【126】ブル、初めての決闘
さて、決闘は開始したのだが、俺が何もせずに突っ立っていると、パリスが口元を歪めて話しかけてきた。
「馬鹿な奴だなお前は、よりにもよってデスマッチを選ぶなんてな! しかも制限もかけないとか、頭がおかしいのか?」
いやいや、もう開始してるんだから、話してないで召喚とかしたら良いじゃない。
何度か見た闘士同士の決闘では、不意打ちかましたり罠を仕掛けたりと結構貧欲に勝ちへ行ってたんだけどな。
やっぱり負けても進級に多少影響する程度のリスクじゃ、やる気にならないのかな? デスマッチってあれだよ。制限無いけど殺し合いになるくらい危険なバトルなんですよ?
学生同士の決闘じゃ、先生が止めに入るみたいだけどね。
まあ取り敢えず、なんにもしてこないなら、こっちから仕掛けてみようかな。
俺はパリスの言葉には反応しないで一枚のカードを取り出した。
「えい、【投石】」
カードが淡く光るとカードの中から、石が飛び出してパリスへ向かって飛んで行った。
これはいつぞやツクヨミに買われた、投げ売りのカードじゃなくて、別の日にちゃんと購入したものだ。レアリティも【R】で、当たれば普通に怪我をするぐらいの威力がある。
召喚カードは基本的にツクヨミに排除されるから、今現在も【LG】以外は持ってない。その代わりにデッキが構築出来るくらいには魔法カードを仕入れていたりもする。
主に日常で役立ちそうな【消臭】とか、【清掃】とか、【温水】とかだけど。
急に石が飛んで来たことで、パリスは慌てて石を躱した。右に避けそうだったんで、右側に【温水】撃っておいたらザパンッ。
見事に濡れ鼠になりました。
ぷー、クスクス。
「き、貴様ー! 突然攻撃をして、汚い奴め!」
え? いやー、だから決闘はもう始まってるんだってば。
意識低い系かな?
「貴様がそのつもりなら手加減はしないぞ! 喰らえ【火槍】!」
パリスが炎を纏った槍を三本出現させて、俺に向かって放った。
おおぅ。これって結構高いやつなんじゃないの? ランス系って確か【SR】だよね? 一枚【100万】イェンからだから、普通の学生じゃ手が出ないと思うんだけど……。
そんなことを考えていたら火の槍が眼前まで迫っていた。
おっといけない。
「【破壊】」
俺が声を上げて拳を突き出すと、炎の槍は呆気なく霧散した。
なんか久し振りに使った気がするよ、【破壊】。というか、ツクヨミとかが便利過ぎて使う機会とかあんま無いんだよね。
シーン。
ん?
なんかギャラリーが静かになった気がするんだが……あ、パリスも口をあんぐり開けて驚いてる。
おかしいな。チートとはいえ【破壊】は普通に実在するカードなんだけど? 一応さっきから【投石】のカードも手に持ってるし、違和感無いはずなんだけどな?
あ、もしかして平然と使ったのがいけなかったのかな? もっとカッコ良く決めなきゃいけないのかも。そうそう、フェリちゃんも応援に来てくれてるし、カッコ良いとこ見せつけなくちゃ。
俺は悪い笑みを浮かべて、驚きで固まってるパリスに向かってコイコイと挑発をした。
すると、みるみる顔を赤くしたパリスが続けざまに【火槍】を放って来た。
よーし、今度こそ決めるぞ!
「唸れ俺の拳ぃいいい! デーストラァアアクショォオオン!」
普段では鳴らないブォンという効果音が鳴り、俺は拳を前に突き出した。
たぶん、ブォンは俺の直ぐ隣に控えているであろうワタツミが、気を利かして鳴らしてくれたのだ。
出来る子! ワタツミ!
というわけで、再び【火槍】はあっさり霧散した。
どうだい? 完璧だったろう?
シーン。
だからなんで?
「なあ、【破壊】って【SSR】じゃないのか?」
「そうだな。しかも制限が一日一回の強力なカードだ」
「あいつそんなもん二枚も持ってんのかよ? しかも【火槍】に使うとか、頭大丈夫か?」
あー、なるほどね。そっちのシーンでしたか。
そっか、実物を持ってないから忘れてたけど、【破壊】って何でも破壊出来る代わりに、一日の使用制限が一回なんだっけ?
そして、三度目の【火槍】が放たれた。
どうしよっかなって思ったけど、とりあえず【水】を放ってワタツミに合図を送る。
すると、俺の【水】にワタツミのスキルが被さって、瞬く間に【火槍】は鎮火されてしまった。
これで良いかな?
シーン。
だからさ。君たちはどうすれば満足なのかな……。
読んでくださりありがとうございます。
相手がめちゃくちゃ強い奴だと、戦闘シーンを書く前に脳内で、アレも効かない、これも躱される、どうやって勝てっつーの!
って悪戦苦闘するのですが、ブルは良いですね。
何も悩まないからストレスが無い。




