【124】ワタツミ
なんだろう。
別の召喚モンスターを【実装】すると機嫌が悪くなるツクヨミだが、ワタツミ相手にはそんな感じじゃない。
ピクシーは一瞬で倒され、センとは最初から喧嘩してた筈なんだけど……。
そういえば、ゲーム内でのキャライベで二人の絡みは多かったな。同じ日本神話を由来に持つキャラだから、先輩と後輩としてワタツミがツクヨミに振り回されていたような……。
あれ? 俺、人選間違えた?
ツクヨミパイセンとか言ってるし、ワタツミはツクヨミに逆らえないんじゃないだろうか?
「ワタツミは役割をわかってる?」
心配になってきたので直接聞いてみると、ワタツミは勿論ですと大きく頷いた。
「主君の命に背かぬよう、センとパイセンの舵取りをすることです。私にお任せ下さい」
キリッと視線を向けられて自信満々に言われてしまった。
なにこの子。まじ素敵なんですけど。
「ワタツミ……生意気」
「私のバフがなきゃ、最弱ミソカス以下のあんたに何か出来るわけ?」
当然、ツクヨミとセンはワタツミの発言に対して反発する。
しかし。
「私に任された役割は、争う事ではありません。舵取りとは言いましたが、実際はお二人のおふざけに少々口を挟む程度でしょう」
そう言ってワタツミは、二人の挑発に乗らなかった。
そう、それ!
普通かもしれないけど、そんな感じの大人の対応をしてくれるだけで良いのよ。センなんて俺以外に暴言吐くし、ツクヨミは直ぐダメな中二病を発揮するし大変なんだから。
良いね! ワタツミ!
グッドボタン押しちゃう!
「ちょっと! ブル、 見せて!」
ワタツミに満足していたら、レインが凄い勢いで俺からワタツミのカードをひったくって、カードを見つめてわなわなと震え始めた。
まあ、驚くだろうね。目の前で【LG】を実装されちゃ。
「……本当に、【LG】だわ。ブル、あなた【LG】を【実装】する事が出来るのね」
「まあ、出来るよ。というか、想像力さえあれば誰でも出来るんじゃない?」
「そんなわけないでしょう! できたら【LG】が伝説で留まるわけがないわ!」
そう言って、ワタツミのカードを俺に返すと、瞳を潤ませて見つめてくる。
え? なにこの熱い視線。
「ねえ、ブル……欲しいわ」
ん?
「……あなたの……が……欲しいの」
え? ちょっと聞き取れないんですが?
どっかの難聴系主人公と違ってまじで聞き取れない。
しかも、この熱っぽい視線を向けられると、抜け字の部分が微妙にエロい単語な気がしてくる。
あなたの赤ちゃんが欲しいの!
なんだと!?
「あなたの【実装】した【LG】が、私も欲しいの」
ええい、知ってたよ! 話の流れでそう言ってるんだってことぐらい、俺にも想像できましたー。
ちょっと、言われたい台詞だったから、期待しちゃっただけですぅ。
「ねえ、お願い! なんでもするから」
ん? 今何でもって言った?
何でもって言ったら、当然エロいことも含まれるよね? あれはダメ、これはダメなんて言わないよね?
ぐへへ。
俺はたぶん、とんでもなくだらしない顔をしていたのだろう。
レインはもじもじしながら、頰を染めると控え目な様子で言った。
「え、エッチな事でも良いよ」
ぶはっ! 鼻血出た。
DTに、この破壊力ある言葉は耐えられない。
俺が気圧されて半歩下がると、肩をそっと支えられた。
いつの間にか背後に回っていたワタツミが、よろけた俺を支えてくれたのだ。
ついでに、俺の鼻から出た血を拭って、回復させてくれる。
ワタツミはニコリと微笑むと、一歩下がって俺の後ろに姿勢良く控える。
あまりに自然な動作で、全然違和感なかった。
好き。俺、ワタツミと結婚するわ。
「ねえねえ、ブルー」
ワタツミに意識が向いていたら、レインが俺の胸元に抱き着き子供のようねだってくる。
危うく流されそうになったけど、出会って間もないレインに【LG】を【実装】してあげるのもどうなのだろう。
おお、自然な動作で俺を冷静にさせるとは!
やるな、ワタツミ!
やっぱ俺、ワタツミと結婚するわ!
レインは相変わらず、可愛らしくねだってくるけど、さすがに【LG】はポンポン実装したくない。
「まあ、良い子にしてたらその内ね」
曖昧な答えだったけど、それでもレインは嬉しそうに頷いたのだった。
あれ、やっぱこの子も可愛いな。
読んでくださりありがとうございます!
遅刻遅刻ー!




