【139】長馬事件の真相
フェリちゃんが悪態を吐きながら、カフェラテを運んで来てくれて、それを口にして一息つくと沈黙が流れた。
目線を上げると、パリスがチビチビとカフェラテに口をつけながら、怪しむように俺を見てくる。
あのさあ、早く俺の妹について話してくれないかな?
男と長々お茶する趣味はないんだけど?
パリスが話し出さないから、俺はケモケモ喫茶の女の子たちに目を向ける。
イヌミミちゃんがあわあわしながらお盆を運び、メロディがぴょこぴょこしながら食器を片付けていた。
フェリちゃんが空いた席のテーブルを拭いていると、その動作に合わせてモフモフの尻尾が左右に揺れる。
グッド。やっぱここは眺めているだけで癒される。
「話しをする前に一つ聞きたい」
俺がケモっ娘たちに目を奪われていると、パリスが重々しげに口を開いた。
「お前は本当にブル・ドッグなのか?」
核心を突く一言。
そうです。俺はブル・ドッグであってブル・ドッグじゃあありません。
正解です。花丸をあげちゃいます。
けれど、残念。野郎に真実を教えるほど、俺はお人好しではない。
お人好しの定義が、野郎に真実を教える事であるかは置いておくとして、ともかくその事はベラベラ喋ることじゃないのである。
可愛い子になら直ぐにゲロってますけどね!
「ブル・ドッグが二人居ても、良いことなんてないでしょ」
「……まあ、それはそうだが」
違う、そこは否定しろよ! 気遣えよ!
……まあいい。
「で? 俺の妹は何て名前で、長馬の件とどう関わってくるのかな? あとついでに、俺と妹が仲良しだったかも教えてくれる?」
「おまっ! 何故それを知らないんだ!」
「まあ、記憶が無いからね。パリスの所為で長馬が事故ったらしいけど、その前の記憶がまるっきり無いわけだよ」
とりあえず、知ったか振りをしても直ぐバレるんで、便利な設定を使う事にした。
テテテン、記憶そうしつぅ〜。
「なら、俺の事も、俺の妹の事も覚えて無いってのか!?」
「そうだね。だから、なんでパリスが俺に絡んで来たのかもサッパリ分からない」
俺の言葉にパリスは目を剥いて驚いていた。
「……通りで別人のように感じるわけだ」
いや、その感覚は正しいんだよ。事実、別人だしね。
パリスは眉間に皺を寄せると、重々しい雰囲気で話し始めた。
パリスの話によると、ブルとパリスは幼馴染らしい。
家同士の交流もそれなりにあって、そもそもが敵対するよう関係ではなかったようだ。
では、何故パリスが俺に憎むような視線を送って来たかと言うと、そこにどうやら妹たちが絡んでくるようだった。
ブルの妹ミル・ドッグと、パリスの妹ハクア・ワイズマン。
その二人にどうやらブルは、好意を寄せられていたみたいだった。
しかも、割とマジな好意を。
そして、ある時ブルは、パリスの妹であるハクアに告白され、それを振ったらしい。
まあ、それだけなら良いんだけど。
振った台詞が最悪だった。
「俺、妹と結婚するから無理」
だそうだ。
家柄も関係も良かったドッグ家とワイズマン家。
だが、この件を境に険悪になった。
何より、深く傷ついたハクアを見てパリスは激怒したらしい。
ブルに対して、何度も考え直せと説得を試みたのだが、当のブルは柳に風。聞く耳を持たなかったようだ。
そんな態度だったものだから、パリスも遂にキレた。
学園の入学前に、ティラミスを離れるブルに対して、こらしめてやって欲しいととある人物に依頼をしたとのことだった。
長馬の業者にも、襲撃がある事は教えてあったらしく、俺が置いていかれた事は元々仕組まれた事だったみたいだった。
ただ一つパリスとしても想定外だったのは、相手がブルを殺してしまった事だった。
パリス自身はそう報告を受けたみたい。
だけど俺は、突然学園に現れた。
変わらぬ飄々とした様子で。
それをみたパリスは、驚きと共に怒りが湧いて来たみたいだ。だから、俺に突っかかって来たらしい。
なるほどね。
パリスは殺人犯じゃなくて、過保護なお兄ちゃんだったわけだ。
うーむ。
しかし、話を聞いてるとやっぱり前のブルが色々悪かったような気がしてくるな。
振るにしてもやりようはあるだろうに。
そんなストレートに言わないでも、何処かで待ち合わせして答えを待つとかもっとこう……。
……ぶはっ!
相手がやって来なかった時もダメージでけえわ!
結局振られるって、結構堪えるもんなんだよね。
読んでくださりありがとうございます。
あ、あ、あ、後書きー!
……なにを言ってるんだと思わなくもなかったけど、そのままのせちゃう。




