【016】可愛いは正義
「つまり、それだけ凄いカードなのよ!」
エディナが興奮しながら、レジェンドカードについて熱く語っていた。というか長いよ。三行にまとめて欲しい。
伝説の魔王たちが持っていたと言われる七枚のレジェンドカード。
今ではその存在すら、お伽話として語り継がれているだけである。
つまりそれは、戦争を引き起こしかねないほど希少だということ。
まとめるとそんな感じかな?
だけど、正直そんな話には興味がない。俺の意識は体育座りして、エディナの長い話のせいで舟を漕ぎ始めたツクヨミに向けられていたのだ。
こくりこくりと、前後に頭を揺らす姿が可愛いんだ。これが。
よし、抱っこしよう。
そう思い、俺は眠そうしているツクヨミに近付いて、小さな体を抱き上げようとすると。
スカッ。
俺の両手は空を切った。
あれ? 気が付けばツクヨミは立ち上がっていて、俺と一定の距離を保っていた。
いつの間に移動したんだ?
そう思い、再びツクヨミに近付いて手を差し出すと。
スカッ。
瞬間移動の如く躱された。
ははん。照れ屋さんめ。強引なのも嫌いじゃないんだぜ!
俺は、一気にツクヨミとの距離を詰め肩を掴んだ!
そう思ったら、ツクヨミの姿が透過して薄くなる。
なにっ! 物体じゃないだと!
「ふっ、それは、残像」
俺の直ぐ後ろでツクヨミの声がした。
気が付けば、触れたと思ったツクヨミの姿は掻き消え、俺の後ろで立っている。
……よろしい。ならば戦争だ!
俺は悪鬼の如くツクヨミに迫り、そのボディにタッチしようと奮闘した。
「でいっ!」
スカッ。
「とりゃああ!」
スカッ。
「こんにゃろおお!」
スカッ。
涼しい顔のツクヨミに対して、俺はぜいぜいと息を切らして地に手をついた。
くそうっ! ぜんぜん触れねえ!
「なにやってんのよ、あんたは……」
「スキンシップを取ろうとしたら、逃げるんだよ!」
「そんないやらしい顔で迫られたら逃げるでしょ? 普通」
どこがじゃっ! 俺がツクヨミに対してやましい気持ちなんて抱くわけがなかろう! ただちょっと膝の上に抱っこして、ほっぺたをぷにぷにして、鼻の下を伸ばしたいだけなんだからねっ!
俺の考えが顔に出ていたのか、ツクヨミは俺から距離を取るとスッとエディナの後ろに隠れた。
「あー、可哀想に」
そう言ってエディナはツクヨミの頭を優しく撫でる。ツクヨミは嬉しそうに目を細めると、ひしっとエディナに抱き着いた。
「あーん、可愛い! 私エディナっていうのよ、ツクヨミちゃん」
エディナがツクヨミをガシッと抱き締めるが、ツクヨミは抵抗することも逃げることもしない。
それどころかエディナに抱き着き、空いた手でエディナの尻を撫でていた。
眠たげな瞳が、俺へと向けられる。
「……エディナ、いい尻」
ぐおおおおっ! なんてこった! 俺の尻があああ!
まさか俺の愛するツクヨミに、俺の愛する尻をNTRされるとは!
く、くやしい。これは……これはこれで……ありだなっ!
美少女二人が抱き合っている姿を見て、怒りどころか俺の頰はいやらしく緩んだのだった。
「……その反応は予想してなかった」
悔しげな表情を浮かべるツクヨミ。
ふっ、ツクヨミがどんなことをやったとしても、俺にとってはご褒美にしかならないのさっ!
可愛いは正義なのだ!
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