【011】私は覚えておりません
結局エディナは疑いの目を向けながらも、自称記憶喪失である俺の言い分に納得してくれた。
【破壊】については、未だ濁したままだが、まあ最悪言ってしまっても良いだろう。
スーパーチート能力を打ち明ければ、このつるぺたエルフも俺を尊敬の眼差しで見ることとなり、最終的には好き! って思われるに違いない。
異能が知れると面倒ごとに巻き込まれる? そんな事は知らん。何よりも尊いのはこのつるぺたエルフに惚れられる事なのだから。その為なら、多少の困難など些末な問題である。
エディナがそのうっすい胸を押し付けて、好きって言いながら甘えてくる姿を想像すると、俺の鼻の下が伸びる。
ぐふふ、やべ、たまらんですな。
「あんた、ちょいちょい気持ち悪い顔するわね」
妄想に耽っている顔を見られたらしく、エディナがそんなことを言った。しまった。カッコ良い俺でいなくてはいけないのに、早速失敗をしてしまったようだ。
俺はスッと表情を引き締め、ブンブンと頭を振る。
「大丈夫? どっか悪いの?」
エディナが覗き込むように顔を近づけて来た。
大丈夫です。悪いのは頭です。というか顔を近づけないでください。
俺は速攻で緩みそうになる顔を必死で引き締めて、引き攣った笑いを浮かべていた。
「そ、それよりもエディナは何であいつに襲われてたんだ?」
「なんでって。長馬が襲われたからだけど? あんたもそれに乗ってたんでしょ? 幸薄い顔してるから気がつかなかったけど」
なんて酷いことを言うんだ! ちょっと美人。いや、めちゃくちゃ美人だからって、人のこと幸薄い顔とか言わないでよね! え? ていうか俺ってあまりカッコ良くない感じ? まじかよ、鏡がないから自分の顔も確認できねえ。
モテ男になる為には、顔も重要なファクターだというのに。整形とかできんのかな? この世界。
「な、長馬って?」
「はあ? 長馬も知らないの? 言葉は喋れるのにおかしなところだけ記憶喪失なのね」
エディナが疑うような視線を向けてくる。
くっ、このつるぺたエルフ、意外に賢いぞ。
「ぶっちゃっけると、常識もわからないし、さっきのカードについても知らないんだ」
「【白無垢】のことは知ってたのに?」
……めんどくせえ。もういっそ洗いざらい言ってしまうか。うーん。だが、転生して前世の記憶と知識が幾らか残ってるとか言っても、そっちの方が嘘くさいしなあ。
「まあ、エディナの言う通りだな。ところどころ、単語を覚えてたりするんだけど、意味がわかってなかったりするんだ。正直【白無垢】がどういうカードなのかもわかってない」
「確かに意味がわかってたら、【白無垢】のカードを持ってるなんて人に言ったりはしないわね」
おや? 変なところで納得してくれたぞ。
「まあ、いいわ。取り敢えず荷物を拾いに行きましょう」
そう言ってエディナはさっさと歩き出した。
俺はその後ろ姿を目で追うと、吸い寄せられるようにエディナの尻に目が止まる。
大きくない形の良い尻が左右振られる様を見て、俺は尻を追いかけるようにフラフラと歩き出した。
なんてこった。
お尻も可愛いとか、エルフけしからん!
読んで頂きありがとう御座います。
真面目なお話が読みたい方は「マリアンたんと英雄譚」を読んでみてください!
序章が少しぐだっちゃいましたが、一章からは割と楽しめる筈!
そう、この物語は広告の為に書かれているのであった。