【107】女の子?男の子?
「パリス・ワイズマン、席に座りたまえ」
席を立って俺の名を呼んだパリスという男子生徒は、ウォーカー先生に注意されて渋々腰を下ろした。
しかし、その眼光は憎い相手を見るように、細く歪められている。
なんだよ、ブル・ドッグ。お前いったい何やったんだよ。相当恨まれてんぞこれ。
「それではブル・ドッグ、自己紹介を」
先生に促されたので、俺は取り敢えずパリスの事は考えないようにして、自己紹介を始めた。
「えー、ブル・ドッグって言います。キャロットからやって来た田舎者なので、色々教えてくれると助かります」
「嘘を吐くな! お前の出身はティラミスだろう!」
俺が自己紹介をすると、透かさずパリスがツッコミを入れてくる。
やべぇ、俺の知らない知り合いがいるとやりずれぇ。
「パリス・ワイズマン!」
「いや、先生! そいつは自己紹介で嘘を吐いてるんですよ!?」
「そうなのかね?」
「いえ、嘘ではありませんよ。出身の事ではなく、直近で生活していた場所がキャロットなんですよ。それ以前の事はあまりお話したくないもので」
「なるほど、パリス・ワイズマン。個人の事情に踏み入るような発言はやめたまえ。品位が下がる」
先生に注意されてパリスは、悔しそうに席に着いた。
可哀想だけど、俺もあんまり事情に踏み込んで欲しくないから大人しくしててね。
前のブルがなんかやったのかもしれないけど、それはまあ、知らん。
前のブルに言ってくれ。もう、おらんけども!
「ブル・ドッグ、席は特に決まって居ない。空いている席に自由に着席したまえ」
そう言われたので、俺は教室内を見渡した。
五十人ぐらい座れるから、ポツポツ空いてるみたいだけど何処にしよう。
逆に選べるって困ってしまうね。
取り敢えず、パリスの近くはやめておこうかな。絡まれても面倒くさいし。
あとあと、一番可愛い子はと……。
うむ、決めた。
俺は教室の一番後ろの窓側の席へ向かった。
その席に座って居たのは青い毛色をした獣人。
机に肘をついて、周囲には興味なさそうに窓の外を見ているけど、間違いない。
俺の中で超絶ヒットのケモ美人である。
都合良くその子の周りには誰も座って居ない。寧ろ、なんだか距離を置かれてるような気さえする。
しかし、そんな事はどうだっていい。
俺はうっきうきでその子の隣へ着席すると、周りは何故だか「え?」みたいな顔をしている。
いや、わかるよ皆さん。
どうせあれなんでしょ?
「宜しくね。俺はブル・ドッグ」
俺が青い毛色の獣人に話しかけると、その子は俺のことをチラリと見て直ぐに目線を外した。
「君の名前はなんて言うんだい?」
「うるせぇ、俺に話しかけんな」
え? 俺は一瞬時が止まった。
なん、だと!? 冷たくあしらわれる事は想定していた。そういうキャラなんだと思えばどうという事はない。
だが。
まさか、男……だと!
こんなに可愛いのに!
良く見れば白いシャツの胸元は、ペタンコである。オーマイガッ!
嘘だろ! 嘘だと言ってくれよ神様! この場合はロリさまに文句言えば良いのか?
あああ、でも可愛い! ぐはぁ、男だと思ってもどうしても可愛く見えてしまう。
俺は目覚めてしまったのか! そっちに!
どうやら、失恋の影響はとんでもないところにまで及んでいたらしい。
ああ、もう男でもいいや。目覚めてしまったのなら仕方ない。
そして、男なら多少のスキンシップも許されるだろう。
俺はケモ男の娘にいきなり抱き着いた。
「そんな冷たい態度とるなよぉー、仲良くしようよー」
「キャッ!」
え?
ケモ男の娘が可愛い悲鳴をあげた。
反応まで女の子みたいなのって、ちょっと反則じゃね?
つか、なんか柔らかいんだけど……。
モミモミ。ん? これって……。
「てめぇ……」
ケモ美人は顔を真っ赤にして、プルプル震えていた。
……なるほど。
これは二重の罠ですね。
可愛い女の子に見えて、近付くと男みたいな反応をする。けれど、その実態は―――やっぱり女の子やったんやー!
結論に至った瞬間、ケモ美人の拳が俺の顔面に叩き込まれていた。
さすが獣人。超痛てぇっす。
お読みくださりありがとうございます。
俺っ子なんて需要あるのだろうか? あんまり数も多くないから女の子はもっと可愛い一人称を使うべきなんだろうね。




