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【128】忠誠心の塊

 驚きの声を上げたのはバーボン先生。


 角刈りで髭を蓄えた筋肉質な人だ。


 一見すると体育教師みたいだけど、この人は一応語学の先生でもある。


「ブル・ドッグ! なんだその召喚モンスターは!?」


「え? ワタツミですけど?」


「名前を聞いているんじゃない! 人型の、しかも言葉を話す召喚モンスターなど聞いた事が……いや、少し前に言葉を話すレジェンドカードの噂があったな。まさか…そのモンスターは!?」


 バーボン先生がそう言うと、生徒たちにも伝染し始めた。


「あれって噂のレジェンドカードじゃねえのか?」


「嘘だろ? ただの学生が【LG】なんて持ってるわけねえ」


「でも、あんなに綺麗な召喚モンスター、見たことないわ」


「言葉も話すしな……辞典にも載ってないから、十分あり得るんじゃないか?」


「あんな田舎臭い奴が? 有り得ねえって」


「だが、初日からレイン様と親しげにしてたみたいだぞ?」


 おおぅ、なんか色々推論が立っているな。


 俺が呑気に生徒たちの話し声に耳を傾けていると、突然各所から水の柱が噴き出した。


 生徒たちを避けるように地面から噴き出した水は、上空へ舞い上がると雨のように降り注ぐ。


「きゃあ、何これ!」


「なんだ、なんだ!」


 慌てふためく生徒たちであったが、耳の奥に響くような声音がその行動を制止させた。


「お静かに! 決闘中ですよ!」


 ワタツミが鋭い眼光を向けて言うと、生徒たちはシーンと静まり返った。


「それと、御教員。立会人であり公正な立場であるあなたが、決闘中の生徒に声をかけるなど有るまじき行為だと思われるが?」


「……う、ぐむ……それは、そうだが」


「主君、あの者は反省の色が伺えません。私にあの者を裁く権利をいただきたい」


「因みにどう裁くつもり?」


「当然、自害させます」


 いやいや、ダメダメ! しかも殺すんじゃなくて、自害させるとかどうやってやんの? めっちゃ怖いんですけど!


 つか急にどうしたの!?


 ツクヨミやセンみたいに、無茶なことしないのがワタツミじゃないの?


「普通にダメでしょ。実害を受けたわけでもないし、どうしたの急に?」


「いえ、偉大なる我が主君の晴れ舞台を邪魔する者は、この世から消し去ってしまった方がよろしいかと思いまして」


 思考が過激!


 忠誠心が高いのは有難いけど、どうしてそんな極端なのよ! しかも、これ晴れ舞台じゃなくたてただの私闘だからね。勝手に人が集まっちゃっただけだからね。


「とにかく、過激なことはしないように。話しかけたぐらいで怒らないこと」


「はっ、申し訳ない」


 そんな一部始終をパリスはあんぐり口を開けて眺めていた。


 だからさ、決闘中なんだから攻撃しても良かったんだよ? 口開けて眺めてる場合じゃないと思うんだけど。


 自分のことは棚上げして、そんなことを思う。


 そして、ワタツミがパリスへと視線を向けると、パリスは放心状態からようやく解放されたようだ。


「ブル・ドッグ! なんだそのカードは! お前の手持ちにそんな物はなかった筈だぞ!」


「だから、ワタツミだってば」


 つか、パリスは俺の事どこまで知ってんの?


 持ってるカードの中身まで知ってるとか、相当親しかったのかな? いや、でもなんか恨まれてるしなぁ。


「あくまでも惚ける気か! まあいい、貴様がどんなモンスターを召喚しようと、場には貴様が使用した【破壊デストラクション】があるんだ!」


 あー、つまりロードデーモンの特殊効果で、【破壊デストラクション】をロードして、ワタツミを破壊出来るって言いたいのかな?


 うーん。


 たぶんそれ、上手く行かないと思うよ。


 俺がそう考えていたら、パリスがロードデーモンをワタツミへ向かってけしかけて来た。


 色々対策はあるけど、ワタツミがパリスの言葉を聞いてどう対応するのかが気になったので、俺は黙って見てることにした。


 ロードデーモンがワタツミへ迫り、腹部に浮き出た黒い魔方陣に手を入れて弄る。


 そこでロードデーモンは顔を顰めた。


 魔方陣の中へ更に手を突っ込んで、疑問符を浮かべながら何かを探しているみたいだ。


 たぶん、あの中に場で使用された魔法カード(・・・・・)が入っているのだろう。


 その中に本来なら入っている筈の【破壊デストラクション】のカードを探しているのだろうけど、そこに【破壊デストラクション】は入ってない。


 何故なら、ロードデーモンが読み取る事が出来るのは、あくまでも魔法カード(・・・・・)なのである。


 ロリさまに貰ったチート能力は、効果は同じでも、魔法カード(・・・・・)ではないのである。


 ロードデーモンが失速し、ある筈のカードが無くて慌てていると、ワタツミが創り出した水の刃がその体を切り刻んだ。


「このモンスターは、何がしたかったのでしょうね」


 凛とした佇まいで言った言葉が、その場にはやけに響いた気がした。

読んでくださりありがとうございます。


怒りとは、感覚を麻痺させる麻薬のような感情である。

使用した際には興奮状態となり、体の痛みも心の痛みも鈍らせる。ただし、静まると深い後悔と共にそれまで感じなかった痛みに襲われる。

中毒性もある。

怒る事に慣れてしまうと、自制する事が出来なくなってしまうのだ。


何故こんな事を語り始めるのか?


それはね。


この流れが気に入ったからだよ!

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