【157】卑怯な手段
『私は死にました』組である俺とペトリーナは、屋上の端っこで体育座りして戦況を見守っていた。
ツクヨミが衣を盾にして、フェリちゃんが間隙を縫って一発撃ち込む。
パリスを狙ったそれは、ワタツミの水が綺麗に受け流す。
さっきからずっとこの攻防が続いているんだが、いい加減決着をつけて欲しい。
正直暇になって来たんだよね。
ドロケーだか、ケードロで捕まった人みたいにやる事がない。
ドロケーと違って、タッチされたら復活するわけでもない。俺たちはもう死んでしまったのだから……。
「ブル君、お顔に酷い事が書かれているの」
うん。改めて言われなくてもわかってるよ。
「ペトの顔にも書いてあるよ」
俺がそう言うと、ペトリーナは慌てて鏡を取り出して自分の顔を見た。
そして、何故か安堵したような表情になる。
あのね! 確かに俺の方が酷いこと書かれてるけども! 一応同じ『私は死にました』マークなんだよね!
「ブル、一番に死んじゃったのねー。かわいそー」
突然、隣からセンが現れて俺にもたれかかって来た。
「名誉の戦死だったんだよ」
「胸ぐら掴まれてたけどね」
見てたんかい!
「センはいいの? まだゲームは終わってないけど?」
「いいの、いいの。あの二人が同士討ちしてくれれば、私たちの勝ちだし」
「二人ともセンのことに気が付いてると思うよ?」
「気が付いてたとしても、相手を一々気にしてるようじゃ、【LG】なんてやってられないわよー」
なにそれ。
【LG】業界にも、俺の知らないルールみたいなのがあるの?
でも、その業界そんなに広くないよね?
「レインとスズネちゃんは?」
「部室でお茶を飲んでるみたいねー」
……あの二人も大概だな。
さっきまで撃ち合いしてたってのに、優雅にティータイムですか。勝つ気あるのかね! 俺が言うのもなんだけど!
「別に何処にいても狙われるし、私がいなきゃ躱しようもないから。だったら逃げ惑うのはカッコ悪いって言ったよ」
なるほどね。まあ、レインらしいっちゃらしいのか。
つか、しれっと心の声と会話するんじゃねえ!
「そろそろ弾切れかな? 決着が着きそうね」
センがそんなことを言う。
あの銃、一応弾切れするんだ。
てっきり弾切れとか、そういう概念忘れちゃってるのかと思ったよ。
ツクヨミの二丁目拳銃も、フェリちゃんのスナイパーライフルも、ワタツミとパリスのハンドガンも、程なくするとカチカチと音を鳴らした。
お互いに弾切れになったらどうやって決着を着けるのだろう?
そう思っていると、ツクヨミとワタツミはどこからともなく手榴弾を取り出して、同時にピンを抜いた。
……そんな物も用意してたのか。
ピンを抜いて三秒ほどの時間を待ち、二人が互いに向かってそれを投げようとしたところで……。
手榴弾が突然爆発した。
周囲へ横殴りの雨のようにマチオカが飛び散る。
それを見て、センが悪い笑みを浮かべた。
「手榴弾に細工をしておいたの。ピンを抜いて十秒後じゃなくて、三秒後に爆発するように」
なんてやつだ。つか、ツクヨミだけじゃなくてお前も武器製作に携わってたんかい!
普段蹴り合いとかしてるくせに、意外と仲良いのな。
手榴弾が爆発したことにより、飛び散ったマチオカを防ぎ切る事は、さすがのツクヨミもワタツミも難しかったようだ。
躱し切れなかったマチオカが数発、肩や足に着弾していく。
あー、これはセンチームの勝ちかなぁ。
そんなことをふと思ったけど、ツクヨミたちは俺の考えを裏切るような動きを見せた。
散弾のように広がるマチオカを、センへ向けて弾き返したのだ。
「そんなことをしても無駄でしょ」
水鉄砲から放たれるよりも格段に速いマチオカだったが、センは指先を向けて、触れることなくそれら受け流した。
しかし。
受け流した瞬間、跳ね返ってマチオカが戻って来る。
見ればセンの周りには水の壁が出来上がり、それに当たったマチオカは更に勢いを増してセンへ向かっていった。
「なっ! 卑怯なっ!」
どの口でその言葉を口にしたのか……。
空間に逃げ込む間も無く、程なくして尻尾に被弾したセンの顔には、『私は死にました』と文字が浮かんでいた。
ぶうと頰を膨らませるセン。
ツクヨミとワタツミの顔にも、『私は死にました』マークが浮かんでいる。
予想外のことに、【LG】たちは三人同時に敗退したのであった。
読んでくださりありがとうございます。
まさかの展開!
【LG】が全員同時にやられちゃうなんて!
まさかでもなんでもなく、それしかないよね。うん。




