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【119】任命します。

 いやー、危なかった。


 喫茶店を飛び出て来た俺は、帰路の途中で溜め息を吐いた。


 本音を言えばもう少しフェリちゃんを眺めていたかったのだが、突然俺と向かい合うように腰掛けてきたウサミミ店長さんが、俺をアドバイザーとして雇いたいと言い出してきたのだ。


 メイド喫茶の発案一つで大袈裟である。


 学生なんで無理ですって言ったら、空いてる時間だけでいいからと言って俺に抱き着いて来るし。ウサミミ店長さんも結構大きなお胸をお持ちだから、引き離すのにめちゃくちゃ精神力を使った。


 フェリちゃんがゴミを見るような視線を向けてくれなかったら、色仕掛けに屈していたかもしれない。


 一先ず客引きの仕方から、接客の基本と料金システムについて説明してあげて、ちょくちょく通うからと約束したらなんとか解放してくれたのであった。


 都会ということもあってか、この街の人たちはキャロットにいた人たちよりも逞しい気がする。


 ともあれ、なんとか宿へ戻って来た俺を待ち構えていたのは、ご存知この方、ピンクの悪魔ことレインであった。


「パートナーである私を置いて何処へ行っていたというの!」


 いいえ、パートナーじゃありません。


 しかも、かーちゃんじゃないんだから、逐一俺の行動に目くじら立てるのはやめてください。


 ちょっとねと言って俺がレインを通り過ぎようとすると、レインは俺の腕を掴んで体を寄せて来た。


 ついでに何故か俺の体に鼻を近付けて、スンスンと臭いを嗅いで来る。


 あの、ちょっと恥ずかしいんですけど。


「あの獣人の臭いがするわね」


 すげえ! フェリちゃんの臭いとかわかんの? レインはヴァンパイアじゃなくて犬なんじゃなかろうか。


 言い訳のスペシャリストで名探偵で詐欺師、そして犬。どんだけ特技を持ってるんだよ。凄いよレイン。


「ブル、あなた失礼な事を考えているわね」


 ええ、まあ。やっぱり顔に出てるんですね。この顔め! フツメンのこの顔め!


「……まあいいわ。あのねブル、私は愛人がダメだとは言ってないわ。けれど、正妻である私を蔑ろにして良いわけがないでしょう?」


 あるぇ。なんか普通に妻になってますけど。


 この前結婚の前にはなんか色々あるみたいな事言ってませんでした? というかレインの言うパートナーってなんなのさ。恋人なの? 相方なの? それとも許嫁とかなの?


 凄く気になったので、俺は聞いてみることにした。


「あのさ、レインにとってのパートナーってなに?」


「難しい事を聞くのね」


 いや、ちっとも難しくないから! 別に愛とはなんだとか、そういう哲学について聞いてるわけじゃないから!


「けれど、敢えて言葉にするならば、なくてはならない存在……かしらね!」


 得意げにしかもちょっと自分に酔って言ってますけど、的外れですよー。どういうつもりでパートナーって言ってるのかを知りたいだけですよー。


「それはともかく、愛人が欲しいなら私の許可を取って頂戴」


 勝手に話を打ち切らないで欲しい。つーか、さっきから何言ってんですかね?


 愛人ってもしかしてフェリちゃんのことを言ってるの? いやいや、まだ全然そんな関係じゃないから……ん? つか、レインはハーレムを許容してくれるのか……。


 ……ふーん。


 レインに一ポイント!


 俺氏、都合の良い女子に興味深々です。


 エディナに夢中で忘れてたけど、俺ってこっちの世界でハーレム作りたかったんだよね。


 でもさ、実際にハーレムってどうやって作るんだよって感じ。


 ハーレムって普通は権力者やお金持ちがやることであって、普通の生活を送っていたらまず出来ない。


 俺のような普通の……普通の?


 【LG】を持ち、貯金が【2億】イェン以上ある俺は普通なのだろうか?


 カテゴリー的にはお金持ちに当てはまらなくもないし、魔王ですら持ってない【LG】を持っているという事は、権力的なあれそれも手に入る。


 あれ? ってことは、俺ってばハーレム作れる条件整ってね?


 相手が納得してくれるなら普通に出来そうですね!


「わかったよ! レインを記念すべき俺のハーレム一号に任命しよう!」


「正妻だって言ってるでしょ!」


 うーむ、分からず屋である。

お読みくださりありがとうございます。


純愛しようとしてたけど、ハーレムを作らなきゃいけないんだった。ありがとうレイン! 忘れてたよ!

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