【151】もう最終手段
部員があと一人足りない。
とはいえ、ぶっちゃけ入れるだけならなんとかなる。
俺が教室で話していた内容を聞いていた誰かが、ウンエイ部が部員を必要としている事を広めてしまったらしい。
噂は瞬く間に広がって、結構な数の生徒がその話を知っていた。
俺はこれでもモテる。
主に男に!
パリスとの決闘で見せたワタツミ効果は今もなお健在で、学園の廊下を歩くと執拗に声を掛けられるのである。
というわけで、入部希望者が殺到した所為で辟易してしまった。
これが全部女の子だったら、楽しかったのかもしれないけど、希望者は全員男である。
なので当然、全部お断りした。
こんだけ噂が広まってるんだから、女子の一人でも来いっての!
そんなこんなでプリプリしながら、俺は事務室へと向かっていた。
こうなったら最終手段である。
別に何かしらの策を講じたわけじゃないけど、もう最終手段を使う事にした。
事務室に到着した俺は、机の上にバンッと銀行のカードを叩き付けて言った。
「ミルの入学を今週末にして下さい!」
突然言われた言葉に事務員さんはポカンである。
「あのですねえ、ブル君。入学手続きにはそれなりに時間がかかるですよ」
「今週末にして下さい!」
俺の我儘に対して、事務員さんは困り顔で話を続けた。
「入学金は昨日お支払い頂いてますけどね。処理に少し時間がかかるんです。申し訳ないですが、最短でも来週からという事に……」
「失礼ですが、お給料はどの位ですか?」
「え? いやー、あんまり口外して良い事では―――」
「倍お支払いします。なので死ぬ気で残業して、間に合わせてください」
「そう言われましても……え? 倍!?」
「はい。人手が必要なら、手助けしてくれた方全員に倍額お支払いします。なので間に合わせて下さい」
事務員さんがゴクリと生唾を飲む音が聞こえた。
「全力で取り組ませて頂きます!」
現金なものである。
やはり金は絵の具のようだ。
この世というキャンバスに、好きな色を塗る事が出来る。
銀の王様。いつぞや、塗れないじゃんって否定したけど、すまん。やっぱ塗れたわ。
ちょっと強引なやり方だったけど仕方ない。
どの道ミルは入学したらウンエイ部に入るだろうし。そうなると、部を存続させる為だけに最後の部員を集める事になってしまう。
入って貰ったからには、クランの方にも所属して貰いたいし。後々は魔王候補にもなって貰いたい。
まじで適当に入部させると後々自分の首を絞め兼ねないから、ここは強引でもなんでも余計な人材は集めない方がいいのである。
たぶんね!
「はい、というわけで部員の確保が終わりました」
「おー」
パチパチと拍手するレインとフェリちゃん。
顔に、出る幕が無くて良かったと書いてある。
こんにゃろう。
「あと一人は誰なの? 今日は来ないの?」
ペトリーナが、首を傾げて聞いてきた。
「週末に妹が入学するから、その日の内に入部して貰う事にしたんだよ」
「ブル君には妹さんがいたの!?」
「そうだよ。攫っ―――げふんっ! 実家からこっちに来る事になったんだよ」
「まあ、攫って来たんだがな」
おいっ、パリス! 速攻でバラすんじゃねえ! 踏み止まった俺の努力を返せ!
「攫って来た?」
ほら、ペトリーナが困惑してるじゃないか!
「ブル、あんまり口外したくないのはわかるが、ペトリーナは俺たちの仲間になったんだ。下手に隠し事をするのは良くないと思うぞ」
あのねえパリス君。全くもってその通りなんだけど、君がさも当然のように俺の仲間になってるのはなんでかな?
俺はね。男には厳しくするスタイルなんだよ。知ってる?
というわけで、ペトリーナにも一通りの事情を話した。
「凄いの! 私にはそんな事出来ないの!」
うん、まあ俺にも出来ないよ。
結婚式当日に貴族の花嫁を攫うとか、【LG】たちやレインが居なけりゃ大問題ですよ。
要するに俺は何もやってない。
いや、【破壊】たくさんやったわ。
「基本的にはウンエイ部というより、クランの方で闘士として活動する事になると思う。あ、でも必要な物とかはこっちの経費で用意するから心配しないで」
「闘士? 私たちはまだ学生なの」
「委員長、そいつに普通の事を言っても意味ねえぜ。常識がねえんだ。そいつには」
「ブル君は変な人だったの?」
フェリちゃんも! 話がややこしくなるから余計な事言わないで!
色々と困惑するペトリーナであったが、親切丁寧に教えてあげたら一通り納得はしてくれた。
けれど、説明を聞き終えると、ペトリーナの中で、俺は変な人で定着してしまったらしい。
言っとくけど、おかしいのは【LG】たちの性能であって、俺じゃないだからね!
いや、俺っておかしくないよね?
読んでくださりありがとうございます。
最近一人称が統一できてない気がする。
でも、自分っていうと堅苦しいし、私って言うと女性っぽくなるし、俺って言うとちょっと高圧的だし、僕って言うとなよなよしてる気がする。
うーむ、ワシで行こうかな……おじいちゃん!




