」


「ええ、その方は私が懇意にしている商家の者でして、個人的にも随分とお世話になっているのですよ。非常に頭のキレる方で、どこかに属することを嫌うのですが、今回は珍しく興味をお持ちのようでして」


 ふーん。


 俺は少し考えたけど、この場で話が終わるならゴネる必要もないかと思った。


 面倒くさい相手なら、今まで同様、ポコパンして帰れば良いしね。


「まあ、直ぐ会えるなら会っても良いけど」


「ありがとうございます」


 マーガリは深々と頭を下げると、パンパンと手を打ち鳴らして執事を呼び、別室で待っている者を呼び寄せた。


 少し待つと扉がノックされ、入室を促されるとその人が部屋へ入って来た。


 その姿に俺は思わず見惚れてしまった。


 金色の髪、切れ長の瞳、スラリとした体つきは健康的で、それよりも特徴的なのが長く尖った耳である。


 当然ながら胸はペタンコだ。



 え、え、え、エーーールフ!


 エルフを見るとどうしても、俺のテンションは上がってしまうのであった。

読んでくださりありがとうございます。


集中し過ぎて、電車乗り過ごした!


いや、違う降り損ねたんだ!


皆さまは余裕持って生活しよう。

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