【156】二人死亡。
パンッと乾いた音が鳴った。
俺が気が付いたのは偶然だ。
センが撤退した後、一息吐いてツクヨミの方へ視線を向けただけだった。
そうしたら、一瞬光が屈折したように見えたのだ。
そこからニョキッと生える水鉄砲を持った手。
水鉄砲が狙う先には、フェリちゃんの姿があった。
火事場のクソ力とか、走馬灯とか聞いた事があるけど、まさか俺が体験するとは思わなかった。
多分時間にすれば、コンマ何秒ってとこだと思う。
その僅かな時間で俺の思考は最適解を導き出したのだ。
静止したような時の中で、俺が導き出した答え。
それは。
合法的にフェリちゃんに抱きつける! だった。
俺は瞬時に行動を開始し、フェリちゃんに向かってダッシュ!
丁度立ち上がったフェリちゃんへ抱きつくようにダイブした。
腰へ回した腕に柔らかい感触が広がり、フワフワの尻尾が鼻先をくすぐる。
だが、それと同時にボフッと重い衝撃が俺の背中を打った。
いてっ! ちょ、結構痛いじゃんこれ!
マチオカの一撃を受けたあと、突然俺の胸ぐらが掴まれて体が宙に浮いた。
「てめえ、やっぱり変態の類だったのか!」
俺を細い腕で軽々持ち上げて、フェリちゃんがガルルルと牙を剥く。
「ちょちょちょ! 敵だって! 銃声聞こえたでしょ!」
「それとこれとは話が別だ!」
「守ってあげたのに!?」
「あ゛あ゛ん! 腰に手を回す必要ねえだろ! ここぞとばかりに、わざとやったんじゃねえだろうな!」
うおお、バレてるー。
そんな事をやっていたら、パンッパンッと連続して銃声が鳴った。
「あぶねえ!」
フェリちゃんが俺を持ち上げたまま、盾にしてマチオカを防いだ。
いて、いてっ!
痛いよフェリちゃん。
あと力強過ぎ! 正直獣人の腕力を舐めてた。半端ないわ。
「む、主君を盾にするとは卑怯な!」
ヌッと姿を現したワタツミが、フェリちゃんへ向かって声を荒げた。
けれど、手に持った水鉄砲をパンッパンッと鳴らして、フェリちゃんへ向けている。
要するに俺に向かって撃ってる。
ワタツミよ。本気でそう思ってるなら、撃つのやめような。結構痛いんだからさ。
「ブルはもう死んだ。死体を盾に使うのは戦場では基本」
ツクヨミさあん! ゲーム的に死体扱いでも良いけど、単純に痛いんだよね!
そうこうしていたら、別の方からもヌッと水鉄砲を持つ手が現れた。
これはアレか。ワタツミの消えるやつ。
たぶん水の幕で光を反射して見えなくしてるんだと思われ。よく知らんけど。
となるとその手はパリスとペトリーナか。
一方は躊躇う素振りもなく発砲。
もう一方は水鉄砲を構えたまま、撃って来ない。
どっちがどっちだか一発でわかるね!
フェリちゃんは俺を盾にしてハンドガンタイプで応戦。ツクヨミもいつの間にか二丁目拳銃である。
ツクヨミが二丁の拳銃、もとい水鉄砲で相手を撃っていくが、ワタツミの周囲にある水の壁がそれを弾く。
チッと舌打ちをして、ズザザザーと滑り込むように俺の影に身を隠すツクヨミ。
フェリちゃんもだけど、俺は壁じゃないからね。あと正面向けるのやめてね。目に当たったらどうすんの。
「どうすんだ! ツクヨミ!」
「同時に動く。援護はツクヨミに任せる」
そう言ってツクヨミは、クイッと顎でスナイパーライフルを差す。視線で追ったフェリちゃんは大きく頷く。
「オーケー。そんじゃあ行くぜ! 三、二……一」
合図と共に二人が俺という壁から飛び出した。
フェリちゃんがスナイパーライフルへ向かってダッシュし、ツクヨミが二丁目拳銃で牽制を図る。
二人はノリノリである。
そして。
なんとか被弾せずにスナイパーライフルを手にしたフェリちゃんが、散弾用のキャップを外して相手を狙った。
二方向から撃たれるマチオカは、ツクヨミが全て防ぎフェリちゃんは落ち着いた様子で銃口を向け、そしてズドン。
次の瞬間、小さな悲鳴が鳴った。
「痛いなの!」
ペトリーナが肩を押さえてしゃがみ込んでいる。銃口はワタツミへ向けていたのだが、どうやら狙ったのはペトリーナだったらしい。
ペトリーナの顔に、薄っすらと文字が浮かび上がった。それを読んでみると。
『私は死にました』
そう書かれている。
げっ、まじかよ。
私は死にましたマークってあれかよ。って事はさ。俺の顔にもあれって浮かび上がってんじゃね?
鏡を取り出して恐る恐る自分の顔を除き込んでみると。そこには、
『私は一番に死んだクソ雑魚イモムシです』
そう書かれていた。
酷いんだが!
読んでくださりありがとうございます。
謎の銃撃戦だと思うだろう?
実はこの戦いにはとんでもない秘密が……
隠されてないんだなぁ。




