【121】たまには怒ることもある
全くもって困ったものである。
男を布団に引き込むなんて、淑女としてレインの貞操観念はどうなっているんだ!
男の子の朝は、生理現象であれやそれがそれはもう力強く戦闘態勢になっているのだ。
召喚モンスターであるツクヨミやセンならまだしも、普通の女の子に見られたら恥ずかしいじゃないか!
レインは気にしないとかなんとか言ってたけど、そういう問題じゃないんだよ。
そもそも、友達同士の男女は同衾しないだろって言ったら、パートナーだったらするでしょって言ってきた。
あのさ、俺確認したよね。ただの協力関係になるって? なんか認識に齟齬がありませんかね?
自室に戻った俺は、スヤスヤ寝こけているセンを叩き起こして厳しく注意した。主人を狐揚げで売るとは何事だと。
しかし、怒られている筈のセンは、すっとぼけた様子でこう言ってきた。
「えー、でも女の子好きなんでしょ?」
まー、好きだけども!
「抱き着かれて嬉しくないの?」
嬉しいけども!
「一緒に寝たいとか思わないの?」
思うけども!
「じゃあ、別にいいじゃない」
俺の心の声と会話すんじゃねえ!
こんな感じで飄々としているから余計に困ったものである。というか言い返せなくて悔しいです!
なんというか、そういうイチャラブ系イベントはもっと仲良くなってからというか、そういう関係になってからするものであって、誰かれ構わずするものではないのである。
そう、それこそがみんなに愛される、誠実な男の子像なのだよ。
「DTはよく、そうやって言い訳してるよね」
黙れ狐! DTとかわかりやすい単語を使うな! CBと言え!
「チェリーでもブルは可愛いから私は好きよー」
そう言って抱き着いくる悪い狐に、俺は抵抗できない。
く、なんと低い意思力! このままでは、ツクヨミにもセンにも良いように扱われるご主人様になってしまう。
センを抑え込める真面目な性格の【LG】を、そろそろ【実装】した方が良いかもしれない……。
俺の早朝はそんな感じで慌しく過ぎて行った。
レインと共に登校して教室へと辿り着くと、生徒はチラホラ。その中にはパリスの姿もあって、俺を見た瞬間に怒りを露わにして近付いて来た。
「ブル・ドッグ! 貴様、俺との約束を反故にしたな!」
なに言ってんの? 約束なんて何もしてないけど?
俺が首を傾げていると、パリスは更にヒートアップしてくる。
「校舎裏に来いと言っただろうが!」
「ああ、でも俺、行くとは言ってないよ?」
「一位階級のワイズマン家の俺が言ったんだぞ! 階級なしのドッグ家が断れるわけがないだろう!」
「この学園にいる間は、貴族とか階級を笠に着て偉そうにしちゃいけないって栞に書いてあったけど?」
「そんなローカルルール守ってる奴なんて誰も居ない!」
いや、ローカルルールって。普通に校則なんだけど。
「んー、じゃあここで聞くから今言ってくれる? 何の用?」
「こ、こんな人目のあるところで言えるか!」
「もしかしてさ、俺の乗っていた長馬が襲われた事に何か関係があるのかな?」
「ば、貴様!」
俺がそう言うと、パリスがわなわなと震え出した。
寒いのかな? そんなわけねー。
というかまじかよ。俺を見た時、何故生きてるとか言ってたから、そうじゃないかと思ってたけど、ちょっと驚きを隠せないね。
つまりさ、俺になる前の俺を殺したのって、パリスって事になっちゃうけど? それって殺人事件だよね?
「別に俺にしたことは今更どうしようもないから良いけどさ。あの時、俺がいなかったら可愛いエルフの女の子が、酷い目にあってたかもしれないんだよね」
俺になる前の俺にした事は本当にどうでもいい。だけど、パリスの所為であの時エディナが危険に晒されたのだと考えたら、なんだか気持ちが少しだけ、ほんのちょっと騒ついてくる。
いや、嘘です。
なんかめっちゃムカついてきたんですけど!
「うるさいっ! 全部貴様のせいだろうが! この際だから上下関係をハッキリさせてやる! 決闘だ!」
「良いよ、受けて立つよ」
俺はパリスから挑まれた決闘に、躊躇う事なく承諾した。なんかムカついてたので。
というか、承諾しておいてなんだけど、決闘ってなにすんの? 闘士間の決闘となんか違うのかな? あとでツクヨミに持たせてる栞を確認しなくちゃ。
読んでくださりありがとうございます。
友人にキャンプしないかと言われたので、二つ返事でOKした。すると数日後にラインが来て、テントとか色々買ったから試しにソロで行ってくるわとかなんとか。
その行動力が羨ましい。
あと頻りにハンモックいる? って聞いてくるのやめてね。ロマンはあるけど、労力の割に秒で飽きるやつだから。




