【110】偉いの? 偉くないの?
「で? その獣人はなんなのよ」
食堂でフェリちゃんを睨みつけながら、レインが不機嫌そうに言った。
「何って、クラスメイトだよ。つーか睨みつけるのやめなよ。感じ悪いよ」
俺の隣で気まずそうに、食事をしているフェリちゃん。心なしかケモ耳がシュンッてしてるような気がする。
「あー、俺……私はフェリナスと言います。えーっと、この男に無理矢理連れてこられただけなんで、どうぞお構いなく」
えー、まあ確かにその通りだけども。
つか、レインはほんとなんなの? 食堂なのに俺たちの周りだけ人が寄り付かないんですけど。
「レインってさ、なんでこんなに嫌われてるの?」
「は? 私のどこが嫌われているというのよ?」
「だって誰も寄って来ないじゃん」
俺が周りに視線を這わすと、みんなサササと目を逸らした。
「私が高貴過ぎるから恐れ慄いているのよ」
「そうなのフェリちゃん?」
「なんで俺に聞いてくんだよ、つかその呼び方をやめろ! それと、お前は三位階級の魔貴族を知らねえとでも言うのかよ」
「三位階級?」
俺が首を傾げていると、フェリちゃんは本気で呆れ顔をした。
「本気で言ってんのかよ」
「うーん、まあ俺はこの世界の常識に疎いからね」
「は? この世界?」
今度はフェリちゃんが首を傾げた。すると、透かさずレインが声を上げる。
「ブル! 余計な発言はしない方が良いわよ!」
「……余計というか、あんまり隠さない方向で行こうと思ってるんだけど?」
「ダメに決まってるでしょう!」
「いやいや、なんでレインが決めんのさ」
「パートナーの助言は聞くものでしょう!」
レインがそう言うと、フェリちゃんがテーブルの上に握っていたフォークを落とした。
「おまっ、あんたは三位階級に連なる貴族だったのかよ、だったんですね。あの……先ほどは、殴ってすみませんでした」
「いやいや、急にどうしたの? レインが勝手に言ってるだけで、パートナーって話も、その三位なんちゃらってのも、俺とは全く関係ないからね!」
「は? なんだよ、先に言えよ。謝って損したじゃねえか」
変わり身早っ!
「取り敢えずさ。その三位なんちゃらってなに?」
「三位階級、貴族の位で最も高い位よ。委員会、国、教会、この三つに認められ、それぞれから称号を賜った大きな発言力を持つ貴族が三位階級というの」
「へー、なんか偉そうな感じだね」
「偉そうなんじゃなくて、実際に偉いのよ!」
「ふーん、気になったんだけどさ。ヴァンパイアの寿命ってやっぱ長いのかな?」
「……そうね。一世代で五百年はあるわ」
「じゃあさ、その偉い家督を継ぐのってずっと先になるってことだよね? ってことはさ、俺が生きてる間にレインはイーヴィル家の当主にはならないってことでしょ?」
「……そ、そうかもしれないわね」
「だってさ」
俺がフェリちゃんにそう言うと、フェリちゃんは首を傾げた。
「みんな、レインがイーヴィル家の跡継ぎだから、腫れ物みたいに扱ってるみたいだけどさ。ぶっちゃけ、生きてる間に当主にならないんだったら、跡継ぎとか関係ないと思うんだよね」
「てめ、それは極論過ぎんだろ!」
「でも、レインは【1000万】イェンも自由に出来ないって言ってたよ? 遅刻し過ぎると強制的に寮生活にさせられるとも。つまりそれってさ、ちゃんとルールを守ってないと怒られちゃうってことでしょ? それって普通の学生と変わらないと思うんだけど」
「……まあ、確かに」
「だから、レインがどこの家のお嬢様だろうと関係ないと思うんだよね」
俺の言葉にレインはぐぬぬと唸って反論しなかった。
どうやら学園での発言力があまりないのは正解みたいだ。
「フェリちゃんも、レインに気を使い過ぎるのはやめた方が良いよ。でも、もしなんかあったら、俺が味方になってあげるから安心して」
「てめぇが味方でも何も安心できねえよ!」
酷いな。これでも結構役に立てると思うんだけど。まあ、役に立つのは俺じゃなくて、ツクヨミやセンなんだけどね。
そんな話をしていると、食堂の入り口がざわざわし始めた。
俺たちもつられて視線を向けると、金色のモフモフ獣っ子と、忍装束を着た小っちゃい子が注目を集めている。
そうだった。
二人を朝食へ行かせてたんだった。
つーか、もう昼だけど? まさか、今まで飯食ってたわけじゃないよね?
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