【129】無事決着
ロードデーモンが光の粒となって消えていった。
「……俺の、ロードデーモンが……」
パリスが力のない声をあげて顔を歪めた。けど、その瞳には直ぐに憎しみの色が宿る。
「……まだだ! サーチ―――」
パリスが声を上げながら取り出したカードが、ものすごい勢いで飛んでいった水弾に弾かれる。
「く、【召喚】! パラサイ―――」
バシュンと音を上げて再び水弾がパリスのカードを弾く。
「アクアシ―――」
バシュン。
「ブレイクア―――」
バシュン。
使おうとしたカードは、ことごとくがワタツミの水弾に弾かれてしまった。
カードを使おうにも、それすらも許されない状況。
最早決着は付いている。
いや、【LG】がいる以上、最初からこの結末はわかっていたけども。
「無様に降参しますか? それとも死にますか?」
またしてもワタツミが恐ろしい言葉を口にした。
「ワタツミ、デスマッチとはいえ、学園のルールだと殺しちゃったら失格だからね。普通にダメだよ」
「心得ています。ですが、死んだとしても問題はありません」
あー、この子、相手が死んでも蘇生のスキルがあるから平気だと思ってるな。
つか、まじでそのスキル現実でも使えるわけ? ツクヨミとセンも大概だけど、ワタツミもチート過ぎない?
「我が主君に対して暴言を吐き、あまつさえ牙を剥いたこの者は、相応の報いを受けるべきかと愚考しますが?」
だから、やり過ぎたら失格になるんだって。
そもそも、物騒なことはしなくても良いんだからさ。
俺が顔を顰めていると、ワタツミが慌てて膝をついた。
「余計な進言でした」
思考が過激だけど、この辺りは素直なんだよなぁ。
その時だった。
「【爆撃】!」
ワタツミが視線を離している隙に、パリスは魔法カードを使用して来たのだ。
人を包み込んでしまえるほどの巨大な火の球が、俺に向かって飛んで来る。
こんなもの食らったら死んじゃうと思うんだけど、みんなは決闘したときどうやって凌いでいるのかな?
まあ、俺の場合は考えるまでもないんだけど。
スッと立ち上がったワタツミが手を引いて構えると、右手の中には水が集まり出して一本の槍が生み出された。
水で出来た槍。
当然ながら、【LG】が創り出したこの槍がただの槍というわけもないだろう。
ワタツミは創り出した槍を、巨大な火の球へ向かって投げ付けた。
すると。
槍の矛先が火の球に僅かに触れた瞬間、ジュジュッと音を立て火の球が消え去ってしまった。
投げつけられた槍はそのままパリスへと直進する。
ちょ、あれが当たったらヤバくね!
俺がそんな心配をしていると、槍は複数の小さな槍に割れて器用にパリスを避けて地面へと突き立った。
「ひっ!」
腰を抜かして尻餅をついたパリスの周辺には、地面を抉られた跡が複数残っている。
そして、ワタツミは何も言わずに鋭い視線だけを向けて、パリスへと歩み寄った。
ジワリジワリと近付かれ、パリスが慌ててカードを取り出すが、バシュン。
先程と同じくワタツミの水弾によって弾かれる。
そして、尻餅をついたままのパリスを見下ろすようにして、ワタツミは手をかざした。
「ひっ、ま、待ってくれ!」
ワタツミがかざした手の中に水が集まり出す。
「慈悲深い主君は、あなたを傷付ける事を望まれてはいないようです。ですが、あなた程度の相手にいつまでも時間をかけては、私が無能の誹りを受けてしまいます」
そう言ってワタツミは薄っすらと目を細めた。
「これが最後です。地に頭を付けて許しを乞うか、それとも無様に散るか選びなさい」
静かだが、怒気を孕んだワタツミの言葉に、パリスは本気を感じたのだろう。
直ぐに自分の敗北を認めた。
ところが、ワタツミはパリスへ向けた手を下ろそうとはしなかった。
「……敗北を認めるのは当然です。私は、地に頭を付けて許しを乞うか、散るかの二択を選ばせているのですよ」
いや、パリスが敗北を宣言した時点で、バーボン先生が俺の勝利を告げてるからね。
今、攻撃したら校則違反だからね。
しかし、俺の心配は他所に、ワタツミにビビったパリスは、必死に土下座して謝り倒していた。
「私ではなく、主君に謝罪をしなさい!」
……いや、いいから。その辺で勘弁してやって下さい。あと、俺がやらせてるみたいだから、それ。
未だに注目を集めたままだったが、初めての決闘は無事、俺の勝利で幕を閉じたのだった。
読んでくださりありがとうございます。
戯言シリーズを書いていこうと思ったけど、そんな事考える時間なかった!
てへぺろ〜ん。




