【132】クエストを受けよう
というわけで、三日後の休日に俺とフェリちゃんは委員会事務所へ来ていた。
メロディと店長による執拗な後押しもあって、フェリちゃんは渋々ながら俺と一緒にクエストを受ける事を承諾したのだ。
ケモケモ喫茶はまだ営業中だけど、メロディと店長さんは俺との繋がりを深めることを優先したいらしい。
俺のお気に入りであるフェリちゃんをあてがう事で、今後もお店にとって有益な情報を得ることと、新規オープンした時の太い客として収益を見込んでるのだとか。
フェリちゃんから、決闘の話を聞いていたらしく、低ランクのクエストを受けるぐらいなら問題ないだろうとの判断だ。
そもそも、フェリちゃんは闘士になる為に学園へ通っているのだから、この機会を逃す理由なんてない。
それをウサミミ店長さんに言われたら、フェリちゃんは何も言い返せずに頷くしかなかったのである。
「都会だから、依頼がたくさんあるね」
「Gランクで受けれるクエストは安いのばっかだけどな。割の良さそうなものは実質不可能な内容だし。一日かけてこのクエストをやるぐらいなら、ケモケモ喫茶で働いてた方が幾らかマシだ」
「確かにね。けど、安くても数をこなせば儲けも良くなるでしょ」
「素材の採取や荷運びで、そんなに数が稼げるとも思えねえんだが?」
「荷運びか……それ良いね! えーっと、パンナコッタから隣街までの依頼はっと」
「話聞いてんのかよ!」
聞いてるよと答えながら、俺は依頼内容に目を通していく。
荷運びの依頼はちょっと大きめの木材とか、危険な動物とか、鉱石の塊とか、とにかく運び難い物が殆どだ。
まあ、普通に流通してる物を、いつ受けて貰えるかわからないクエストとして依頼なんてしないだろうけど。
その為か、簡単な討伐系の依頼よりも、それら荷運びの依頼の方が金額は少々高い。
「運ぶ先がミルフィーユとショコラになってる物は全部受けようか」
俺が依頼票をベリベリ剥がしていくと、フェリちゃんが待ったをかけた。
「おいっ! いくつ剥がす気だよ! そんなに受けても運べなきゃペナルティを受けんだろ!」
「運べれば良いんでしょ?」
「そうだが……チッ、俺は知らねえからな」
というわけで俺は、荷運びの依頼を二十枚ほど剥がしてカウンターへ持って行った。
当然、受付のお姉さんには嫌な顔をされたけど、ダメならペナルティとして報酬額の半分を支払うと書面で約束したら、問題無くクエストを受ける事が出来た。
というわけで、クエスト開始である。
先ずは依頼者のところまで、荷物を受け取りに行く。依頼品を受け取る前にツクヨミに指示を出して、衣を大きな荷台に変形して貰う。それをガラガラ引いて品物を受け取ったら、俺とフェリちゃんとで品物を荷台に乗せて次の場所へ。
移動中にツクヨミが荷物を衣の中へしまい、荷台は空の状態で次の依頼者の元へ到着する。
ツクヨミが衣で荷台を作ったり、衣に荷物を飲み込むと、フェリちゃんが一々ギョッとして驚いていた。だから、この子はワタツミと同じで召喚モンスターだよって教えてあげたんだけど、今一信用してないみたいだった。
大きな鉱石や木材はワタツミにも手伝ってもらい、危険な動物らしい生き物はセンが睨みを効かせたら猫のように丸くなる。程なくして二十件の荷物を全部受け取ると俺たちは街を出たのだった。
ブロロロロロロ。
エンジンなんて搭載してないはずのブルドーザーが、機械音を鳴らして街道を走る。
街を出たあと俺はツクヨミにこいつを出して貰った。
普通に歩いていたら日も暮れちゃうし、この方が楽だからである。
当然フェリちゃんは驚いて警戒してたんだけど、ツクヨミが衣で簀巻きにしてサッサと乗せてしまったのであった。
そのせいか先程から少々機嫌が悪い。
狭い車内で、俺とフェリちゃんが密着するように隣合って座り、俺とフェリちゃんの片足を跨いで腰掛けるツクヨミが運転をする。
さすがに全員は入らないので、センとワタツミは車の上で立っている。まあ、【LG】の二人なら落ちたりはしないだろう。
というわけで、機嫌の悪いフェリちゃんと違って俺はご機嫌だった。
フェリちゃんと密着できるし、良い匂いするし、髪とか尻尾がモフモフするし。
「てめぇ、これはどういう事なんだよ!」
「どうって、ツクヨミの能力の一種かな?」
「こんなの聞いた事もねえぞ!」
「だろうね。彼女たちは俺のオリジナルだし。辞典とかにも載ってないからね」
「オリジナルって……【実装】に成功したのか!?」
「そうだよ。ほら」
俺がツクヨミ、セン、ワタツミのカードをフェリちゃんに差し出すと、フェリちゃんはそれを受け取ってワナワナと震え出した。
「レ、レジェンドカード! しかも三枚も! おま、これは! どうやって???」
「だから、【実装】したんだって。ワタツミは最近レインの前で【実装】してるから、嘘だと思うなら聞いてみると良いよ」
「……いや、通りでレインお嬢様が気にかけるわけだ。おい、ブル・ドッグ! てめぇはいったい何者だ!」
鋭い目付きでフェリちゃんが睨んでくる。
しかし、俺は感動に打ち震えていた。
フェリちゃんが名前を呼んでくれた!
これは大きな前進である。
読んでくださりありがとうございます。
気晴らしのつもりだったんだけど、この作品(作品と言えるかは不明)を書いてると、真面目に書いてる方のスイッチが入らない。
困ったものです。




